物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『人生はシネマティック!』『エキストランド』感想 映画を作るってなんだろう?

ブログ主(以下主)

「では2作合作レビューと参りましょうか」

 

亀爺(以下亀)

「まあ、観た人ならば誰もが納得する組み合わせじゃと思うが、小規模ゆえに観ていない人がほとんどになってしまうのが残念じゃ。

 では、今回のテーマを発表するかの」

 

主「ズバリ『映画を作る映画特集!』です」

亀「……しかし、この2作がほぼ同時期に公開されたというのは偶然とはいえ、面白いものじゃな」

主「どちらも小規模公開だけれどね!

 この2作の両方を観た人ってそこまで多くないんじゃないかな? それこそ、1作は渋谷の小規模系劇場でも有名な『ユーロスペース』など、マイナー映画を扱う映画館しか扱っていないので、観るにはハードルが高いかも……

 ちなみにこの手の作品は経験上ソフト化もどうなるかわかりません!

 

亀「知らんだけで発売されておるパターンもあるのじゃろうがの」

主「ちなみに芸能人などをよく見る劇場でもあるらしいです。

 知り合いは何人も芸能人を見た! と言っているけれど、自分は俳優などに全く詳しくないのでよくわらんのよね。すっごい綺麗な人が監督に挨拶している光景は見たことあるけれど、それが誰なのかはよくわからないという」

亀「ちなみに街中で見たことがある芸能人は?」

主「特別上映のアニメの時に声優を何人か見たくらいかなぁ。めっちゃ美人で顔が小さかった」

亀「……やはり声優などのアニメ系になるんじゃな」

主「あとは江川達也らしき人が街中で歩いているのを何回か見た」

亀「……髭面メガネのオジさんだったらみんな同じに見えそうじゃがの。

 では、記事に入るとするかの」

 

 

 

 人生はシネマティック!

 

人生はシネマティック!

 

作品紹介・あらすじ

 

 第二次世界大戦中のイギリス・ロンドンにて戦意高揚のための映画製作を依頼された女性脚本家たちの奮闘を描く。

 作中で描かれるのは2017年に日本でも大きな注目を集めた『ダンケルク』などでも描かれたダンケルクの救出作戦であり、本作を観た後にノーラン監督作品を観ると若干印象が変わるかもしれない。

 監督は『ライオット・クラブ』などのロネ・シェルフィグ、主演は『007 慰めの報酬』でボンドガールを演じたジェマ・アータートン。

 

 1940年のロンドンで仕事を探していたガトリン(ジェマ・アータートン)は秘書として仕事を探していた矢先、面接先の情報省映画局の特別顧問であるバックリーと出会う。彼はガトリンがコピーライターとして書いた文章を高く評価し、ダンケルクの救出作戦で兵士を救出した双子の姉妹の映画製作の脚本チームに加わることを打診する。

 ガトリンはその仕事を引き受けるのだが、一筋縄でいかず多くのトラブルに巻き込まれながら、戦時中に映画を製作していく……

 


映画『人生はシネマティック!』11.11(土)公開

 

 

 

 

感想

 

 

亀「というわけで感想じゃが……今回鑑賞したのはヒューマントラストシネマ有楽町であったが、ここで公開する映画は地味ながらいい作品が多い印象であるが、本作もそうじゃの」

主「圧倒的なコメディとしての面白さとか、戦争映画らしい派手な爆破シーンなどは多くない。

 その意味では地味で暗い映画のように思われるかもしれないけれど、しっかりとうまい演出や伏線も効いていて、結構楽しめる映画であったのは間違いない

亀「特に映画製作の裏話に関しては中々面白かったの。当時の映画の作り方なども伺えて、CGなどの特殊効果がない時代にどのような工夫を凝らしたのか? ということもわかったしの」

 

主「例えばダンケルクの救出作戦は多くの兵士を出演させないといけないけれど、さすがに何万人もの人を集めるのは絶対不可能だ。だけれど、数人、数十人しか画面の中にいないのでは話にならない。

 だからガラスの画面に人がたくさんいるように絵を描いて、その手前に役者を配置して撮影している。

 このトリックだけを聞くと『え? そんな原始的な……』と思うかもしれないけれど、例えばチャップリンの『モダン・タイムス』にてデパートの大穴の近くでローラースケートで踊るシーンなどは、その穴を絵で描くことで撮影されている。

 それが今でもどうやって撮影したのか不思議に思う出来になっているんだよね」

 

モダン・タイムス Modern Times [Blu-ray]

人生で1度は鑑賞したい名作でしょう

 

 

亀「もちろんメッセージ性や現代的なテーマもあるの。

 作中では時代のこともあって女性が差別されており、男性中心社会であり、そう言った映画を撮ることを指示されるが、本作は女性が主人公であることからもわかるように、女性の活躍も描いており、それは現代だからこそのテーマになっておる。

 1940年と2016年(本国公開)の2つの時代、両方に言及した作品に仕上がっておる

 

 

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癖のある俳優たちなどを相手に奮闘する
(C)BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THEIR FINEST LIMITED 2016

 

 

映画とは何か?

