今回は原作もスピンオフが作られrほど大人気な作品『カイジ3 ファイナルゲーム』の感想記事になります!
8年ぶりくらいになる作品じゃな
カエルくん(以下カエル)
「むしろ実写映画が公開された2010年頃から考えると、カイジ人気は高まる一方でギャンブル漫画の代表格みたいになったけれど、実写映画は久々なんだね」
亀爺(以下亀)
「豪華役者陣の事情もあるのかもしれんの。みんな売れっ子なのに加えて、一部キャストは当時と立場が大きく異なるから、作品作りができんかった事情もあったりなかったりするのかもしれんな」
カエル「ちなみに、今回は原作未読、映画は1、2を観た上での感想になります!
予めご了承ください」
亀「ということで、記事を始めさせてもらおうかの」
作品紹介・あらすじ
福本伸行が原作を務め、ギャンブル漫画の代表的存在となった『カイジ』シリーズの3作目にして最終作となる実写邦画作品。福本は今作で脚本にクレジットされているほか、演技も披露する。監督は過去2作と同じく佐藤東弥が務める。
キャストでは主人公カイジを熱演したきた藤原竜也が再び熱演を披露するほか、福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎が脇を固める。そのほか、過去作からも天海祐希、松尾スズキ、生瀬勝久らが再登場する。
2020年、東京オリンピック後に急激に景気を悪化させた日本では経済格差が進行していた。カイジは派遣業者の元で働いていたが、あまりにも少ない給料に憤慨する日々を送っていた。そこに現れたのはかつて地下で共に働いていた大槻と再会し、大金が動くイベント『バベルの塔』の存在を知る。有利となる情報を得たカイジはゲームに参加するのだが、その裏では国家を巻き込んだ大きな野望が渦巻いていた……
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです……
#カイジファイナルゲーム
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年1月10日
ふむふむ…これだけ魅力ある設定とキャラクターを用意しながら出来たのがこれですか…と絶望感を覚える作品
予定調和で賭けにでない物語、徹頭徹尾説明する台詞などが残念な点が多数
褒めるポイントは…藤原竜也の熱さくらいかなぁ
最後だからこそ賭けて欲しかった pic.twitter.com/LI105MM2BK
残念、と言わざるを得ない作品じゃな
カエル「う〜ん……ちょっと悪い評価にならざるを得ないとうか……藤原竜也などのファンが観るにはいいと思うけれど……元々映画好きのための作品ではないとはいえ、ちょっと辛い評価にならざるを得ないよなぁ」
亀「ワシはカイジという作品に大きな期待をしておった。
というのは……
- 金が目的という万人にわかりやすい目的
- ギャンブルという手に汗を握る物語
- 貧民と富豪という経済格差をテーマとして扱える社会性
の3点だけで考えても、語りようは大いにありうる。
そこに藤原竜也をはじめとした魅力的な役者たちの熱演もあり、娯楽作でありながらもいい作品ができるポテンシャルができたかもしれん、
しかし……それが全てダメな方向に出てしまった印象かの」
う〜ん……ギャンブルがテーマなのに、作品自体が”安定の置き”を目指している感が残念だったかなぁ
もっと色々とせめて新しい物語を作って欲しかったの
亀「ワシは『物語の嘘は現実を変える』と信じておる。しかし、この作品は下手に現実を描こうとしてしまったことにより、全てが嘘になってしまった。
本来は”嘘の中に真実を宿す”べきじゃと思うのじゃがな……どうにもワシには逆のようにも見えてしまったの」
カエル「あとは……映像もセットとかがちゃちく見えて『あぁ、邦画業界ってお金がないんだなぁ』と感じさせられてしまったね……」
カイジ 1、2の評価について
じゃあさ、カイジの劇場版1、2の評価はどんなものなの?
