物語る亀

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物語愛好者の雑文

絶賛!『神様になった日』ネタバレ感想&考察 麻枝准のクリエイターとしての苦悩を覚悟を反映した作品に!

 

今回はオリジナルテレビアニメ『神様になった日』の感想&考察記事になります!

 

 

 

構楽しむことができた作品だったね

 

カエルくん(以下カエル)

「今回は考察記事ということで、色々と独自解釈が入ります。

 ご了承ください」

 

「自分はネットで言われるほど、賛否が巻き起こる作品とは思えないんだけれどねぇ」

 

カエル「まあ、楽しみ方は人それぞれなので……それでは、記事のスタートです!

 読み終えて面白かったらツイート、ブックマークなどをお願いします」

 

 

 

 

夏凪ぎ/宝物になった日 TVアニメ「神様になった日」挿入歌

 


新作TVアニメ「神様になった日」第1弾アニメPV

 

 

 

 

 

 

感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

賛否が激しく割れていますが、自分はかなりの良作だと思っています!

 

カエル「泣きの達人であり、笑いでも楽しませてくれる麻枝准らしさも感じる作品だったのではないでしょうか。

 キャラクター性もよく、作画面も安定していたし……世間的には謎の残るような作品とは言われていますけれど、全体としてかなりまとまっていたと思います」

 

主「自分の視点……ある1つの視点からすると、最初から最後まで全て繋がっていた。

 細かいあれこれはあるのかもしれないけれど、全体としては破綻なく一貫して物語を紡ぐことができていた。

 だから……文句がほぼないんだよね。

 一部で言われている、後半の陽太がウザイとかはわかるけれど、そこにもちゃんと理由がつくし、そのような構成にしたのもよくわかる。

 それだけの高評価に値する作品だよ」

 

カエル「ということは、麻枝准の過去作品と比べても……?」

 

主「う〜ん……ゲーム作品と比べるとね、やっぱり違うような気がする。

 だけれどアニメでは個人的にはベスト。とは言っても、『Angel Beats!』の方がキャッチーだし、音楽もわかりやすく良かったし、全体を見たらどちらが上というのは迷う。

 『Charlotte』はあんまり好きじゃないから、明確に上だと言える。

 やり方は受けないかもしれないけれど、物語そのものは麻枝准脚本のアニメ作品では過去最高だろう」

 

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  • アーティスト:ヴァリアス
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音楽面に関しては特に文句もないのではないでしょうか

 

アーティスト麻枝准を起用したい人なんて、いくらでもいる気がするよね

 

カエル「多分、これだけ賛否が別れようともほとんど批判が出ないポイントなのではないでしょうか」

 

主「どうだろう、自分が麻枝准の音楽を聞いてきたからかもしれないけれど、やっぱりどの楽曲を聞いても素晴らしいと思えるよ。

 その意味では……大変申し訳ないけれど、誰の作品かと言われると、監督の浅井義之などというよりも、やっぱり麻枝准なのだろう。

 それくらい、すごく濃い形で楽しむことができた」

 

 

 

 

作品考察

 

本作を楽しむ上での3つの観点

 

では、本作を楽しむ上で以下の3つの点について注目してほしいです!

 

  • 村上春樹

  • 私小説

  • 麻枝准

 

1と3は結構似ている要素になるかな

 

カエル「では、ここからはさらに1つずつ詳しく考えていくとしましょう!」

 

 

村上春樹

 

第一に村上春樹について考えるということだけれど……

 

言わずと知れた、大作家だよね

 

カエル「今の若いアニメファンでも知っているとは思うけれど……名前しか知らない方もいるでしょうし、一応解説しますと、日本を代表する小説家の1人です。

 毎年ノーベル文学賞の時期になると受賞が期待されていることでも有名ですね。

 麻枝准は村上春樹に影響を受けており、特に『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』がお気に入りと公言しています」

 

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

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  • 作者:村上 春樹
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村上春樹って、ある世代はとても強烈な影響を受けているし、実は小説よりもアニメ・ゲームなどのオタク的な表現の方が影響を受けているということもできるんだ

 

主「例えば新海誠が謙虚だけれど、多くの作品で詩的なモノローグを多用する村上春樹的な表現が見受けられたり、あるいは登場人物が読んでいるキャラクターが春樹の小説を読んでいることも多い。

 また新海監督は1973年生まれ、麻枝准は1975年生まれと世代も近い。

 この世代に春樹の影響を受けている人が多く、小説家では1971年生まれの本多孝好なんかも入ってくるわけだ

 

ふむふむ……でも、小説界の人だよね?

