物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『SING シング』感想と考察 吹き替え声優が超豪華!!

さあ、今週は大忙しだよ! 大作映画が目白押しで語りがいがある週だよ!

 

 

 

 

 

キターーーー! 元々アニメ系を重視しているブログではあるけれど、今週は『3月のライオン』と『ひるね姫』という注目作に、さらSINGもあるからすっごい楽しみ!

 

 

カエルくん(以下カエル)

「吹き替え、字幕問題って結構世間では大きい違いだけど、このブログではあまり重視していないよね?」

 

味が全然違うからね。

  特にSINGは字幕、吹き替えともに味が絶対違うから2回見たい映画になっている!

 色々と考えることは多いけれど、最近は芸能人声優もきちんとした人を当ててきているし……例えば『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』なんかも芸能人どころかフィギアスケート選手を起用しているけれど、動物の役だったりしてそんなに話さないし……

 これはひどい! という映画は実はそう多くないんじゃないかな? 特に本作は吹き替えがオススメ! 

 その理由もこれから話していくよ」

 

カエル「日本のアニメ文化を支える1つの大きな要因は声優文化にもあるしね。合っていれば映画の世界をさらに魅力的にしてくれるし」

主「例えば広川太一郎さんの場合なんて吹き替えとしての力がありすぎて、原作を大きく改変している時もあるけれど、それが作品の味をさらに魅力的にしている。『Mr.BOO!』なんて世界で1番面白いんじゃないの?

カエル「じゃあそれも1つの味として、感想記事を始めていくよ!」

 

シング2の記事はこちら

blog.monogatarukame.net

 

 

 

 


www.youtube.com

 

優等生のディズニーと比較して

 

ユニバーサル系列のイルミネーション・エンターテインメントは独特の面白さがあるスタジオって印象があるね

 

 

海外アニメーションとして比較対象になるのがディズニー・ピクサーになると思うけれど、ディズニーに比べれば世界中のスタジオが全て1枚落ちるから。

 

 

主「ディズニーと戦えるアニメスタジオはジブリだけだったけれど、もうほぼ解体されちゃったしね。

 それはいいとして……先週公開の『モアナと伝説の海』の記事でも語ったけれど、どうしても優等生すぎるんだよね。テーマがはっきりあって、世界中どの国の子供に見せても安心できる、真面目なエンターテインメントになっている。

 もちろん、クオリティがすごく高いけれど……一方でその先の展開も予期できるし、テーマやメッセージもいい子ちゃんすぎる気がする。

 それに比べると完成度や脚本の密度などは1枚落ちるけれど、このスタジオは下ネタもあれば悪事も満載で、ドキドキワクワクさせてくれるスタジオだよ

 

カエル「その意味ではすごくいい状況になっていて、優等生で誰もが賞賛を送るディズニーがトップにして、少し悪目で破茶滅茶なんだけどエンタメとしても楽しく、終わってみるときちんと教育的面に配慮しているイルミネーション・エンターテインメントがそれに続くというのはバランスもいい」

主「そう考えると日本もやっぱりすごくて、ドラえもんのようなキャラクターアニメ映画もあれば『君の名は。』のようなエンタメ映画に『この世界の片隅に』のような大人も楽しめるアニメもあり、さらにオタクアニメに『虐殺器官』のR指定の映画もあって……と多様性に満ちている。

 やはり日本とアメリカはアニメでは頭1つ抜けている印象があるかな

 

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たくさんの可愛らしい動物がいっぱい!

(C)Universal Studios.

 

 

脚本には目を瞑る

 

最初に脚本の穴について言っちゃうんだね

 

決してダメだ! とか、見れない! というレベルではないけれど、若干脚本の流れは難があるよ。

 

主「賞賛することはできない。

 御都合主義な部分もあるし、描写が甘い箇所も多々ある。それって有り!? と思うこともある。だけど、それをアニメーションの面白さで突っ走ってしまう良さに溢れている」

カエル「アニメに力があるってことだろうね」

 

主「力押しとも言えるけれど……だけど、これもまた1つの魅力でさ。ディズニーは技術に裏打ちされた完璧な脚本を仕上げてくるけれど、完璧すぎて自分は不満なんだよ。というか、その技術を知っていると全て先読みが出来るから、種の知っているマジックを見ている気分。

 一方でこちらは破茶滅茶なんだけど、だからこそ次の展開がどうなるか予想できなくて……だけど脚本構成が破綻しているということもなく、大筋ではしっかりと構成されれている。

ペット』なんて予告編詐欺だとすら思ったけれど、それでもそれなりには楽しめたしね」

 

カエル「特に本作の主役は音楽だから、そちらを楽しむミュージカルみたいなものであって、物語は添え物と考えたほうがいいのかもね」

主「むしろ自分は大好物なテーマだし、語り口だから!

