物語る亀

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物語愛好者の雑文

『フリクリ』『フリクリ・オルタナ』ネタバレ感想&評価 あのムチャクチャな傑作を現代によみがえらせるのは無理がある!?

 

 

だいぶ過ぎましたが『フリクリ オルタナ』の感想です

 

前作のフリクリを見直すのに時間がかかった……

 

カエルくん(以下カエル)

「なかなかTSUTAYAに置いてないorあっても借りられていたからなぁ」

 

「そして借りた次の日にアマプラで配信開始ですよ。

 あ〜あ、バカしたわぁ!」

 

カエル「まあ、そういうこともあるでしょう。

 今回は前作『フリクリ』の感想も交えながら、新作『フリクリ オルタナ』について語っていきます。

 では記事のスタート!」

 

 

 


劇場版「フリクリ オルタナ」& 劇場版「フリクリ プログレ」本PV

 

 

 

感想

 

『フリクリ オルタナ』のTwitterでの短評からスタートです!

 

 

前作未見だと、まあまあかなぁ……

 

カエル「決して酷評するまでもなく、かといって絶賛するまでもなく、というレベルの作品ということ?」

主「まずさ、この形式ってどうなのよ?

 自分は劇場版アニメだと思って映画館に向かったら、実際はOVAの総集編ですらない、6話を繋げたお話でしょ? 最近はOVA作品の上映も多いけれど、こんなやり方はあまりしている印象はない。

 その時点で肩透かしを食らったというのが正直なところ

 

カエル「フリクリの前編、後編という風に捉えちゃった観客側というか、個人的な問題かもしれないけれど……」

主「第1弾、第2弾という括り方も正直よくわからなかったというのが、正直なところ。この作品の続編を9月の後半に上映するのかな? と思ったら、全く違うわけでしょ?

 その興行形式は新たな挑戦ではあるものの、一観客として納得できるものではない。テレビアニメのシリーズモノの面白さと、劇場版の面白さって全然違うわけで、テレビアニメやOVAの形式を劇場版とうたってそのまま上映することは、果たして正しいのかね?

 せめて総集編らしくして、作中のアイキャッチなども無くすなどして、総集編やep1などでもいいから、1作の物語として、もっと違和感がないようにして欲しかった

 

カエル「ちょっと映画としても長めだしね」

主「いちいち1つの話が終わるたびにこちらも集中力などが切れるのよ。

 そりゃ自分の集中力のなさかもしれないけれど……まあ、文句はいくらでもある上映形態ですよ」

 

 


『フリクリ』の感想

 

では、次に前作フリクリを見終えたので、その感想を

 

90年代後半〜00年代前半の波を感じる作品だよね

 

主「自分が影響を受けたアニメ作品は、その多くが2000年前後に制作されていてさ、この時代への思い入れは結構強い。

 例えば夕方のアニメでも『無限のリヴァイアス』『スクライド』『スパイラル』『DNエンジェル』『幻想魔伝最遊記』などの、今では深夜にやりそうなアニメがたくさん放送されていた。

 深夜も『ラストエグザイル』『ガングレイヴ』『ガドガード』『バトルプログラマーシラセ』とか……アニメ映画やOVAでは『人狼』とか『MEZZO FORTE』とかさ、とにかく今とは全く違う、尖った魅力に溢れた作品が多かった」

 

カエル「上記の作品の話を広げると、ただ単に懐かしいアニメを紹介しているだけになるのでここまでにしましょう。

 フリクリもその時代の流れを感じるのは、当然だよね。

『あ、この演出ってフリクリから始まったんだ!』という発見もあったし……」

 

主「ガイナックス制作だし、監督やスタッフを考えたら当然かもしれないけれど、やっぱりEVAっぽさはある。

 ただ、EVAっぽい作品はたくさんあるけれど、その多くが劣化コピーになり下がったり、あれだけのパワーを獲得することができないのに対して、フリクリは全く劣化していないどころか、また別の魅力を獲得している。

 だからこそ、今でも熱烈な信者を多く生み出しているし、自分だってそうなっていた可能性は十分あったね

 

 

 

作品を観る時代の重要性

 

観る時代や年代によって受ける印象って全然違うからねぇ

 

この作品を00年代で、しかも10代で観れたファンは幸せだよ

 

カエル「EVAだって紛れもない名作だけれど、あれを現代で60代以上のおじさんが観ても面白いと思えるかというと、それは難しいだろうし……」

主「EVAを最大限楽しむには90年代に見るか、10代……できればリアル14歳の時に鑑賞することだな。

 もちろん、その条件に合致しなくても楽しめる人はいるだろうけれど、熱量が変わってくるだろうし。だからこそ、10代の頃は何でもいいからたくさん観て、たくさん学ぶんで、とにかく勉強でも娯楽でも詰め込むだけ詰め込んだ方がいいんじゃないかな」

