カエルくん(以下カエル)
「ではここで今週のクロスレビュー第2弾、邦画編といきましょう!
ちなみに、はてなブログの公式さんによると、このブログが開設して500日だそうです」
亀爺(以下亀)
「500? はて、2016年の1月に開設して、今は9月じゃから……どう考えても500日はとうに超えておるような……」
カエル「はてなさんがどういうカウントしているのかわからないのでなんとも言えません!
ちなみにタグ付けのミスなどがなければ、ちょうどこの前の記事で映画記事が300を超えたみたいです。何度か記事にした作品もあるので、300作品をレビューしたわけではないですが、これはこれで誇っていいことなんじゃないかな?」
亀「……550記事も書いて、しかも1年半以上も運営しているわけじゃからの。思い返すと、トンデモナイことじゃな」
少なくともこのブログを始めていなければ、飲む打つ買うのどれもやらず、タバコも夜遊びもしないというつまらん一オタクの日常がダラダラと続いただけであろうから、その意味では意義があったのかもしれん」
カエル「映画を見たり、アニメや漫画、小説を楽しむので忙しいから、他に趣味は増やせないって話だけれど……あと、野球見たりさ、音楽聴いたり、格闘技見たりとやることも多くて!
今はブログを書いて、昔は他にもいろいろと手を出していたし……」
亀「外に出てもどこか屋内に行くようなことばかりじゃな」
カエル「えー、ではいい加減に感想記事を始めるよ!」
幼な子われらに生まれ
人気作家、重松清が21年前に発表した同名小説を三島有紀子が映画化。主演の浅野忠信が再婚した父親役、田中麗奈がその妻の役を演じる。また、寺島しのぶ、宮藤官九郎などのキャストが脇を固める。
サラリーマンの信は奈苗とバツイチ同士の再婚を果たし、奈苗の連れ子である娘2人を養いながら幸せな家庭を築いていたある日、奈苗が妊娠が発覚して家庭がギクシャクし始める。
長女の薫が反抗期を迎え、さらに12歳と多感な時期であることもあって信に対して敵意を向け始め『実の父親に会いたい』と訴えかける。DVにより苦しんだことを思えば会わせたくない奈苗と反抗する薫の板挟みになる信に、さらに前妻である友佳からも連絡が来て……
感想
#幼な子われらに生まれ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年9月6日
いやぁな映画(たぶん褒め言葉)
牛乳石鹸のCMを連想させる家族と父親について言及した作品
中盤はほんっっっっとにイライラした!
男性脳と女性脳の違いについてよく語られるが嫌ってほど男と女の考え方の違いがよくわかる
現代のお父さんはどうすればいいのかね?
カエル「というわけで最初は昨年『少女』を絶賛した三島有紀子監督作品から語っていくけれど、20年前の小説を現代に甦らせたというけれど、むしろ古いどころか現代のテーマについて練られたヒューマンドラマでもあり、社会派の映画でもあったんじゃないかな?」
亀「Twitterでも述べておるが、本作は『牛乳石鹸CM『与えるもの編』』を連想するような作品に仕上がっておる。CMは現代の家庭を風刺した内容がわかりづらいこともあって酷評されてしまったが、現代の父親の状況を見事に描写しておった。
今作も家族の問題についてじっくりと考えた社会派の物語と言えるじゃろうな」
カエル「この映画を見ていて思うのが、お父さんってどうすればいいんだろう? ってことで……信は家族思いのいいお父さんなんだよ。飲みの誘いも断って、有給はきっちり使い切って、基本は定時に退社して……というね。でもそのせいで会社からはあまりいいように思われてなくて、出世コースに乗っているわけでもない。
そして家に帰れば連れ子の長女の薫が反抗期ということもあって『あんたなんか知らないおじさんだろうが!』って怒鳴り散らして……うわぁ、って中盤は本当に浅野忠信と同じような気持ちになっちゃった」
亀「また細かいところがうまい映画での、男女の考え方の違いも描写しておるのじゃが、夫の信が『なんでこんな大事なことを相談しないんだ!』って怒ったら、前妻が『あなた、私の気持ちを考えたことがある!?』と怒鳴り返す……