 

亀「本作が面白かったのは『映画とは何か?』ということを多くのことで描写しておることじゃの。本作の男性役であるバックリーなどが映画に対する思いを告げるのじゃが、そこももちろん見所ではある。

 しかし、もっと注目してほしいのが作中作の作り方じゃの

主「ダンケルクの戦いを映画にしようとしたところ、双子の女性のお話に目をつける。なぜ戦争映画なのか? といえば、もちろん戦時中のための戦意高揚のための、まさしくプロパガンバのためだ。

 本来の双子は30を超えていて、しかもダンケルクには船が故障して行っていない。だが映画にするために双子を20にしている。

 真実を伝えることが大事なのではなくて、物語を面白く、そして戦意高揚をさせることが目的なわけだ。

 作中では『この銃は世界最高だね!』とイギリスや味方の鼓舞するような宣伝なども入っていて、さらに国からの注文も受け付けなければいけない」

 

亀「船が故障する原因が『スクリューが故障した』だとイギリスの船が悪いというように見えてしまうから『スクリューに縄が絡んだ』という不慮の事故であるように変更されたり、またそれを直すのが女性だと男性の格好がつかないから男にする、などの指示を出すなどということじゃな」

主「この作品はイギリスの映画であり、戦勝国の作品だからこそそこまで違和感がないように見える。当時は日本は敵だけれど、今は西側の価値観が支配的だしね。

 だけれど、考えようによっては……例えば日本やドイツを舞台にしたらこれほどおそろしい話もない。表現に対する規制を国が行い、口出ししてシナリオを変えてしまう……表現の自由なんてない。

 そしてそれはある意味では『映画の本質』に触れているんだよ

 

亀「つまり『多くの表現はプロパガンバである』ということじゃな」

主「今年自分が絶賛した障害をテーマにした映画だって、『障害者差別を許すな!』という意味では政治的なメッセージ性を内包したプロパガンダ映画である。他にも海外の……例えば『ドリーム』などは『肌の色や性別で差別することは許されない!』という明確なメッセージ性がある。

 西側の価値観ではそれは当然のように思うけれど……例えばイスラム教の過激派では女性は教育を受けることも許されていない。同性愛や公然の場でのキスシーンなどは罪とない、最悪の場合死刑になることもある」

亀「その検閲を描いた映画の名作が『ニューシネマ・パラダイス』じゃな」

 

ニュー・シネマ・パラダイス (字幕版)

 

主「本作ってニューシネマ・パラダイスに近いものを多く感じるんだよねぇ。

 西欧諸国の価値観が正しいとは限らない。

 正しい価値観というのは国、宗教、環境によって変わるんだ。日本であれば『原爆はダメだ!』でもアメリカでは『正義の鉄槌』になるだろうし、日本で『戦争反対!』が中国では『日本をぶっつぶせ! 戦争賛成!』になる。

 映画とは……表現とは本質的にプロパガンダの要素をどうやっても含んでしまうものであるんだ

 

 

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時代は戦時中ど真ん中……

(C)BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THEIR FINEST LIMITED 2016

 

皮肉に満ちた話

 

亀「その意味では本作は非常に皮肉に満ちていると言えるの。

 つまり『イギリス側のプロパガンダ』を明るく描くことによって、それをあまり感じさせないようにしているが、結局映画製作をしていくわけじゃからの」

主「作中で『物語は作為的なものである』という言葉あるけれど、そうなんだよね。

 アメリカ側の要望で『派手なシーンを入れてよ!』というものがあった。つまり、エンタメ性が必要だということだよね。

 そして作中でも……まあ、当たり前だけれど、ある大きな事件が起こるんだよ。それが本作における『派手なシーン』になっている」

 