 だけど脚本の上手い下手でいうと、そこまでで絶賛するほどではないかな? という印象」

 

 

 

 

吹き替え版を推す理由!(吹き替えキャスト紹介)

 

最初にも語ったけれど、そこまで吹き替え、字幕に対してこだわりのない主だけど、本作は吹き替え1択で見に行ったんだよね?

 

今作は絶対吹き替え版をオススメします!

 

 

主「なぜならば、これほどの合格キャストが一同に集まって歌を披露する機会なんて全くないから! 今作は日本だけが吹き替え版で、さらに歌まで吹き替えることを許可されているけれど、その理由は圧倒的な声優文化があるから!

 本作の声優陣は超豪華です! しかもよくある芸能人声優を連れてきて豪華声優陣、というのとはわけが違くて、本当の意味で超豪華声優陣だから! これは是非とも吹き替えで見て欲しい!」

 

カエル「声優好きの意見ではあるけれど、それだけのクオリティはあることは間違いないです、いや、本当に」

 

バスター・ムーン 内村光良

 

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お調子者なバスター

(C)Universal Studios.

 

 

まずは本作の主演のバスター・ムーン役のウッチャンだね

 

ちなみに最初に言っておくと、ウッチャンは歌いません。

 

主「なので声優としての演技の評価になります。

 声優としては下手ではないけれど、若干の違和感はあったかな? という印象。ただ声優としての実績もある人たちを相手にして、これだけの演技ができるのはさすがだよね」

カエル「ハリウッド映画吹き替え初挑戦らしいね」

主「ウッチャンの人の良さが出ていて、いい声だったんじゃないかな。自分は違和感なかったし、中々良かったと思うよ」

 

 

ミーナ MISIA

 

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気弱なミーナ

(C)Universal Studios.

 

まさかのMISIAが声優を務めるとは! しかも歌唱シーンだけでなくて、結構お芝居のシーンも多いんだよね!

 

てっきりお芝居はないのか、もしくは歌声のシーンだけがMISIAがやると思っていたけれど、意外としっくりと合っていたよ!

 

主「というのものさ、ミーナという役が自分に自信のないボソボソと話す役なんだけど、それが声を小さくした話すし、あとは演技プランが少し拙いくらいの方がミーナの気の小ささがよく出ていた。

 あとは……なんというか、台詞を『歌いながら』話すんだよね。ミュージカル風にというか……これって自然と抑揚ができるから、案外に気にならなかったな」

カエル「ぴったりだったよね。もちろん、歌声は文句無し! 

ミーナの持つ才能が最大限発揮された配役だったよ!」

 

 

アッシュ 長澤まさみ 

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可愛らしいティーンエイジャー

(C)Universal Studios.

 

 

そしてハリネズミのアッシュだけど……長澤まさみは『君の名は。』において奥寺先輩を妖艶……というか、なんとなく色気を漂わせながらもかわいらしく演じていて、すごくうまいなぁって印象だったけれど、それは本作でも変わらなかったね

 

この年齢でこの演技力だったら、多分本職の声優ともそこまで遜色ないと思う。

 

主「すごく自然でいい演技だった。特にハリネズミって相手役が谷山紀章で、こちらがいかにも紀章っぽい役でもあるんだよね。

 だけどそんな人を相手にしても全く違和感がない。ミュージカルにも出演しているから、声の伸びもいいし……

 今作も文句なしでしょう

 

ジョニー 大橋卓弥(スキマスイッチ)

 

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複雑なジョニー

(C)Universal Studios.

 

もしかしたら本作で1番不安を感じていたのは歌手の大橋卓弥だけど……もちろん彼の歌に関しては何の心配も、どころかお金を払ってでも見たい人だけど、さて演技はどうなのか? と言われると……

 

意外とよかったんじゃないの?