よく言われるが、男は理屈でものを考え、女は感情で物を考える。その差がはっきりと出ておったの」
カエル「結局さ、この映画って……女性陣のいうことって『私の気持ちをわかってよ、察してよ!』ってことなんだよね。だけれど、男性からした『どう解決したいんだよ!? どうすればいんだよ!?』って話で、そのすれ違いが絶望的に交わることのない映画なんだよね……」
三島有紀子のうまさ
亀「今作って色々な比較ができるようになっておって、例えば描かれる家庭像も4つあるわけじゃ。
信と奈苗の再婚者同士の家庭
信の1度目の結婚の家庭
奈苗の1度目の結婚の家庭
信の前妻の再婚した家庭
この4つで見所がぜんぜん違うというのも面白いものじゃったな」
カエル「それぞれの抱える問題がぜんぜん違うもんねぇ……」
亀「そしてさらに奈苗の前の夫である沢田は家族を作らないという選択をしておる。
ここで5つの家庭に対するスタンスや、違いというものが見えるようになっておるの。
そして家族状況も面白い。本作は信の家庭は娘2人、さらに前妻間にいる子供も娘じゃな。つまり、本作は『女性社会の中の男性』を描いている。女性が中心となっている……なってしまう社会の中で、父親はどのように生きればいいのか? という問題じゃの。
他にも過去作『少女』は女子生徒たちの友情とドロドロした関係性なども描いておった。その描写もしっかりと本作でも発揮されており、そのためにより信の苦悩が伝わってくるようになっておる」
カエル「しかもさ、予告編でもあるけれど、血の繋がらない娘に『父親になる』ということを宣言して、いろいろと協力を求めておきながら、実の娘に対しては『しょうがないよ、実のお父さんじゃないんだもん』と答えてしまう。
その時その時で最適と思われる回答を言っているだけの人のようにも見えてくるんだよね。そこが女性陣にとっては気にくわないのと、調子が良く見えてしまうという……」
亀「そのあとに実の娘の選択と、そして義理の娘の選択……その2つがどのようになるのか。そして薫が父親の贈り物を受け取った時の表情……そこに色々な思いを汲み取れる映画となっておる。
男性には相当ストレスがたまる映画であるとも思うし、男女の違いや家族とは何か? ということに着目した映画じゃな。楽しめる娯楽作ではないが、見る意義のある映画となっておる。
いやいや、本当にうまい映画じゃの」
二度めの夏、二度と会えない君
赤城大空原作のライトノベルを実写映画化。主演には村上虹郎を迎え、AKB48の加藤玲奈、ガールズバンド『たんこぶちん』の吉田円佳などバラエティにとんだ役者陣も注目を浴びている。
高校3年生の智は文化祭でバンドの演奏を終えたのち、ヒロインである燐が病気で高校卒業する際に亡くなってしまったことのショックを受ける。病床での最後の会話で行ってしまったある言葉に後悔を抱えて引きこもりの生活を送っていたが、タイムリープする子により過去に飛ぶ、そこにはまだバンド結成前の、転校してきたばかりの燐の姿があった。
もう一度あの夏を繰り返す……そして今度は後悔しない日々を送ろうと決心した智が選ぶ選択とは……
原作はこちら
感想
#二度めの夏二度と会えない君
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年9月4日
村上虹郎目当てで劇場へ行く
音楽がすごくいいなぁ……
ガールズバンドみたいだな、と思ったら主演の女の子がガールズバンドで歌っている子なのね
劇伴も未知瑠だったから、なるほどと合点がいく
たんこぶちんのCDをチェックしようかな
カエル「では、村上虹郎目当てで鑑賞したこちらの映画の感想書いていこうか。
まず、Twitterでも書いたけれど音楽が抜群に良かったんだよね。
普通、この手のバンド系の映画って如何にも女優が歌いました、って感じでちょっとクオリティは落ちることが多いじゃない? それがかえって良かったりもするけれど、本当にうまくてびっくりしたよ!
