亀爺(以下亀)
「いやぁ、また荒れておるのぉ」
ブログ主(以下主)
「まさか、あのキャッチコピー1つで炎上するなんて夢にも思わないだろうな」
亀「まずはそのキャッチコピーを確認して欲しいから、URLを貼っておこうかの」
主「……まあ、しかしこうして見ると中々長い文章だな。新聞広告一面を使ったキャッチコピーとはいえ、これだけ長いと読むのも疲れちまう。あと、芥川賞と直木賞を推すのもいいが、菊池寛賞とか松本清張賞も推してやればいいのに」
亀「今回はこの話題で記事を書いていこうかの。中々面白い『文学的』な炎上をしてくれたものじゃ。こんな機会、そうそうないぞ」
主「本来なら昨日のうちに書いておきたかったな……」
亀「己の怠惰を恨むが良い!! フハハ!!」
主「……小物感ある笑い方だな」
1 キャッチコピーとしての個人的評価
亀「そもそもキャッチコピーとしてあの言葉はどう思うかの?」
主「……個人的にはそんな好きじゃない。専門的なことはわからんが、キャッチコピーとして優れているとも思わなかったな」
亀「……まあ、そうじゃな。『人生に、文学を』というキャッチコピーは『NO MUSIC,NO LIFE』などが流行ってしまうと、目新しさはないかもしれんの」
主「あとはさ、何というか、宣伝広告だから当たり前かもしれないけれど、『文学』というものに対するヨイショが強すぎた気がするな」
亀「ほう、というと?」
主「例えばさ、コピーライターとして有名な一倉宏(代表作に『うまいんだな、これがっ!』とかさ『きれいなおねえさんは、好きですか?』など)だったら、短文でこちらに訴えかける力があるじゃん。
ぶっちゃけて言えば他の商品でも使えるけれど、なんとなく足を止めたり、見入っちゃうものがある。糸井重里の読書関連コピーで言ったら、『本読む馬鹿が、私は好きよ』なんてたった一文でドラマと広がりを感じさせてくれる。こういった魅力はないのかなって思う。
あとは単純に長いよね」
亀「まあ、元々は新聞広告だからではないかの?」
主「だとしてもごちゃごちゃ言いすぎじゃない? 結局は読書啓蒙の宣伝なのはわかっているけれどさ、その宣伝として主張が全体的に強すぎるような気がするのね。だからあの(アニメか?)の部分でワンポイント入れようとするのはわかるけれども、そりゃ炎上するわな。
全体的に大上段で構えて、偉そうに論調を振りかざしているように見える。もっとコメディー調だったり、オブラートに包んだら炎上しなかったんじゃない?」
2 アニメや漫画に『文学』は宿るのか?
亀「ではここで本題に入っていくがの。主はアニメ、漫画も好きな人間で、本も好きじゃが、アニメや漫画に『文学』は宿ると思うかの?」
主「……まず、亀爺はどうなのよ?」
亀「わしか? ……まあ、文学の定義にもよるかもしれんが、宿るじゃろうな。人間の本質を表現することに、表現形式は関係あるまい。そもそも、そういった表現からも人間の本質を拾い上げるのが『文学的な態度』というものではないかの?」
主「じゃあ、俺は文学性なんか宿らないって回答にしようかな」
亀「……天邪鬼じゃな。そのこころは?」
主「結局は『文学ってなんだ?』 って話になるんだけど、考え方によっては『文学的な小説』ってのは『小説でしか表現できないことを汲み取った小説』ということもできるわけよ。純文学なんてまさにそうで、小説だからできる表現に特化した小説群ということもできるわけじゃない」
亀「まあ、そうじゃの。小説の可能性を探る文章表現形式とも言えるからの」
主「だからさ、小説でしかできないことが、漫画やアニメで表現できてしまった瞬間に『文学的な表現』ではなくなってしまうんだよね、その意味だと。
もちろん、これは今回の騒動とは少し離れた言説だということは重々承知だよ。でもさ、この件が示した最大の問題は何かと問われると、それは『文学』という定義付けも不可能なものに対して曖昧に言及した上に、アニメにその話を広げてしまったことだよね」
亀「……そもそも『文学』という言い方が、さっきの言い分ではないが大上段に構えた偉そうな言い方じゃからな」
古典的名作も娯楽文化
主「今は古典的名作とされている夏目漱石とか、芥川龍之介とかさ、そう言った作家だって当時は娯楽の一環だったわけだ。それが時代を経ていつの間にか『文学』なんて大上段にされてしまった。
前に読書感想文の記事でも書いたけれど、枕草子なんてのは現代で言えばOLの愚痴ブログというべきものでさ、本来は公開する気すらなかったのに、勝手に持ち出されて公開されてさらに千年以上残った。それはさ、確かに芸術的価値があったからだけど、元々は娯楽として面白かったからなんだよね」
亀「そうじゃな。日本の文化というのは基本的には娯楽文化じゃからの。今じゃ国が守る伝統文化の歌舞伎だって、傾奇者たちの中に出雲阿国がおって、女が踊りをする艶めかしさもあって話題になり、それが芸として昇華されていったものじゃ。スタートはそんな大層な文化ではないの」
主「だから、このままだとそう遠くない未来に教養として手塚治虫や藤子不二雄を読む時代が来ると思うね。もう半分そうなっているのかね?」
3 アニメや漫画は『文学』になりうるのか?