 

主「確かにこれだけの声優とうまい芸能人に囲まれているとそのハードルは上がることになるけれど、そこまで酷いほどの違和感はなかった。場面場面ではおや? と思うセリフもないではないけれど、それでも酷いというほどではないね。

 特にジョニーって気が小さい役でもあって、それもミーナと同じでローテンションで話すからさ、それも手伝って結構合っていると思うよ」

 

 

グンター 齋藤司

 

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いつでも自信たっぷりグンター

(C)Universal Studios.

 

 

豚のグンター役を務めるのはトレンディエンジェルの齋藤さんだぞ!

 

彼って結構いい声しているのね。

 

主「こうやって声だけ聞いていても何の違和感もないし、しっかりと作ってきていた。しかも歌唱力も本当にうまくて、相手役が坂本真綾なんだけど負けないだけですごいと思う。

 しかもおちゃらけたキャラクターにも合っていて……もしかしたら芸能人声優のMVPって彼なんじゃないの? っていうくらい素晴らしかった」

カエル「レディ・ガガもうまかったし、文句ないね。少しギャグも入っていたけれど、それがユニバーサルらしさを醸し出していたし」

 

 

カエル「あとは歌わないけれど、大地真央も入れて本作は『豪華声優陣』と呼ばれそうだけど……本当に豪華なのはこれからだよね!」

主「ここまでも確かに豪華だろうけれど、ここから先は武道館、アリーナクラスの声優陣が次々と出てくる。この面子が一同に……って場面は、あり得ないだろうな」

 

 

 

 

 

ロジータ 坂本真綾

 

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子供がいっぱいロジータ

(C)Universal Studios.

 

女性キャラクターでは長澤まさみ演じるアッシュやミーナと並ぶ露出度がある、主婦の豚のロジータだね

 

 

もう、坂本真綾が圧巻です!

 

主「素晴らしい! さすが!

 声優ファンだったら説明不要だろうけれど、一般的にはあまり知られていない人かもしれないから説明すると、さいたまスーパーアリーナ公演も埋めてしまうような大人気声優の1人!

 それでいながら舞台女優としても活躍していて『レ・ミゼラブル』のミュージカルではエポニーヌという重要な役を演じたこともある、歌と声に定評のある人!」

 

カエル「ちなみに主は全ての女性アーティストの中でも坂本真綾が1番好きという人なので、激推ししています

主「透き通った透明な声質は聞いていると涙すらも浮かんできて……さらに元々作詞を手がけていて、その詞も素晴らしく良いけれど、近年は作曲も手がけるという才能の持ち主でもあります!」

カエル「……テンションが一気に上がったなぁ……

 でも坂本真綾ってあまりキャラクターソングなどを歌わないことでも有名だよね。本作のようなカバーはいくつかやっているから、厳密にはキャラソンと区別されるものかもしれないけれど」

主「もう斎藤とのコンビはすごくいいよね! 坂本真綾を相手にしても負けない斎藤も結構すごいけれどさ!

 

 

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 坂本真綾のオススメアルバム。

マイベストアルバムの1つでもあります。

 

 

マイク 山寺宏一

 

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賛否は分かれる? 

(C)Universal Studios.

 

もはや説明不要、声優界の人気者であり、声優が選ぶ声優ランキングだと不動の1位、七色の声どころが何百色の声を持つトップランナー山寺宏一だよ!

 

 

今作でマイクが吹くサックスは全て山寺宏一が口から出した音です……というのは冗談だけど、多分山ちゃんなら違和感なくできるんだろうなぁ。

 

主「しかもシナトラをしっかりと甘く歌い上げながらも、マイクというキャラクターの持つ様々な面を時にコミカルに、時には憎たらしく演じあげたのはさすがの一言!

カエル「結構マイクは難しい役だと思うけれど、それをこのように演じたのは結構大きいと思うんだよ。小さいということもあってコミカルではあるけれど、結構激しい役だから賛否も別れるだろうし」

主「だからこその山寺宏一でもあるんだろうな。元々の役の持つ危険性を失わないながらも、しっかりとマイルドに表現できる声優というのもあるのだろう」

 

 

エディ 宮野真守

 

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歌声も聴きたかった……

(C)Universal Studios. 