そしたら『たんこぶちん』のボーカルが主演だったんだね。このバンド自体も初めて知ったけれど、いい曲だなぁって思ったよ!」
亀「わしは楽器は全く弾けんのでよくわからんが、見ているところでは『いかにも弾いてますよ感のある演技』ではなかったの。メンバーたちも村上虹郎も含めて、本当に弾いておるように見えた。
楽器をやる人には粗が見えるのかもしれんが、わしは違和感がなかったの。これは音楽映画では大事なことじゃ」
カエル「『ある映画』なんて全く弾いているように見えなかったからね……
音楽もガールズバンドらしい音楽で、高校生のレベルと考えたら異常に高い気もするんだけれど、映画としてみたら……そして話題になるレベルということを考えたら、確かにすごく納得いくものなんだよ」
亀「たんこぶちんの楽曲だけでなく、BGMも良かったの。今作の作曲家はこのブログでも絶賛した『真白の恋』も担当した未知瑠なのじゃが、スタートから音楽がよかった。それによって一気に引き込まれたところもあったの。
サントラが欲しくなった映画であるし、音楽映画として最も重要な音に関しては文句のつけようがない」
たんこぶちんの楽曲
メンバーの人たちも出演していました
二度めの夏、二度と会えない君 feat.Primember(TYPE-B/CDのみ)
- アーティスト: たんこぶちん
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックコミュニケーションズ
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遠距離恋愛爆撃ミサイル TYPE-B(DVD付)「二度めの夏、二度と会えない君」劇中歌
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欠点について
カエル「でさ、それ以外については……」
亀「酷評の雨あられじゃな。
正直、この映画は音楽以外は本当にひどい。まず、役者陣の演技からして酷評じゃよ。見ておられんかったというのが正直なところで……可愛い女の子を起用したのはわかるのじゃが、演技力に関してはケチしかつかん。
まず、何よりも台本が見える。
彼らが台本を暗記して、それを話していることが目に見えてわかってしまう演技。次に誰が何を言うのか、はっきりと伝えわってしまう演技になっておる。タイムリープしている村上虹郎が若干芝居がかっておるのはわかるんじゃが、他の役者もそのように見えるならば単なる演技プランの失敗じゃろう。
印象に残る絵もあるんじゃが、村上虹郎のナレーションの滑舌の悪さなども気になるしの」
カエル「あとは、これもラノベ原作ということもあるのかもしれないけれど、基本的に演技や演出、キャラクター設定がアニメ的だったんだよね。派手というか……キャラクター設定にも疑問が多くて」
亀「ライトノベルであったり、アニメであれば違和感がないようなものであるのかもしれんが、ヒロインの燐があまりにもわがまますぎて、サイコパスのように見えた。これは他のキャラクターが陰の要素があり、それを無理矢理にでも引っ張る強烈なキャラクターがいないと話が進まないということもあるのじゃろうが、こうやって実写化すると浮いてしまうの。
そして石田六郎の髪の毛やキャラクター設定から漂う違和感……これも全く作品にあっておらんかった。
何よりも、キャラクターたちがなぜそのような行動に出たのか、一切感情移入できん。唐突に話が切り替わったり、考え方が切り替わっておるから、理解できない」
カエル「多分原作小説ならば説明されていたりするのかもしれないけれど、映像化する際に色々とカットした結果、相当荒いつなぎになってしまったということもあるんだろうけれど……」
亀「極め付けは時間がないというのに、ダラダラと話している描写があったりして、緊迫感がまったくない!
急いでいると何度も説明しているのに、それが全く生きていない!
タイムリープ設定も意味がわからんし、ご都合のようにも見えるし……音楽以外に関しては全て酷評じゃよ。
実は燐もタイムリープをしておるのでは? と匂わせる演出などは評価できるが……それ以外は全部ダメじゃな」
カエル「でも音楽がいいから、それは評価してあげたいところもあって、タンコブチンのPVだと思えば、ある程度納得できるという……」
亀「それならばライブに行くかCDを買うか、実際のPVを見た方がいいと思うがの。
その音楽も同じ楽曲を……ざっと数えて8度ほどと何度も使っておるし、場面に会っていない楽曲もあった。音楽自体はいいのじゃが、さすがに飽きてくるし、雑な演出と言わざるを得ないの」
狂覗
1998年に発表された『14歳の国』をベースに、実際に起きた事件などを盛り込んで現代の教育現場を風刺したミステリーサスペンス作品。
中学生教師が瀕死の重傷を負っている姿が発見され、犯人は中学校の生徒ではないかという疑いが強くなったために森は教師を集めて、体育の授業中で生徒たちがいなくなったクラスに忍び込み、抜き打ちの持ち物検査を始めた。