 

いや、アニメ・漫画文化の……特にセカイ系に対して、とても影響を与えている

 

主「自分なんかは村上春樹に影響を受けた人の作品を愛してきた世代で……つまり、春樹チルドレンの作品ばっかり見てきた。

 正直に言えば、春樹そのものは苦手な作家だよ。だけれど、春樹チルドレンは大体好き。変な話に聞こえるかもしれないけれど。

 ”君と僕の世界”あるいは”世界が崩壊するかもしれない”って世界とでも言おうか……あのなんとも言えない抒情的な世界に惹かれている人も多い」

 

カエル「それこそ『灰羽連盟』などは、よく名前が挙がる印象かなぁ」

 

 

で、『神様がいなくなった日』に話を移すと、そこかしこで影響が感じ取れる

 

主「一番大きいのは『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の構図だろう。

 この小説は2つの世界”世界の終わり””ハードボイルド・ワンダーランド”という2つの世界で巻き起こる。

 よく麻枝作品ではこの”現実世界と幻想世界”の対比が出てくるが、そう言ったところに村上春樹の影響があると考えられる。『CLANNAD』『AIR』とかもそうだし、死後の世界が舞台という意味では『Angel Beats!』もそうだろう。

 本作においては、この構図は陽太とひなに活用されているだろうし、あるいはもっと上位存在……つまり世界にアクションできる、という部分にも出てくるだろう

 

カエル「えっと……陽太とひなに活用っていうには、どのようなことなの?」

 

主「陽太とひなって同一の存在なんだよ。

 ある1人の人間を表している。

 つまり、この2人を分けて考えるのではなく、同一の存在として考えることで見えてくるものがある。

 というのも、『世界の終わりと〜』は解釈も豊富なんだけれど、村上春樹の作品として1つあるのが、暗喩が豊富ということなんだよね。そして”世界の終わり”パートと、”ハードボイルド〜”ワールドの主人公は、同一の存在だと言われている。つまり、脳内で1人の人間が会話をしているようなものだ。

 そう考えると、見えてくるものが多いのだよ」

 

 

 

 

私小説

 

えっと……その、1人の人間って誰のことなの?

 

それはもちろん、麻枝准だよ

 

カエル「……脚本家としての麻枝准?」

 

主「本作は麻枝准の私小説的な要素がかなり強い作品となっている。

 それはリアルサウンド映画部でも記事を書いたんだけれど……」

 

realsound.jp

 

 

カエル「簡単にまとめると

 

  • バスケ→大学時代にサークルを立ち上げるなど、麻枝が好きな球技
  • 麻雀→麻枝が好きなゲーム

 

 などがあると……」

 

主「これだけならば根拠が弱いと思うかもしれないけれど、例えば映画制作は”みんなで制作する”ということで、ゲーム制作に関わってくるだろう。

 そう考えると、このアニメの流れってよくわかるんだよ」

 

  • 1話〜2話 ひなとの出会い・陽太の日常の変化の始まり
  • 3〜7話 高校→大学→就職という流れを暗示?
  • 8~9話 世界の終わり(大病を患う)
  • 10〜12話 大病から戻ってくるまでの物語

 

カエル「ふむふむ……。

 麻枝准は『Charlotte』前後から大病を患ったり、あるいは心療内科に通うなど様々な心身の不調を抱えながら活動している作家でもあります」

 

主「だから、自分の考えでは

 

 陽太→普通の少年としての麻枝准

 ひな→神様(才能を与えられた存在)としての麻枝准

 

 だと思う。

 実際、一時期の麻枝准は、一種の神様のような……それは言い過ぎとしても、時代の寵児だったことは間違いない。Keyブランドの名物脚本家であり、重要人物であり、05年くらいの萌えブームの設立も、R18作品の泣きゲーブームがなければ、到底なし得なかっただろう。

 だけれど、その才能が去ってしまった……あるいは枯れた、とまでは自分は思わないけれど、ただ心身の不調で思うようにできなくなってしまった。

 そのことを描いているのではだろうか」

 

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麻枝准

 

その最後のパーツを埋めるのが、麻枝准という人だと

 

今作って、その意思がとても伝わってくる気がする

 