1は特に面白い作品じゃな
亀「もちろん”映画史に残る大傑作”だとか”斬新な挑戦をしている”映画ではないかもしれん。しかし、映画というのはどれもこれもが斬新である必要はない。
中にはなんの知識もなく、フラッと入って楽しんでおしまい、という娯楽映画だって必要じゃろう」
カエル「全部が重い社会映画だったりしたら、ちょっと肩肘凝っちゃうところはあるよね……」
亀「好きなあの子とデートだったり、ある程度は成長した子供とファミリーで鑑賞したり、友人たちと楽しんだり、時間潰しであったり……そんな映画も必要じゃ。
その中ではカイジ1というのは、まさしくその手のエンタメ映画としてよく出来ておると評価する。
テレビで放送していたら適当に楽しめるような、そんな映画じゃな」
カエル「すごく適当なようですが、これって本当に褒めてますよ。
その中でも以下のような工夫もあったよね」
- 強烈なキャラクター演技によるコメディのようなエンタメ性
- 地下=貧民、上層階=富豪という高さを用いた演出
- 騙し合いの中で”他者を信じる”ことが勝利に繋がるテーマ性
これらの要素をうまく織り交ぜた娯楽作じゃった
カエル「一方で、2に対しては?」
亀「残念ながら、正直ボロボロなところもある。
心理の読み合いというギャンブル性がパチンコの導入によって薄れてしまったことも問題じゃし、大きな物語にしようとして大雑把になってしまった印象もある。
しかし、パチンコの玉を用いた1メッセージで突き抜けた娯楽作品としては、決して貶すようなものではなかったと思う。
これも映画館でなくテレビで観たからかもしれんが……いい作品と褒め称えることはしないが、そこまで悪い作品とは思わなかったの」
役者について
今作の役者についてはどうだった?
……残念ながら、藤原竜也以外はそこまで褒められん
カエル「ハイテンション演技故に毀誉褒貶の激しい演者という印象もある藤原竜也だけれど、あの手の演技をさせるとさすがだよねぇ。
もう実年齢も30代後半だというのに、アラサーくらいだったら違和感なく演じられる若々しさと力強さは健在!」
亀「近年は”漫画原作実写映画を、アニメのようにハイテンションで演じる”という作品が増えておる。この手のギャンブル映画では『賭ケグルイ』が顕著じゃな。
しかし、藤原竜也は格が違うと言えるじゃろう。
彼と対面し、その手の演技で対抗できる役者は……残念ながらこの映画では吉田鋼太郎だけじゃった」
多くの若手俳優が出てきたけれど……いい味は出しても、藤原竜也の前に破れていったという印象かなぁ
亀「残念だったのが、ワシは今作が初めましてなのじゃが関水渚じゃな。まあ、これは役が悪いこともあるのじゃが……魅力を発揮することができず、単なる”可愛い要員”で終わってしまった印象じゃ。
また、新田真剣佑も上手い役者じゃとは思うが、キャラクター演技としてはいまいち印象に残らず……」
カエル「それでも、福士蒼汰はさすがだったと言えるんじゃないかな?」
亀「藤原竜也と対峙することができているのじゃが……ここも役と演出の問題もあるかの。
また、ベテラン陣は自分の持ち味を発揮することに成功しているのじゃが……いってしまえば”いつもの演技”じゃな。それを発揮できるのもすごいんじゃが。
金田明夫などは、もう何回も観たような役柄じゃし、伊武雅刀も存在感はあったものの……物語の根本がおかしいように感じてしまい、彼の立ち位置がフワフワしてしまった。
この辺りは後述かの……」
以下ネタバレあり
カイジ3の欠点
では、ちょっとだけ作中に言及しながらカイジ3がダメだったポイントについて語っていきましょう
主に以下のようになるじゃろうな
① 注目キャラクターの不在〜誰が主役なのか?〜
まずは何と言っても、利根川などの名敵役が出てこないのは致命的だよねぇ
カイジと並ぶ、この作品を支え続けた役者じゃからの
カエル「香川照之、山本太郎、生瀬勝久クラスがメインで欲しいなぁ、と思っちゃったかなぁ。前者の2人はカイジシリーズに欠かせない人物だと思うけれど、やっぱり無理だったのかなぁ」
亀「今作では魅力的な敵に当たるのが吉田鋼太郎であり、彼の存在感は見事じゃったが……