 

マモちゃんも武道館くらいならあっという間に埋めてしまうほどの人気を持つ、まさしく声優界の王子様と言っても過言じゃないよね

 

 

積極的に歌を発表している男性声優では1番人気と言ってもいいんじゃないかな? 特にソロでやっている人の中ではね。

 

 

主「今作だと残念ながら歌唱シーンはそんなに多くないけれど、やっぱり歌声の甘さは素晴らしいよ! 本作が勿体ないなぁと思うのは、元々がガガなどの人気アーティストの曲を使う以上、少ししか使えないのも理解できるけれど、日本語吹き替えになったことでその人の歌う洋楽がすぐに切り替わってしまうんだよ。

 これだけの豪華声優陣だからもっとたくさん聞いていたかったのに……

 

カエル「日本語吹き替えになって違う魅力を持った作品だけど、マモちゃんや紀章、水樹奈々などは勿体無い使い方になってしまったね」

主「まあ演技をメインにという意味では何もおかしくは無いんだけどね……」

 

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宮野真守もどのアルバムもいいけれど、このアルバムが1番オススメ

 

 

カエル「他にも音楽ユニット『GRANRODEO』でこちらも大人気の谷山紀章、それから紅白出場経験豊富な水樹奈々、ルフィやクリリンでおなじみの田中真弓、若手の中でもジャイアンでお馴染みの木村昴や、アイドル女性声優として注目度がうなぎ登りの佐倉綾音なども出演中!」

主「あと忘れていけないのはジョニーの父親役の石塚運昇で、この映画が『洋画の吹き替え』であって、アニメの吹き替えにならなかったのは山寺宏一と石塚運昇がしっかりと支えていたからだと思う。

 その意味でも単なるドタバタコメディーではなくて……結構面白い作品に仕上がっているね」 

 

カエル「コアな見方をすると谷山紀章の演技がサンリオが最近力を入れている『SHOW BY ROCK』のシンガンクリムゾンズにそっくりだったのも面白かったね」

主「しかもちょくちょく歌うんだよね。だからこの役に谷山紀章を当てたのはピッタリだと思うよ。

 というわけでこれだけの超オールスターが一同に会するわけだから、声優ファンは当然足を運ぶべきだし、そうじゃなくても楽しめる作品に仕上がっているよ!

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

脚本について

 

でもさ……結構いろいろと面白い部分も多いけれど、最初に語ったとおり脚本はお粗末とまでは言わないけれど、結構粗いよね

 

ユニバーサルってそんなものじゃない? というのは抜きとしてても、すごく粗いとは思う。

 

主「元々結構難しいジャンルなんだよ。

 ここ最近ミュージカルや音楽を打ち出していく映画が多かったから痛感するけれど、そういう映画って脚本や物語を楽しむものではないんだよ。いや、それもあるけれど……結局歌唱シーンは物語が止まってしまうし、その分尺が短くなってしまう。

 だから『ラ・ラ・ランド』が上手いのは、セブとミアの2人の関係に終始したこと。これで物語をしっかりと限定し、深く掘り下げることにしたけれど、それでも脚本には穴が多いと言われているわけじゃない?」

 

カエル「それでいうとこの作品は辛いよ……登場人物は多いしさ。その全員を深く掘り下げることもできないし、だけどオーディションで音楽映画だから人数も多くなってしまうし、かといって音楽を減らすことは絶対にできない。

 そして子供向けということも考えても時間は短編合わせて2時間以内に収めなければいけないし……と考えると、もうどうしようも無いよね

主「だから結局はこういう全体的に浅い脚本になってしまう。だけど、しっかりとテーマに沿ったうまい構成はできていて……それをこれから説明しようか」

 

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この5人組も可愛らしい!

(C)Universal Studios.

 

 

それぞれのキャラクターに与えられたもの

 

今回は色々な動物たちが出てくるけれど、それにも意味があるのかな?

 

意味があるよ。

 

主「ちょっとコアラとかはわからなかったけれど……この手の作品ってやっぱり『夢を追う』ということがすごく大事じゃない? だけど、ユニバーサルはさらに1歩深い部分を描き出している。

 それが各キャラクターに与えられた役割だよ

カエル「各キャラクターの役割?」

 

主「例えば、ゴリラのジョニーは親がギャングで窃盗を繰り返している犯罪者なんだよね。だけど、夢を追うことを忘れていない。

 じゃあ、なんでこの役にゴリラを配置したのか? というと……それは実は意味がある」

 

これって黒人問題でもあるんだよ。

 