 

カエル「そんな話は置いといて、フリクリに戻ります」

主「自分は2018年にいい歳して鑑賞したけれど、その破壊力は大いに感じた。あの当時では異例なくらい動き回り、尖った作劇をしている。確かに抜群に面白い。

 だけれど、この作品をリメイクするのは相当難しい。

 フリクリは……まあ、いっちゃなんだけれど滅茶苦茶の上に成り立つ奇跡の作品であり、真似しちゃいけないタイプの作品だと思う

カエル「……真似しちゃいけない?」

 

主「EVAなんてまさしくそうじゃない。あの作品は庵野秀明以外に作れないし、作品としては未完成な部分も多い、実験作だ。だけれど、だからこそ多くの人の心をつかんだ。

 そういう、ある種の実験精神の上に成り立つ、奇跡的なバランスの作品ってこの時代の作品に多いし、それを再現しようとしてもかなり難しい。

 榎戸洋司の脚本1つとってもそうでさ、恣意的なように見えても実は暗喩だったり、物語としてバラバラのようで、それでも繋げてみると何かわかるような……解釈がいくらでもできる作品でもある。

 だからこそ面白いけれど、でも真似はできない作品でしょう」

 

 

 

 

フリクリ オルタナについて 

 

オルタナにしかない魅力は?

 

では、『フリクリ オルタナ』へと話を戻します

 

今作にしかない魅力を出せたかというと……まあ、新谷真弓の演技くらいかなぁ

 

カエル「それは個人的に新谷真弓の……というか、あんなケロケロした特徴的な声のファンというだけでは?」

主「それもあるけれど、ハルコの、あれだけの勢いと魅力を持ったキャラクターってそうそういないと思うんだよ

 

カエル「だけれど、旧作のファンからは批判されているよね?」

主「その気持ちもわかるけれどね。

 自分は旧作にもちょっと思うところがあって……ハルコの目的が惚れた男(海賊王)を追いかけるというものだった」

カエル「その力を欲しただけとか、色々と解釈の幅はあるので、いわゆる恋愛関係かはわからないけれど……」

 

主「な〜んかさ、その瞬間にハルコが一気につまらない女に見えてしまったんだよね。

 力を欲していたならばまだわかるけれど、あそこまで破天荒な女性の目的が結局色恋ってどうなのよ? ってさ。

 まあ18年前の作品だしさ、分かりやすい着地点だろうけれど……案外普通の女だな、って印象になってしまって、そこが残念だった。

 その意味ではオルタナのワケワカンナイお姉さんの方が、個人的には好み。

 気まぐれで女子高生にちょっかい出して、気まぐれで世界を救い、気まぐれで世界を壊しかけるっていう方が、個人的には好きだね」

カエル「18年の思いがある人と、現代の環境で初めて鑑賞する人に意識の違いかもね」

 

 

”うまく”やろうとしすぎている気も

 

オルタナの脚本について語ろうか

 

構成からし構成からしてあんまりうまくないのかなぁ

 

主「 全体の構成がうまくいっているとは思えない。

 その原因はこの作品で最も重要になる、核のキャラクターであるハル子がめちゃくちゃなこと、そして本作が独特な2幕構成で作られていることにある」 

カエル「とりあえず1〜3話までで日常を描き、4〜6話で日常の先を描くという構成だったね」

 

主「じゃあ、それが成功したのか? というと、まあ失敗したのかなぁ。

 そもそも、この4人の物語という軸はいいとしても、それを描くのに6話というのは正当だったのだろうか?

 オリジナルのフリクリは、基本的にはナオ太、ハル子、マミ美の3人の物語であり、その合間にカンチ、エリ、父親などのお話が挿入されている。この作品の脚本構成を読み取るのはかなり難しいけれど……描くべき人間は少ない印象がある。その分、ワケワカンナイけれど。

 オルタナはスタートからカナたち女子高生の目的や、物語のゴールが一切見ることができず、また5話において大きな転機が訪れるけれど、それが大きな意味を持っていたとはどうしても思えないんだよ

 

カエル「……でもそれはフリクリ自体がそうじゃない?」

主「だとしてら、もっとハチャメチャにすべきだったと思うんだよね。

 1人1人の描き方が決して濃いとは言い難く、各話でピックアップしたキャラクターなどもいたけれど、その1話だけで個性や魅力を伝えきるのは、少し難しいところがあった。

 簡単にまとめたら、しっかりと作ろうとしたら尺が足りず、ノリと勢いで突っ走るほどのハチャメチャ感はないという、半端にまとまった作品になってしまった印象だ

 