残念ながら、彼は VSカイジのキャラクターではない。
この映画の根本からのミスじゃと思うのが、東郷VS黒崎となってしまっており、カイジは若干、勝負の外側におる。メインとなるのがカイジでなければならないのに、そんなことになっていないのが尺の大半を使っておる」
カエル「……カイジを主人公にして、大いなる敵と戦わなければいけないんだけれどね。急に出てきたキャラクターの過去がどうのとか言われても、そんなに興味がないというか……」
亀「それでいうとVSカイジは福士蒼汰演じる高倉ということになるんじゃろうが、そこもカイジと対立するには理由がないようにも感じたからの。元々カイジも社会正義に篤いタイプではないじゃろう。
また、ギャンブルも天秤ゲームなどはギャンブルという運を争うものとは思えなかったのも問題かの」
あとは……カイジの味方の存在感がなぁ
結局、藤原竜也と共闘できる役者は限られるんじゃよ
カエル「彼女が悪いというよりは、物語の問題なんだけれど関水渚なんて絶対にいてもいなくても変わらない存在だったよね……」
亀「カイジ1ではカイジの隣に立つのは情けないが善人を光石研が流石の演技を披露しておったし、カイジ2では生瀬勝久が同じようなコメディ役……ある種のワトソン役と言えるのかの? それを演じておった。
しかし、その藤原竜也の隣に立つには……新田真剣佑も関水渚も、キャラクター演技が確立できてなかったのかもしれんの」
② 説明しすぎな物語
これはもう、邦画の悪癖みたいなところがあるよね……
そこまで言わんと理解できんのか……できんのかもしれんの
カエル「例えば冒頭の後継についてカイジが『これじゃ地下と同じじゃねぇか!』と憤るけれど、それは見ればわかるんだよね……じゃあ、ここから見始めた一元さんのための説明かと思えば、そもそも地下の説明をしていないから余計に意味がわからないという……」
亀「ここまで説明しなければわからないのかの……
いや、わからないのかもしれん。しかし、わからないならばわからないなりの見せ方をしたり、それなりの物語を作るのが仕事じゃとワシは思うがの」
カエル「全部説明するわりには、ゲームも色々とゴチャゴチャというたびに、余計にこんがらがる気がするんだけれど……『このゲームのルールはこうです。でも裏はこうです、これも裏です。その対策がこれです』って、もっとシンプルにできないのかなぁと」
亀「そのルールの裏をつくのがカイジの魅力とはいえ、の」
③ 壮大すぎる設定
そして、今作が残念に思ったのは壮大すぎる現代を風刺? する設定かなぁ
あれは完全に風呂敷を広げすぎたの
カエル「もちろん、カイジのテーマに経済格差というものはあったし、それを期待して観に行ったけれど……いきなり日本経済がどうとか、そういうことはいらないかなぁ。
それがあったことで、却ってこの映画が語ることが嘘っぽくなったよ……」
亀「確かにカイジ1が流行した背景には『勝ち組、負け組』という経済などの格差がより話題を集めた背景がある。また、カイジ1の頃にアラサーということは、今は40代前後であり……就職が大変だった時代じゃな。
ちょうど10年前はリーマンショック以後でもあり、日本のみならず世界の社会情勢は今よりも悪かった。その不安にギャンブルとキャラクター性などが合致して人気を博したのが今作じゃな」
カエル「だからこの映画がオリンピック後の起こるかもしれない経済低迷だとか、あるいは加速したと言われる貧富の格差、派遣業の闇などをテーマにするのは当然だとも思ったけれど……
国の不正をカイジが防ぐ、とかまでは求めてないかな……
単純にクズがギャンブルをして一発逆転! ってだけで良かったけれど……なんか劇場版だし最後だから、精一杯大きな物語にして失敗している感があるね」
亀「その辺りも邦画の特徴かもしれんの。
あのラストの問答も描き方を工夫すればもっともっと面白くなったのじゃが、あらかじめわかりきっている無難な一般論をカイジが言うことにより、何も物語としての面白さを発揮することができなくなってしまっておる。
そこはギャンブルで主張が偏っても納得できるようなものにしなければ……賭けなければ面白くないと思うんじゃがなぁ……」