亀「それで結局、アニメや漫画は『文学』になりるのか、の答えはどうなんじゃ?」
主「まあ、ぶっちゃけて言えば文学になりえないし、なってほしくないね」
亀「ほお! そんなに小説の権威が大切かの? 差別主義か?」
主「そうじゃなくてさ、そもそも何で漫画やアニメに『文学性』なんてものが必要なのさ? 小説における文学性ってものは、近代小説でも百年以上かけて編み出してきた概念なわけだよ。
それを本格的に誕生して百年に届かない表現が簡単に辿り着けないよ。それは当たり前の話でさ」
亀「それだけ長きにわたる歴史があるということじゃな」
主「この件に関して怒っているのは一般の漫画ファン、アニメファンだと思うけれど、どうせなら漫画家やアニメ関係者には『文学性? そんなもの、はなから目指してないよ』って言ってほしいね。
『これからは純漫画、純アニメってものが生まれてくる。文学なんて目じゃねぇよ』って言ってほしいね」
亀「正直、小説の表現自体も全く新しいものが生まれてこない以上、かなりのジリ貧のような気もするからの。フォーマットを少し変更するしかない気がするしの」
主「完成度が高くなりすぎていじる余地が今は中々ない。新しい流れがこないと難しいかもな。
でもさ、この件で未だに『文学』というものが大上段に構えることで差別的ニュアンスに受け取られるということがわかっただけでも収穫じゃない?」
『文学』と漫画とアニメ
亀「そうじゃのう。逆に『人生に、アニメを。 アニメを知らなければ、どうやって人生を想像するのか?(文学か?)』 だったらここまで炎上はしなかったであろうし、逆に褒められてかもしれんの。アニメの地位を押し上げる、とか言って」
主「結局、この発言を差別的だって言って炎上したってことは、文学の方がアニメより偉いという思いがあるんだよ。今だに。これはやっぱり発見として大きいね。今ではアニメ、漫画に勝っている部分は、文学界に一つもないと思うから」
亀「これはこれで炎上しそうな発言じゃの」
主「でも本当だよ。実際は小説も売っているけれどさ、漫画やアニメがメインの同人誌即売会で六十万人集まるけれど、これが文学だけでできると思う? 漫画だからシリーズものというアドバンテージはあるものの、累計一億部を超えるシリーズが日本の小説である? 」
亀「吉川英次の宮本武蔵があるらしいの」
主「それも何年前の作品って話よ。漫画なら近年だけで十作品ぐらいあるし、ジャンプがすごいって話かもしれないけれどさ。
文芸で百万部売れたら相当凄いけれど、昨年では芸能人の又吉直樹だけじゃなかった? 文芸で百万部突破したの。
街中や喫茶店で漫画やアニメの話はよく聞くよ、じゃあ小説の話って聞く? はてなブログで人気のネット漫画家はいるけれど、じゃあ人気のネット小説家はどれだけいるの? 結局なろう系ばっかりじゃない?
そういうことがたくさんあると、個人的には小説や文学なんて世界はニッチな世界になっているように思うわけよ」
亀「漫画の勢いは世界規模であるからの」
主「だからさ、結局今となっては小説は『文学性』という定義もなければ、評価基準もないものに縋るしかなくなってきている。
今回の騒動で見直さなけれいけないのは、文学のお高い差別意識なんてものじゃない。むしろ、ニッチなのは文学の方だってことだよ」
最後に
亀「では、ここで最後にするが、主から言いたいことはあるか?」
主「……結局、漫画もアニメも小説も、さらに言えば映画も落語も好きな人間からすればさ、どれが一番優れているかってことは不毛な議論だよ。優れた作品もあれば、ひどい作品もあるし。
でも、一つだけ確かに言えることは、どの媒体も面白いんだよ。
文学もアニメも漫画も等しく面白い。
だから文学云々関係なく、本を読んでほしいという気持ちは日本文学振興会と同じ。そして、本を読んでほしいという気持ちと同じくらい、日本文学振興会の人にも漫画やアニメも見てほしいもんだね」
亀「なるほど、じゃあ主はあれだけ毛嫌いしておるドラマもみるんじゃな?」
主「……テレビドラマだって面白いさ! ほら、『孤独のグルメ』とかさ!!」
亀「ドラマカテゴリーが死んでおるぞ! さあさあ、PVアップのために書き捲るのじゃ!! そしてわしをアニメ化するまで頑張るんじゃ!!」
主「どんなに頑張ってもそれは絶対不可能だ!!」
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