主「もちろん、妄想だと言われたらそれでおしまいなんだけれどさ……作者が描いたものを邪推するのが僕の仕事なので。

 後半パートの苦しみって、すごくわかるんだよね。

 

 陽太→社会性の自分・あるいは等身大の……現実の自分が鼓舞しようとする。

 ひな→才能の自分・あるいは理想の自分がそれに応えてくれない。

 

 これって、人間の精神ではよく行われていることだろう。それこそ鬱病の方であれば、自分の体を振り立たせてやりたいこと、仕事などのやらなければいけないことに向かっていきたいのに、それができない。

 前はできていた。

 だからこそもどかしい。

 だから自分を責める。

 陽太はひなを責めてしまう。でも、そうすればするほどに自分の体はより動かなくなる悪循環だ」

 

 

……………なんか、すんごく苦しい話だね

 

実際、苦しいだろうね

 

主「自分語りにはなるけれどさ、レベルは全然違うけれど、出版して、燃え尽きたようになって、ブログの更新も止まって、とにかくなんとかしなくちゃと焦る気持ちがあったから……それはよくわかるんだよ。

 わかるって言っちゃいけないのかもしれないけれど。

 自分が好きだったもの、想像心を掻き立てられるもの……本作の中ではゲームを見つけて、そこに向き合っていく。

 そしてようやく、過去の自分を少し取り戻すことができる

 

カエル「ほんとに、リハビリの話なんだ……

 確かに、自分の才能がなくなること、やりたいことができなくなることって、特にクリエイターには”世界の終わり”ってことかもしれないね。

 だからひなちゃんはいずれ訪れる"世界の終わり"を感じていたと」

 

主「世界が滅ぼうが、自分が滅ぼうが、その個人の中では終焉という意味では同じなんだよ。

 ひなが何度も言う『そんなことをしても無駄だ』の言葉は、そう考えると全く違う意味に聞こえてくる。

 

  • 『世界が滅ぶんだから楽しいことをやろう』
  • 『どうせ才能が枯渇するから意味がないことはやるな』

 

 そのどちらとも解釈ができる。

 麻枝准って人は、多分、本気で、今の自分は過去のもののようなものを作れないって思っているんじゃないかなぁ。

 この作品ってそういう人のものだと感じる」

 

 

 

 

神様に”なった”日」の意味とは?

 

そうなると、神様になった日のタイトルの意味は

 

ここも自分は2通りの解釈ができる

 

主「1つは『自分がかつて神様(クリエイター)だった』と言う回想録。つまり、私小説としての意味だ。

 だけれど、それはあまりにも悲しすぎるだろう。だから、もう1つの意味を提示したい。

 それは『自分が改めて神様になった日』と言う説だ」

 

カエル「改めて……神様に、なる」

 

主「陽太とひなは同一の存在だと考察してけれど、例えダメになったとしても、改めてひなと巡り会うことができた。

 かつて自分たちが撮影し、やり残した映画を完成させたけれど、過去の自分の作品や文章がその作者を救うことも、同時に刺すこともあるんだよ。

 だから表現は楽しく、恐ろしい。

『わしの宝物じゃ』と言える……CLANNADとか、Angel Beats!とか、まあそれこそ名前の上がらないかもしれない、世間から駄作と言われるかもしれない物語でも、作り上げてきたことは、絶対に消えない。

 それは否定できない。

 自分みたいなのが愚痴愚痴と呪いのような言葉を発して、作品を非難したところで、その作品を制作したこと、その価値そのものは変わらないんだよ」

 

この作品の最後の言葉が、やはり最大のメッセージなのではないだろうか

 

 

『これから待つ未来は想像もつかない。

 どんな救いもない、奇跡も起こらない、残酷な世界かもしれない。

 それでも、僕は。

 精一杯、ひなと、生きていく』

 

 

主「もう、これだけで十分。

 本作って言うのは、かつて天才クリエイターであった男が、様々な苦難がありながらも、それでも”これからも生きていく”と言う生涯作家宣言でもあり、壮大な讃歌である。

 そして、そのような痛みを伴いながらも描き切った作品を、自分は高く評価したい」

 

 

 

 

最後に

 

色々な解釈が成り立つ作品だとおもいます

 

こんな見方をすると、すんごく楽しくて感動することができる作品だよ、と伝わったらそれだけで嬉しいかなぁ

 

 

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