主「貧困な家庭に生まれてしまった黒人が、窃盗団の一員になってしまう。それは現代のアメリカ社会では重要な問題でもあるわけだ。だからこそ、本当は夢を誰よりも追わなくてはいけない人たちが差別されてしまい、夢を追う余裕がないということを示している

カエル「黒人問題って『ムーンライト』がアカデミー賞作品賞を受賞したくらいに、アメリカでは重要な問題として扱われているわけだよね」

 

主「だからこそ大きくて力があって、そして群れ社会で実はおとなしく、体が真っ黒なゴリラを選択したんだと思う。

 その目線で見るとそれぞれのキャラクターにも明確な役割がある」

 

 

 

 

本作のテーマである『夢』

 

じゃあ、それを解説していくと?

 

例えば豚のコンビは体型が崩れているわけじゃない?

 

主「可愛らしいけれど、歌手やスターを目指すような体型ではない。さらに言えばロジータは子供たくさんいる主婦であり、歌手なんて夢のまた夢である

カエル「あんなに子供がいたら、そりゃあね……」

 

主「さらにいうとアッシュはヤマアラシだけど、ヤマアラシは『ヤマアラシのジレンマ』という言葉があるように身を寄せ合うことが難しい動物でもある。つまり、1人で閉じこもっているという意味かな。

 さらに作中でも路線の変更を迫られていたけれど、それは『本来持っているもの、やりたいこととは違うことを強要される』という意味がある」

カエル「ふむふむ……」

 

主「それでいうとネズミのマイクはジャズミュージシャンということもあって、あのような破滅的な性格をしているけれど、さらに言えばすごく身長が小さいというハンデもあるし、どうしようもないクソみたいな性格で……それだけでも社会の落伍者という意味がある。

 象のミーナはそのまま、舞台に立つ勇気がない人の象徴だよね。すごく体は大きいのに、その内面は気弱というのはマイクの対になっているということもある。

 このように色々な性格や性質をそのまま社会問題化している人や人種などにあてはめてきた。他にも色に注目すると

 

ゴリラのジョニー=黒人

ネズミのマイク=白人

豚のロジータ=黄色人種?

ヤマアラシのアッシュ=ラテン系

 

 の象徴と捉えることもできる。そう考えるとマイクがあれだけ傲慢なのは『白人=傲慢』というメタファーであるという見方もできるわけだ」

 

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いい味を出していた秘書

(C)Universal Studios.

 

 

劇場が指し示すもの

 

そうなるとあの『経営的に傾きかけた劇場』というのも意味があるね

 

そうだね。あれは主人公、バスター・ムーンの夢のつまった舞台であるけれど、その夢は叶えられていない場所になるわけだ。

 

主「そう考えると、あそこは『叶いっこない夢の場所』でもあるんだよ。だけど、それでもバスターは諦めることなくオーディションを開始する。そこに集まったのは上記のように『夢を追えない事情のある者たち』ということだ。

 これだけで単純に夢を追う物語ではないということがわかるでしょ? 到底叶いっこない連中の集まりなんだよ」

 

カエル「その賞金すらも結局は中身のないガラクタだったわけだ

主「その中身は他の人にしてみればガラクタばかりであるということも象徴的で……j結局夢の舞台かもしれないけれど、他の人からしたらどうでもいいものなんだよ。もちろん、悪いのはバスターかもしれないけれど、社会的な制約のせいで夢が差し押さえられてしまい、父親が必死になって残してくれたものすらも失ってしまうということの意味を考えると切ない気持ちになるよね」

カエル「そう考えると相当重い話だよね。

 だって、夢は叶いっこないし、その舞台はガラクタだし、能力とかもあるかもしれないけれど社会や親の事情によって夢を諦めざるを得ない人たちをテーマに物語をつくっているわけで……

 

主「アニメで動物をモチーフにしてすごくコミカルに見せているけれど、内容はとても深くて重い。だから物語の展開などに粗があるけれど、それは当たり前なんだよ。だってこれだけのモチーフを入れて、群像劇で、さらに歌も入れて尺も限られていて……でうまくやるのは至難の技だ。

 まあ、それをやってしまうのがディズニーであり『ズートピア』なんだけど!」

 

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大好きなワンシーン。一緒に踊りたくなる!

(C)Universal Studios.

