今期一番楽しみにしているのが実は銀魂だったりするのだが、ようやくこの回に来てくれたか、と感慨深い。
私はにわかも良いところで、実はジャンプにて銀魂を読み始めたのがこの『さらば真選組編』からだった。さすがに銀時や神楽、近藤などの主要登場人物は知ってはいたが、そんなにわかでもこのさらば真選組編は感動してしまったのだ。それほどまでに面白い話がようやくアニメで見ることができて、非常に感激している。
前回の将軍暗殺編の記事はこちら
1 長期連載とは思えないほどの設定の回収のうまさ
本作は当然のように何年にも渡って週刊誌で連載されてきた大人気作だ。これが小説や映画ならば1作で大体1つの作品として完結するし、ある程度の目処をつけて物語を書くことができる。
だが連作漫画はその終わりもいつになるかわからず、またジャンプは賛否が吹き荒れる『人気作は終了させない文化』がある。これはバクマンでも批判されていたし、デスノートも本来終えたかったところで終わらせられなかったという話を聞いたこともある。
そうでなくとも、始めた時はある程度の設定というものはできていると思うが、それは精々10巻くらいのものであると思う。1話を始める前に何百話という物語の詳細を考えているとは思えない。
特に銀魂の場合はそれが何でもないギャグだったり、バカみたいなことを繰り返している回が伏線になっていることが多いから本当にバカにできない。将軍と桂のギャグ回など、それが後々活きてくると思った人が果たしてどれほどいるのだろうか。
この辺りは伏線の張り方と、作品中の描いた部分をどのように回収し絡ませあうかということだが、この部分が抜群に上手いのが作者の空知英秋だろう。
2アニメスタッフの『恐れない意識』
銀魂アニメというとその強烈なギャグや風刺が話題となり、時にはシャレにならないであろう自体が、裏で(スタッフによる謝罪行脚など)あったと言う話が聞こえてくるほど、今時珍しい『攻め』の姿勢で描かれているアニメだ。
それはシリアスでも変わらなく、その戦闘描写において流血は当たり前、切った箇所からはまるで黒澤明の椿三十郎のように血が噴き出す表現を、堂々と繰り返している。
近年、アニメ表現に対する風当たりも強くなっており、特にエログロ描写に関しては一部の行き過ぎとも思える表現や、反対運動によって描き出すことが難しくなっている。明らかに死人が出ているような状況の描写ですら、無理矢理生きていたということにして、誰も死んでいないことを強調する作品も1つや2つではない。
しかも、夕方のアニメ枠でこれほどの流血沙汰というのも近年では珍しい話だろう。ここまで批判や、お叱りの声というものを恐れないスタッフの揺るぎない意志というものが、シリアスが続く銀魂の骨太なストーリーを支えているのだろう。
3OP、EDの演出
このさらば新撰組編の主人公は銀さんではなく、近藤であり佐々木である。基本のストーリーはこの2人を中心にピックアップして、さらに桂の救出劇も加味して展開されていくが、桂は主役級の活躍はするものの、やはり中心にはいない。
この近藤と佐々木の表裏一体の関係性というのが、またドラマを盛り上げている。
それがわかるのがOPでの演出だろう。
今期1かっこいいOPだと私は思っている銀魂だが、DOESのイントロと共にキャラクター達が交錯していき、その最後を飾るのが近藤であり、佐々木であった。この際に画面左側(下手)にいるのが近藤であり、そのあとに登場する佐々木は画面右側(上手)に登場する。
一般的に画面構成や舞台演出では、下手にいるのは挑戦者や子分であり、上手にいるのは支配者、親分とされている。なのでこの場合、近藤は挑戦者ということになり、佐々木は迎え撃つ支配者側だということになる。
しかし、その佐々木は右側に移動していく。これは下手から上手への移動であり、挑戦者が支配者への挑むという構図でもある。だから佐々木は画面中央よりも右側に登場し、さらに右側へと歩いてくのだろう。ちなみにその後の信女も左から右へと歩いていくため、実は挑戦者として支配者へ動くことを表している。今回のOPは踊るような戦闘描写はさておき、登場人物の誰もが左側へと歩いていかないというのも注目ポイントだ。
(右に向かうというのは自然の流れに逆らう、強い意志を持って行動するという意味もある)
絵としての格好良さなども絡んでくるし、OP、EDまでここまで計算されているかはわかりかねるが、私でも知っている舞台演出であるから、きっと意識してのことだろう。
ちなみにEDも工夫を凝らしていて
「きっと僕らはわかっていた 今変わる時だと」の場面に将軍を含めた親友トリオ
「時代を叫べ」の場面に信女と佐々木
「この場所を守れ」で新撰組トリオ
とそのキャラクターにあった場面を用意している。おそらく銀魂のEDは基本タイアップであり、銀魂用に作ってもらったものではないだろうから、ここは曲調と歌詞を考えた上での演出であろう。
私はOP、EDも作品を彩る重要な演出要素だと思うので、こういった工夫は素直に感心してしまう。
4 佐々木と近藤
今回の話の語るポイントは、功名以外は持たない佐々木と、功名以外を持つ近藤の対比であろう。
今までギャグのように携帯電話を覗いていたシーンや、飄々としたモノの奥にある静かに燃える想い。それらのシーンが繰り返し出てくるたびに、私の涙腺を刺激されてしまう。
特に近藤を助けた佐々木を助けた人間は誰もいなかった、というシーンなどは、その絶望感、挫折が伝わってきて、非常に心打たれた。
この辺りは先を知ってしまっているため、あまり語りすぎるとネタバレしてしまいそうになるために、ここまでにしておく。
さて、いよいよ大ボスと思われる黒幕? でてきた。その正体はなんとなく予見はできていたが、やはり実際にそうなると衝撃と共に、熱さが湧いてくるものだ。
ここから先の展開に、私は非常に期待している。