カエルくん(以下カエル)
「いよいよ『さよなら私のクラマー』の1巻発売だよ!!」
亀爺(以下亀)
「映画も来月公開する『四月は君の嘘』の荒川直司の新作じゃな。アニメも好評じゃったが、映画は果たしてどうなることやら……」
カエル「……まあ、正直予告を見るとあれ? って思うよね」
亀「ただ今年は邦画の当たり年ということもあるし、同じような評価をしていた『ちはやふる -上の句-』などは面白かったら、実際に見てみないとわからんけどの」
カエル「個人的には新川直司というと、四月もそうだけどコミック版の『冷たい校舎の時は止まる』の方が印象は強いかなぁ。あの時は辻村深月のデビュー作のコミック版として読んでいたけれど、四月がブレイクしてから『あれ? これって同じ作者じゃない?』って気がついたし」
亀「あれもまた、原作とは少し違う切り口や作り方で面白かったの……これもまたいつか感想記事を書くかもしれんな」
過去作の『さよならフットボール』の感想はこちら
登場人物紹介
周防 すみれ
本作の主人公。ポジションはFW(ウィング)。
スピードに優れているが、中学時代は他のメンバーがその実力についてくることができずに、孤軍奮闘状態だったために無名の存在となってしまっている。曽志崎緑にライバル視されているが、本人は特にそう思っていない模様。これは実力差云々の前に、曽志崎に一度も勝ったことがないため、ライバル視することができなかった。
そのスピードは全国制覇を果たした久乃木学園高校を驚愕させるほど。
曽志崎 緑
すみれの相棒。ポジションはボランチ。
すみれをライバル視しているが、結果的には曽志崎の圧勝で中学時代を終えている。中学時代は全国3位までチームを導いたほかアンダーの代表に選ばれるほどの実力者である。すみれのことを誰よりも高く評価しており、その才能が潰れていくことが勿体なく思っている。
恩田希
前作『さよならフットボール』の主人公。ポジションはMF。
前作において女子サッカー部がある中学に進学することができなかったため、男子とともに練習を積んでいたが、当然のように試合に出場したことは(公式では)ない。そのため全国的どころか、地域的にも無名の存在であるがその実力は折り紙つき。
かつては男子とのフィジカルの違いに苦しんでいたようだが、吹っ切れた後は楽しく練習していた模様。
カエル「この3人はどれも主人公格だから、誰が明確な主人公かと問われると少し難しいね」
亀「1巻の表紙も緑じゃからな。1番主人公のように描かれておるのはすみれじゃが、この3人を中心に描いていくようじゃの」
カエル「他にも前作からは越前佐和がマネージャーから選手に転向してプレーしていたり、まだ本格的な出番がないが男子にもナメック、山田、武井も同じ高校に進学しているね」
亀「前作のファンには嬉しいサービスじゃの。他にも今作から登場した中でもサンデー農業漫画で見たようなお嬢様キャラの白鳥綾や、やる気のない深津監督、元日本代表の能見などの魅力的なキャラクターも多数登場して『チーム』として描く準備が着々と整いつつあるの」
作品感想
カエル「でもさ、今作ってサッカー漫画じゃん。で、この作品を語る上でひとつだけ致命的なことがあるじゃん?」
亀「……そうじゃの。こればかりはどうしようも無いの」
カエル「……主ってさ、サッカーまっっっっっったくわからないんだよね」
亀「ずっと野球ばっかり追い続けておったから、野球漫画なら『ONE OUTS』のようなルールの穴をつくような漫画でも理解できるが、サッカー漫画はとなると……読んだ覚えが無いの」
カエル「キャプテン翼も知らないしね。一応、サカつくに一時期ハマっていたから、ブランチとかウイングとか、後日本のチーム名とかプレスとかは何となくわかるけれど、『ポゼッションサッカー』とか言われてもちんぷんかんぷんだよね……」
亀「なので、そのサッカーとしてのルールがどうとか、そういう事は何もわからん!! だけど、そのサッカーに詳しく無い読者の意見を書いていこうかの」
さよならフットボールと比べて
カエル「何だか、さよならフットボールと比べて、よりサッカー要素が濃くなったよね。あれは何となく理解できたけれど、今回は監督の話とかがあまり理解できないし」
亀「サッカー漫画として当然かもしれんが、特に1巻はサッカー描写も多いために余計にそう感じるの」
カエル「フットボールの場合は、学校の描写があって、恋愛描写があって、さらにギャグもあったからまだ読みやすかったけれどね」