 

 

 

IGのエネルギー

 

もしかしたら、1番ショックだったのはここかもね……

 

う〜ん……ここまで IGのエネルギーが足りないとは思わなかった……

 

カエル「フリクリはスタッフ陣も超豪華で、今でも第一線で活躍する今石洋介、吉成曜、平松禎史、西尾鉄也、石崎寿夫(すしお)などなどの、ファン垂涎の超一流揃いです。

 しかも動画にアニメのアイマスの監督などを務めた錦織敦史がいたり、EDモデルが脚本家/作家の本谷有希子だったりと、こちらも驚きの面々が並びます」

 

主「もともとIGも関わっていたから、制作には納得ではあるけれど……この作品って、それこそ実験的手法がいくらでも取り入れられるし、そうでないと普通のアニメ作品になってしまう。そのハチャメチャな演出などがみんな大好きなわけで……

 これが一昔の前のIGだったら、多分トンデモナイ密度の作品になったと思う。

 だけれど結果的には、普通のアニメに、OVA形式ということもあって、ちょっといいぐらいの作画エネルギーになってしまったように見える

 

カエル「……隣で見ていた人、途中から寝ていたんだよね。

 それだけ物語を引っ張る力がなかったということだけれど……」

主「ここは難しい問題でもあってさ、自分が先に挙げた2000年前後の作品を、じゃあ今見たら面白いですか? と言われると、難しいところがある。当時は斬新だった、でも今は普通……なんて作品は当然ある。やっぱり、時代性って大事だしね。

 現代のアニメは2000年代に比べると、クオリティは平均的に上がっている。

 それは作画面でも、物語面でもね。

 でもさ、その分どの作品も上手くなってしまった分、ある種のノウハウが蓄積されていき、冒険しているなぁ! と思う作品が減っているような気もする。

 フリクリは冒険・挑戦こそが全てだから……そこがちょっとねぇ」

 

カエル「これがトリガー、スタジオカラーなどのガイナックスメンバーだったり、あとは……賛否は出るだろうけれど挑戦的な手法が多いシャフトだったらまた違った作品になっただろうけれど、大人しいからこその違和感は多くで指摘されているね」

 

 

演出がイマイチ!

 

カエル「あとは、明らかに演出で失敗しているシーンがあるよね?」

主「なんで『海は広いな』を歌わせてしまっただんだろうね? 

 挿入歌が入っている中で、歌を重ねる意味がわからない。

 バンドものなどの演奏シーンでBGMを入れるような行為だし、セリフとするのは長すぎる印象もある。そういうところが……正直、雑だなぁと感じてしまった」

 

カエル「最終話の勢いとかはいいものの、ラストの展開なども意味がわからなかったり……その意味のわからなさが魅力だったとはいえ、あの展開は疑問符が大きすぎるような……」

主「なんかさ、締まっているようであんまり締まってないんよ、この作品。

 自分は次の『プログレ』でこの続編やるのかな? と思ったら、そうでもない。あれでハッピーエンドのようだけれど、自分にはそう思えないところもあったかなぁ」

カエル「もしかしたらその違和感の正体って、OVA形式をそのまま上映というのも1つはあるかもね」

 

主「結論としては、伝説の作品になるほどのエネルギーが本作にあったか? と言われると、残念ながら『ない!』とはっきりと言わなければいけない所だし、思い出補正もある人も多いかもしれないけれど、表面的に似通ったものにしようとしすぎて違和感が生じているということかな。

 自分もフリクリシリーズ初見で観て、嫌いじゃないけれど、そこまで語ることもないというのが最初の感想だったし……

カエル「そのハチャメチャで難しいことが要求されるからこそ、真似はできない奇跡の作品ってことだね」

 

 

 

まとめ

 

ではこの記事のまとめです

 

  • 伝説の傑作、フリクリは奇跡のバランスの上に成り立っている
  • その続編としてのオルタナは、ムチャクチャさが足りない
  • フリクリを扱う難しさがフルに出た形か……

 

言われるほど酷評でもないですよ

 

カエル「1本の映画でもなく、OVA形式だからこその違和感かなぁ」

主「まあ、最後に語ったとおり言われるほど酷評の映画でもない。でも、まあ言うほどいい映画でもないという、ある意味でも最も無難という、非難されやすい作品に仕上がってしまった印象かなぁ」

カエル「では次の『プログレ』はどうなるのか、そちらも楽しみにしていきましょう!」