物語の作り方シリーズの更新。
今回は漫画のメリット、デメリットについて考えていく。
前回の小説の記事はこちら。
1 漫画のメリット
手軽に書ける
これは前回の小説と同じだが、漫画を描くのにそこまで出費もかからずに書き始めることができる。さすがに小説のように紙とペンがあれば、とはいかないだろうが、使い捨ての物もあるとはいえ出費はそこまで大きくない。(個人で負担できるレベル)
また、プロになって連載を始めれば話は変わるだろうが、基本的にすべての作業が一人で行うことができるので、人件費等の経費がかからず、また場所を問わずに始めることができるのもメリットだろう。
なんでも書ける
こちらも小説と同じで、宇宙空間であろうが100年後の未来であろうが、過去であろうが、想像して絵にすることができればなんでも書ける。説得力のある作品にするには背景であったり、小道具などにその舞台にあったものをきちんと想像して描き上げ、用意しなければならないだろうが、想像力とデザイン力、画力さえあれば書けない世界観などないだろう。
どこでも読める
これは小説も同じものであるが、読者側のメリット。
例えば朝の通勤中であろうと、昼休みであろうと、仕事、授業中、ご飯を食べながら、お風呂の中でなど、どこでも時間を問わずに読むことができる。
また買うこともコンビニや電子書籍など小説以上に販売しているお店が多いので、買いたい時に簡単に手に入りやすいのも大きい。
情報量の多さ
ここが小説との最大の違い。
文字だけで表現しなければならない小説と違い、漫画は絵で表現をするので情報量が小説よりも多い。そのため、非常に重要なことをさりげなく背景などに仕込ませることができたり、言葉を用いずになんとも言えない表情や行動、背景でその登場人物の心情を表現することができる。(雨が降っていたので主人公の気持ちは沈んでいるなど)
2 デメリット
情報量の少なさ
先ほど挙げたことと矛盾しているが、絵で表現できる分情報量は小説よりも格段に上がっているが、音楽、声、匂い、触覚などは体感することはできない。絵とセリフで表現することが大事だが、それ以外の表現をしようとしてもどうしても紙媒体ということで限界がある。
だが情報量が少なさがデメリットとして非常に大きいかというと、決してそういうことではない。例えばチャップリンの『街の灯』という映画は、ラストが非常に印象的なのだが、サイレント映画なので声が出ない。なので「You?」というセリフがどのように発音されたのかわからず、発音を頼りに登場人物の心情を探るということができなくなっており、話に深みが増している。
漫画などは声などが出ないことを前提としているので表情や絵で表現することを追求しているが、情報量が少ないことでより話に深みを持たせることも可能である。
ビジネス上の問題
実は漫画のメリット、デメリットを語った時に一番大きいのはここだと思う。
現在漫画を発表するときは、大体プロとして発表する場合において週間、隔週、月刊などの違いはあるものの、ある程度のページ数で発表することが当然とされている。長編というよりも連作短編といった方が形式としては近い。
すると、後から魅力的な展開を思いついたとしても、すでに発表した展開と矛盾することもあるかもしれない。その際に手直しをするということが、発表されてしまった以上は難しいのである。セリフの一部分であればコミックス収録時にでも修正できるかもしれないが、根本的な修正はできないだろう。
小説や映画、演劇の場合ある程度以上の長編でない限り、作品が完結した後に公開されるため作品の手直しは比較的容易であるのだが、漫画の場合約20ページを毎週描いて、それを重ねてストーリーを紡いだものを単行本として発売しており、しかもその単行本も10冊、20冊と続いていくことが多いために、書き始めてから完結するまで年単位の時間がかかってしまう。
そのために長期連載になればなるほど矛盾やインフレ、キャラクターの過小評価などのコントロールが難しくなっていく。ここは漫画の最大のデメリットであろう。
その性質を逆手にとって、過去に公表した伏線を回収するなどの(ワンピースなど)手段もあるので、必ずしもデメリットばかりではない。
3 これからの漫画
漫画という文化はアニメとならぶ現代では一番ホットな表現形式だろう。世界からの注目度も非常に高く、世間からも映画、ドラマの原案として人気のあるものは常に注視されている。
また、売り上げが非常に大きい。
小説などは100万部突破の大ベストセラーなど数年に1冊レベルだろうが(村上春樹レベルの人気を誇らないと無理)、さすがに1冊で100万部はジャンプ漫画以外ではそこまで多くないだろうが、シリーズ通算100万部突破という作品は多い。
アシスタント料などもあるが漫画家個人に入ってくるお金というのは、同じ個人作業が多い小説家と業界トップクラス同士で比べたとしても漫画家の方が俄然多いだろう。バクマンでも書かれていたが、これから先儲けたいのであれば、小説家ではなく漫画家を目指した方がチャンスも報酬も多いだろう。
漫画人気は衰えるということを知らず、まだまだ成長の兆しを見せている。出版不況と呼ばれる中でも、漫画雑誌は増える一方で本屋の売り場を占める割合も増加の一途をたどっているようだ。
これから先も漫画文化は日本だけでなく、世界を市場として、廃れずに成長を続けていくのではないだろうか。