亀「今作とフットボールの違いは何かというと、フットボールが2巻しかない短い作品であり……まあ、それが予定通りなのかは分かりかねるが、結果的には試合は1つしか描かれなかったの。
じゃが、今作は仲間をたくさん紹介し、コーチや監督、さらにはライバルも紹介していくから、それなりの長期的スパンで連載していくつもりじゃろうな」
カエル「いつも言うけれど、この手のメジャースポーツ漫画って難しいよね」
亀「そうじゃな。野球やサッカーは国民的スポーツであるから、ルールなどを知っているファンも多い。じゃが、当然のように一切知らんという層も多い。主のように野球はわかるけれどサッカーはわからないとか、スポーツに興味がないとかの。
サッカーや野球は……例えばオフサイドなど、知っている人なら常識であっても、知らない人には意味がわかりづらいルールも多数ある。
そこをどこまで説明し、どこまで専門的なことを描くか、というバランスが求められるからの」
カエル「ここは作者の裁量次第だよね。あとは、チームスポーツの難しさもあるし」
亀「結局のところ、サッカーにしろ野球にしろチームスポーツじゃから、人数がそれなりに必要じゃ。じゃが、11人全員仲間を描くのは難しいし、しかも敵も描写するとなると、キャラクターの数は膨大なものになってしまう。
この1巻の中では主人公たちの『蕨青南高校』に、おそらく埼玉地区のライバルになる『浦和邦成高校』と全国屈指の強豪『九乃木学園高校』の3校が登場するから、登場人物を覚えるだけで大変じゃの」
カエル「まだ1巻だからなんとも言えないけれど、でも面白いスタートだと思うよ」
漫画的な演出
カエル「漫画もうまいよね。絵柄とか、キャラクターデザインだけじゃなくてさ、四月もそうだったけれど、決めるところはきっちりと決めるというか」
亀「そうじゃの。例えば『一人になんてさせないから』とか、『ボールは丸いんだよ』『私ほどじゃないけどね』などの、決めるべきところはきっちりと、大ゴマで決めてくるし、絵からサッカーの躍動感が伝わってくるの」
カエル「あと驚いたのが佃のシュートシーン!! 蹴ったボールの伸びの表現が良かったよね!」
亀「蹴ったあとに、一気に伸びてくるサッカーボールのシーンというのは、月刊少年マガジンで読んでいる時の躍動感が良かったの。もちろんコミックスでもいいが、やはり大きい雑誌で読むと、より迫力があるわい」
「女子サッカーに未来はあるか?」
カエル「このセリフも良かったよね。引き込まれていくし」
亀「……ただのぉ、この辺りは少し言いたいこともあるんじゃよ」
カエル「へぇ。何を」
亀「最近、よく言われるのが『女子がすごい』という言葉じゃな。ニュースやオリンピックもあって、聞く機会も多いじゃろう。もちろん、今回のメダリストも男子も女子も素晴らしいと思うじゃが、やはり『女子が』という部分に女性の社会進出などの影響があって、より強調したいのがわかるのじゃ。
じゃがなぁ……わしからすると女子サッカーは羨ましいの」
カエル「羨ましい?」
亀「例えば、女子野球なんて世界大会を4連覇しておるし、しかも来月には5連覇をかけての世界大会がある。しかし、マスコミは一切取り上げてくれんじゃろ?
わしがテレビで見たのは『サンデーモーニング』くらいかの。ハリーがあっぱれをくれたことくらいしかテレビで見たことがない。女子の高校野球とか、その存在をどれだけの人が知っておるか……
吉田沙保里やレスリング女子などもそうじゃが、世界に活躍する女子選手で注目を集める人ももちろんいる。いるがの、活躍しても注目してもらえない競技もあるんじゃよ」
カエル「次のオリンピックも男子が野球、女子がソフトボールだしね。どっちの競技も女子野球、男子ソフトボールもあるのに、なんだかなぁ、って思いもあるよ」
亀「わしからすれば、女子サッカーに未来があるかと問われたら、すごく恵まれた環境にあるとすら思うがの。
代表選を地上波のテレビで放映してくれるんじゃぞ? 今の女子野球では10連覇してもどうじゃろう、してくれないんじゃないかの?」
カエル「世界的な競技人口の違いとか、普及率も違うから一概に比べられないけれどね」
最後に
カエル「最後は少し横道に入ったけれど、いい作品だよね!」
亀「これからまた連載を続けていくうちに、ヒットする予感がするの。看板作品が次々と終わって月マガも寂しくなったと思っておったが、ここにきてまた面白くなってきたの」
カエル「やっぱり川原正敏作品、ましろのおと、新川直司作品とかあるのとないのとじゃ全然違うからね。他の作品も面白いけれどさ」
亀「ここから先の展開も期待したいもんじゃな」