亀「あの展開にはびっくりしたの……それが何であるかは、もちろん劇場で見て欲しい」

主「でもさ、物語ってそういうものなんだよ。

 何も起こらない、劇的な展開のない物語というのは、たいてい面白くない。

 絶望的な状況に叩き込むことによって、その窮地を脱したりとか、そこから復活していく様が面白い。

 言葉を変えると人間を不幸のどん底に突き落とすのが創作であり、面白い物語の作り方だ。

 作中劇であるダンケルクで厳しい展開を強いる脚本家の女性があのような……大きなトラブルに見舞われること、それこそがみんなが望むエンターテイメント性なんだよ。だからこの作品はすごく皮肉的。

 まるで『この子の不幸、面白いでしょ?』と作品に語られているような……そんな気分でもあった」

 

亀「だからこそ物語としてのカタルシスもあるんじゃがな」

主「映画の中の物語を描いたからこそ、その映画の構造が持つ意味などをも描き切った本作は、表現や映画について興味がある人は見ておいて損のない作品に仕上がっているだろうね」

 

 

 

エキストランド

 

 

 

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(C)Koto Production Inc.

 

作品紹介・あらすじ

 

 『東京ウインドオーケストラ』などの坂下雄一郎監督作品。基本はコメディ調の笑いのある作品であるが、映画業界の裏事情を暴露するようなテーマなどで問題提起のような側面も多くある。

 主役の悪徳プロデューサーを吉沢悠が演じているほか、戸次重幸やはんにゃの金田哲などが出演。またエキストラの名前を全てクレジットするなどのクレジットロールでも話題に。

 

 過去に大きな失敗をしたプロデューサーの駒田は、地元で映画を作りたいという市役所に勤める内川と知り合う。非常につまらない脚本と超低予算の映画の話が持ち上がっていたことを知る駒田は、なんとか映画製作の実績を作るべく内川に話を持ちかける。

 最初は地元が映画になること知り大いに喜ぶ市民たちであったが、駒田は使いやすいスタッフとエキストラなどを集める雑用業務や金銭援助を目当てにしていただけだった……

 


『エキストランド』予告

  

感想

 

 

亀「続いてはこちらも『映画製作をする映画』じゃが……こちらの方がわかりやすい問題作となっておるの」

主「自分はこのブログを通して……どうだろう、300作は言い過ぎとしても、そこそこの数の映画作品の感想を語っているけれど、中には『どうしてこうなったんだ!』と言いたくなるようなあまりにも酷い映画もたくさんある。

 はっきり言ってしまえば『脚本書かせろや! もっといいもんにしてやるぞ!』と思う作品だって中にはあるよ。

 ただし、それは完成した作品を見ているから言えることなんだよね

 

亀「これは人生はシネマティックでも描かれておったが、万全の状態で映画を製作できるわけではない、ということじゃの。

 クリント・イーストウッドの『インビクタス』の作中に

『いつも完璧な状態だとは限りません』

『それは人生も同じだな』

 というようなセリフがあるが、映画も同じということじゃろう」

 

インビクタス 負けざる者たち (字幕版)

 

主「予算もある、スタッフも限りがあり、もちろん場所も色々な場所に行けるわけではない。その上脚本もつまらない……そんな状態でも映画を撮らなければいけないこともある。

 そしてそれをうまくカバーするのがプロデューサーや監督の仕事とは思うけれど……イヤイヤ、まさかここまでするとは……」

亀「『映画はプロデューサーや監督、スポンサーとの騙し合いだ』という話も聞いたことがあるがの、一筋縄ではうまくいかないということがよくわかった」

主「口八丁で様々なトラブルを乗り切る……というか、騙し切るんだよね。それがまた面白くて笑えるけれど、実際にはただの詐欺だからさ、まじめに考えると笑えないというのが、また面白いところでもあって……なんといえばいいのか難しいけれどね」

 

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これだけの歓待を受けてしまうと監督も断れない……

(C)Koto Production Inc.

 

本作の『家』

 

亀「本作の作中作は『家を建てる』物語となっておる。

 フリーターが家を建てるだけの映画を製作するということであるが……まるで有川浩の原作がありそうな作品じゃが、全く面白そうな匂いが製作中のシーンを見てもしてこないというのがの……」

主「本当にただ木を運んで、家を建てる……それだけの映画らしいんだよ。どのシーンを見てもそうとしか思えなくて、説明を聞いてもそう答えるだけ……どう考えてもつまらない映画だ。

 そしてこの『家』が『つまらない映画』を象徴しているのは間違いない。つまり、淡々とつまらないシーンで構成された映画を家に見立てて、ああいうラストになるわけだね」

 

亀「今作のエキストランドというのも、おそらくは『ラ・ラ・ランド』を意識しておるじゃろう。もちろん、ヒットしたこともあるかもしれんが、元々はララランドとはハリウッドを示す言葉じゃ。