そこで次々と浮かび上がる疑惑と明らかになるなる真実。
その衝撃の結末とは……
カエル「続いては小規模公開映画の狂覗の話になるけれど、こちらは東京での限定公開を終えて、今は他の地域で上映しているような状況ですので、やはり鑑賞するにはハードルが高いのがなぁ……」
亀「8月のランキングでも本作は3位に入れておるが、実際に起きた事件を参考にしているということもあって、ある程度の説得力がある物語になっておる。かなり虚構性の強い……さすがにやりすぎじゃろう、と思う演出なども多々あるが、その根幹にある問題というのが現代的だからこそ、この映画は絵空物語にはなっていないということじゃろうな」
カエル「校内暴力から物語はスタートするけれど、実はそのほかにも色々な問題があって……これはあんまり直接的に語ると面白みをなくしてしまうから、だいぶ濁していくけれど……ああ、ジレンマだなぁ」
亀「簡単に言えば今でもよく聞く学校にまつわる問題じゃな。
そういった事件を起こさないために、そして解決するためにも教師たちが倫理的に問題のある行為を始めることになる。基本的には刑事物と同じように考えてもいいかもしれん。
法律的に問題のある捜査方法を選択し、それによって事件を解決しようとするという基本プロットだといえば、伝わるかの?」
5人の教師が巻き起こす『狂覗』の世界。
覗いているのか、覗かれているのか……
先が読めても面白い
亀「この映画って途中からどのような展開になるのか、わかるんじゃよ。ああ、あの伏線が生きるんだな、あの展開がこうしてきたということはこの先は……というのが、なんとなく読める。
そしてそれがわしの場合は大体当たったのじゃが……それでも面白い」
カエル「サスペンスやミステリー映画ってトリックや犯人を知ると面白みをなくすことがあるわけじゃない?
だけれど、本作は多分展開や犯人を知っていてもある程度楽しめるんじゃないかな?」
亀「それほどまでに根幹にある問題に対して、世間やわしらがわかっているようでわかっていないということもあるのかもしれん。
確かに本作のような状況は稀じゃろう。1つ1つの事件を見れば、各学校に1人は抱えている問題かもしれんが、それがこうして1つの教室にぎゅっと詰まっているということは基本的にない……とさすがに思う。
それだけ衝撃的なことが続くわけじゃが、心のどこかで『もしかしたら……』という思いもあるわけじゃ」
カエル「大人になると自分の子供以外に中学生や高校生と触れ合う機会ってそうそうなくて……それこそ職場にバイトで入ってくることもあるだろうけれど、そういう職場ばかりじゃないし、しかも学校って社会的に隔離されているところもある、クローズな空間だからね」
亀「だからこそ『このようなことももしかしたら……』という意識がある。特に近年のいじめ問題などの報道などを見ると、かなり過酷な現状のようじゃからの。
若干演出が攻めておって、グルグルと回るような演出などが正直辛いところもあったが……画面酔いしやすい亀なのでの、若干目に悪い。そういった特徴的な演出も多々あるが、それも小規模映画の味ということを考えれば、中々に面白い作品じゃったのではないかの?
教師達は覗いておるが、観客達に覗かれている……そのようなメタ的な構造も含めて面白い作品じゃった」
カエル「正直、語りたいことはたくさんあるんだけれど、それはこの映画の致命的なネタバレをガンガンしてしまいそうなので、ここで終わることにしようか」
最後に、この映画の主演を務めました杉山樹志さんが28歳の若さで8月に急逝されました。
この映画が面白かったのは役者陣の熱演も当然欠かせません。
特に杉山さんの、一歩間違えると顔芸になってしまうほどのコロコロと変わる演技は強く印象に残っています。
謹んでご冥福をお祈りします。
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最後に
カエル「今回はもっと語りたい作品も多かったなぁ……
教覗はあんまり致命的なネタバレをするとあれだから、この程度になってしまうけれど、幼子はもしかしたら追記して分けるかもしれません。その時は悪しからず」
亀「映画を見るのはいいのじゃが、それとブログの執筆速度が追いついておらんからの」
カエル「すべての作品を語れるわけではないからねぇ……
観たい映画は増えていき、その分書く時間は圧迫されていくというのも、宿命かもしれないねぇ」
亀「これからもこの形式で書くことは増えるかもしれん、ということは言っておこうかの。書いていく途中に語りたいことが増えていくことも多いから、短文レビューをしてから独立した記事にすることもあるかもしれん」
カエル「この3作はそれぞれ味も違うし、自分は合わなかったけれど『2度目の……』などは見る人が見たら絶賛するかもしれないタイプの邦画なので、興味がある人は是非劇場で!」