かつて週刊少年ジャンプにて青少年たちのハートと何かを握った桃栗みかんが、まさかの少女漫画誌で野球漫画を連載ということで当然のようにチェックしてみた。
ちなみに私は東西南北ならば北派。普通に良い娘だし、東はそういう対象というよりは同じような道を行く同志な気がするし、西は……あんまり好みじゃないなぁ……
そんな話はともかくとして、群青にサイレンの話を始めよう。
登場人物
吉沢修二
身長178cm 左投左打
今作の主人公。少年野球時代に野球をやめていたが、高校入学を機にもう一度野球を始める。割と自信家だが、うまくいかないとすぐ不貞腐れるタイプ。
この身長で左利きとなると投手を目指すのは当然だろうか。身体能力も高く、いい球を投げることができるがイップスにより試合になるとコントロールが定まらない。
吉沢空
身長158cm 左投左打
修二の従兄弟。修二が野球をやめたのも、空に負けたからなのだが、ほとんど八つ当たりみたいなもので空自身はとてもいい子。この身長からは想像できない球を放り、特にカーブを決め球とする。
女の子みたいだが男の子……らしいが、明言はされていない(名前からして女の子の可能性がワンチャン……ないかなぁ)
基本的にはこの2人を中心に話は展開していく。
他にも修二の親友、角ヶ谷尚志や教師の蓜島なども登場するが、なんとなく女子ウケしそうなルックスと性格の2人。
ちなみにこの作者といえば若い女の子を期待するが、登場するのは妹の亜子だけで、割とリアルな体型と性格なのでそこを期待する男性読者は残念ながらお呼びでない。
感想(ネタバレ含む)
マーガレットコミックスということで、あれ? と思ったのだが、連載誌自体は『高台家の人々』などを連載するYOUという雑誌らしい。さすがに女性漫画誌まで詳しくないのでこれが普通なのかはわからないが、思った以上にしっかりと野球漫画をしている!
あれ、マーガレットって知らない間に少年誌になっていたのかなぁ? と思ったほどだ。女の子も主人公の妹が出てきたのだが、それも露出度がそこまで高くなく、普通の女の子のようだった。
2巻の表紙にいるピッチャー(空)の方がヒロインのようだし、明らかにかわいい見た目をしている。
多分女性視点からすると相当腐ったような見方ができる描写もあるのだが、それはもう少年漫画、青年漫画で連載中の男性向け作品すらそういう扱いなので仕方ない。『おおきく振りかぶって』なんてもう女性ファンの方が多そうだし、東京ドームにOP戦を『ダイヤのA』とのコラボデーに見に行った時は、女性陣の歓声がすごかったし。
さすがに『グラゼニ』や『ONE OUTS』は腐る要素はないだろうが、あれは変化球野球マンガだからまた読者層が変わるだろうし。
では肝心の野球漫画としてどうかというと……
これが中々面白い!
普通野球漫画において主人公は投手であるのが一般的であり(もう例を挙げるのも面倒くさいくらい)主人公が投手以外の漫画というと大正義ドカベンがあるものの、あとあぶさんくらいしか私は思いつかない。
本作の最大の特徴は何と言っても『左利きのキャッチャー』という点である。
元々主人公は投手をしていたのだがより才能のある従兄弟の空の加入により、投手の座を追われてしまう。部活の人数が少ないためにコンバートされた先がまさかのキャッチャーだった。
ただでさえ投手がやりたいのにポジションを追い出されてしまい、さらに主人公のトラウマの元であり、大嫌いな空とバッテリーを組まなければならないという状況に拒否感を示すというのが2巻の内容だ。
左利きのキャッチャーはアマチュア野球は右打ちの選手が多いこともあって、絶対数が非常に少ないが(左利きの選手は投手には重宝するが、野手としてはファースト、外野以外はあまり一般的ではない)その特殊な設定をこの先どうやって生かすのか、非常に楽しみである。
元々投手ということもあり、肩の強さは保証されているし、イップスで投げられないだけだからその能力自体は問題ないだろうし。
その相方の空はというと身長157センチと高校生にしては非常に小柄の投手であり、この小さな投手と、左利きの捕手という一風変わった特殊なバッテリーとなっている。
まだ試合シーンというのはそこまでがっつりと描写されてはいないものの、空の投球フォームもおそらく杉内を参考にしていると思うのだが、違和感なく読むことができた。
高校野球をモチーフとした青春スポーツものとしたら、中々のものではないだろうか? タイプとしては恋愛描写のないあだち充作品か、理論の少ないおおふりといったところか。おおふりって男子向けだから野球に詳しい人だとすんなり読めるけれども、ルールもよく分からない人も多いであろう女性向けだったら、群青にサイレンぐらい軽い作品の方がいいだろう。
女性向けマンガということもあって少し遠巻きに見ている男性読者もいるかもしれないが、野球マンガが好きであれば一見の価値ありだと思う。