 そしてもう1つの意味が『酩酊感』などでもある」

主「ここも深い意味があるよね。

 本作は作中作で建てられた家をラストでどうにかなるわけだけれど、そこのカタルシスがそこまで強くない。これは本作自体が低予算映画であることもあるのだろうけれど……そこも計算通りな印象がある。

 かなりの皮肉や意味のこもった描写の多い作品になっていることは間違いない。そもそも、誰が見るかわからない、そもそも劇場公開されるかも怪しい映画っていうのは本作自体も同じなわけだし」

 

亀「低予算映画に対する言及に関してはかなり自虐的な要素も感じたの」

主「あとは、本作はいわゆるエキストラが存在しない。

 いや、いるけれど、その全員がエンドロールに名前が載ることも話題になっている。普通、エキストラまでは名前が載らないじゃない? 本作って明らかにエキストラだと思われる人たちが演技をしているシーンもある。どこにでもいる普通のおじさんが、映画内で演技をしていて、それが若干棒なんだけれど、却って意味深になっているのもポイントだね」

 

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地元の人は大張り切りだけれど、作るのはクソ映画……

(C)Koto Production Inc.

 

映画の幻想

 

亀「ここからが今作の1番の問題提起な部分であるが、近年はアメリカを中心に映画業界の闇が叫ばれておる。ワインスタインのセクハラ問題に加えて、ベン・アフレック、ジョン・ラセターなどの監督経験もある人たちやプロデューサーたち……いわゆる権力者たちが好き勝手しておったことが次々と明らかになっておる

主「基本的には作品と人間性は関係ないと思っているし、ベン・アフレックはこれで消えてしまったらつまらないなぁ、と思うし、ジョン・ラセターはただのガセネタであるという見方も依然あるけれどね。それと『るろうに剣心』は変わらず名作です。

 話がそれたけれど、やはりプロデューサーというのはそれだけ大きな権限を持っているからこそ、色々な私物化ができてしまう。監督などすらも騙して、地域の人も騙して映画撮影を続けてしまうわけだ」

 

亀「このようなことは実際にあるんじゃろうな……と思わせる描写も多かったの」

主「でもさ、自分は駒田ってちょっと理解できるんだよ。

 もちろん、映画を作るために多くの人を騙す姿勢などはいけないことだけれど、でも誠実なだけでは大人の社会は回らない。手練手管を駆使することも大事なプロデューサーや監督などの仕事なわけだ。

 そもそも、役者や監督、スポンサーを説得する時に時には嘘をつくことだってあるだろう。

 本作でも駒田ってずっと人を騙し続けているわけだよ。だけれど、ある瞬間に本音を語るわけだ」

亀「内川の『映画って人を幸せにするものじゃないんですか?』という問いに対して『映画は人を不幸にするんです』という返しじゃな」

 

主「自分はここで嘘ではない、駒田の本心が出てきたと思っている。その感覚ってなんとなくわかるんだよね。別に知り合いってわけじゃないけれどさ、じゃあ黒澤明が幸せそうですか? 是枝裕和や宮崎駿が幸せそうですか? って話だよ。

 映画製作は人生を幸福にする手段だとは思えない……だけれど、駒田はそれを続けるんだよね。なぜならば、その根幹には『映画が好き』という思いもあるだろうし、それ以外の生き方を知らないということもあるだろう。

 でも、やっぱり1番は映画の幻想に取り付かれているからだろう

亀「……結局『映画は幻想を扱うものだ』ということじゃな」

 

主「この場面の内川は何も知らない観客であるということもできる。中の人からしたら全ての仕事に情熱を傾けられるわけじゃないし、名声が約束された作品でもない。そもそも公開されるかもわからない。

 だけれど、内川の……観客側にするとその映画は『人生の1作』になってくるんだよ。どんなひどい脚本であっても感動する人はいるし、自分の人生を重ねる人もいる。特別な思いで見つめる人もいる。

 結局は誰もが映画の酩酊感に酔っている……そういう映画なんだよ」

 

 

 

最後に

 

亀「では最後になるが……」

主「うまいのは人生はシネマティックの方だね。まあ、こちらは本国だと小規模公開映画ではないだろう示唆。

 一方で日本人に深く突き刺さるのはエキストランドの方だろう。どちらも小規模公開で見やすい映画とは言えないけれど……できれば、セットで見ると色々な意味が感じられて面白いとは思うよ」

亀「……それは中々難しいじゃろうが、一見の価値ありの問題作なので是非劇場で鑑賞してほしいの」