 

 

そして物語は結末へ

 

結局のその夢の舞台である劇場は流れてしまうし、土地は差し押さえられるしで散々だよ

 

あれは『ボロボロの夢』であると同時に『バスターの見栄』でもあるんだ。

 

主「バスターはすごく熱意があるけれど、結局その舞台って父親が洗車をして稼いでくれたお金で買ってくれたものであって、本当の意味でバスターが勝ち取ったものではない。

 だからこそ1度それを自分の力で掴みに行く必要がある。そのための儀式でもあるよ」

 

カエル「そして見栄もプライドも流れ果てた土地で立ち上がって、それこそ裸一貫でやり直すわけだ」

主「そう。そこはボロボロの青空劇場かもしれないけれど、初めてバスターの力で誰かに頼ること……つまりスポンサーなどの力などの他力本願にならずに出来上がった劇場なんだよ。

 だからあれだけ素晴らしい舞台に仕上がった。

 出演者も訳ありばかり、スネに傷がある者もいる、子持ちに体型も崩れている、そんな人間がボロボロの舞台で歌い、踊る……だけどそれが如何に素晴らしいことかっていう話だよね。

 そこに立つ人は誰1人として妥協をしていないし、自分の精一杯の姿を見せている。それを表現と言わずになんと言おうか!

 

カエル「その歌声からは本物の満天の星空と月、そして人々が暮らす夜景が見えてくるわけだね」

主「だから物語の流れという意味での脚本はそんなに良くないけれど、すごく練られている。しっかりと作ってあって、子供向けに仕上がっていながらも、大人も楽しめる1作になっている」

 

 

 

歌の使い方

 

最後に歌の使い方について少し書いていくけれど……

 

本作は劇中歌の使いかもうまいんだよね。

 

主「例えばジプシーキングスの『バンボレオ』という曲が劇中で、豚のロジータがスーパーで踊るシーンで使われるけれど、この歌って『なぜ夢が叶わなかったのか? それはあなたのせいじゃない』っていう歌でもあるんだよ。

 どうしてこんな人生になってしまったのだろう? という歌があの場面で流れたのか、よくわかるよね」

 

カエル「それでいうとクイーンの『アンダープレッシャー』が流れた場面も象徴的かもね」

主「本作は登場人物の心情を説明する歌もある。だけど、洋楽だから日本人にはわかりづらい部分もあるかな。

 ここは字幕版の強みだろうね。ラストの圧倒的な音楽のシーンにおいても字幕が出てきて、ちょっと邪魔だなって思ったし。それが契約によるものなんだろうし、メッセージ性の強い部分だから強調したいのもわかるけれど、日本語の歌に字幕はさすがにやりすぎだよ。そこも減点。

 あとは……歌とは関係ないけれど、スタートや途中のピラゴラスイッチももっとたくさんあると楽しめて良かったなぁ……あれって観客が集中する場面でもあるから、うまく使うと効果的になると思うけれどね」

カエル「途中のお母さんのピラゴラスイッチは良かったよ」

 

 

 

最後に

 

結構粗はあれども評価は高いという印象かな

 

はっきり言えば『モアナ』よりもこっちの方が好き。もう1回見に行くならモアナよりも『SING』だね。

 

主「もちろん、クオリティで言えばディズニーやモアナの方が圧倒的に高いよ。だけど自分はこっちの方を推すかな」

カエル「元々ディズニーやピクサー系に対してそこまで好感を持っていないもんね」

 

主「うまいではあっても好きにはなれないかな。ただ、やっぱり唸るのはディズニー。あのクオリティの高さはトンデモなくて、実写映画も見習った方がいい。見習っているんだろうけれどね。

 優等生なディズニーさんがいるけれど、自分はちょっと抜けていてちょいワルだけど芯は熱いイルミネーション・エンターテインメントの方を支持したい。特に今回は音楽映画という点では被ったし」

カエル「ここは好みが分かれるところだね……それにしても、音楽映画が続くなぁ……」

主「やはり大作って音楽を重要視しているということでもあるのだろう。これで一応打ち止めになのかな? 今後の公開スケジュールを見ても、明らかな音楽映画は他にないような……」

カエル「しばらくはお腹いっぱいかも」

 

主「ちなみにカエルに一回聞いてみたい質問があるんだけど……」

カエル「え? 何?」

主「お前ってナニサマガエルなの?

カエル「……教えてあげないよ! ジャン!

 

 

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