それでは『ワンピース フィルムレッド』の感想&考察記事とまいりましょう!
この記事は直接的なあらすじ紹介はしませんが、一部ネタバレありで語っていきますので、ご容赦ください
カエルくん(以下カエル)
ちなみに、ネタバレなしのレビュー記事が読みたい方は、以下の記事を参照してください
主
こちらの記事は全編ネタバレありの記事になっています
カエル「それでは、早速ですが記事のスタートです!」
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感想
それでは、感想ツイートからスタートです!
#OP_FILMRED
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年8月6日
にゃるほど〜
思った以上にLive感が強くて歌が満載な作品でした。まさかワンピでマクロスが観れるとは笑
アクションも派手派手でシャンクスやあの名キャラクターの登場&活躍も楽しくワンピのお祭りムービーらしい作品でした pic.twitter.com/TA7U6CsKHy
やりたいこと、テーマ、今回adoを起用した意味などもなんとなく伝わってはきました
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年8月6日
ただ全体的に1シーンごとのやりたいことはよく見えるけれど流れがうまく繋がってないと感じる部分も散見されたかと
褒める箇所もあるものの、全体としては辛口になってしまうかな
カエル「前回の記事ではネタバレなしということもあって、褒め重視でした。
この記事では、その通りではないんだ?」
主「まず先に言っておくと『今年最低の1本!』などと言われるような作品ではない。
ONE PIECEとして、あるいは映画として評価すべき点もあるし、この映画が好きという気持ちもよくわかるんだよ。
だから今回は辛口ではあるけれど、でも決して貶すだけが目的ではない、と言っておきたい」
作品の辛口感想
シリーズ映画の壊す部分と、残す部分の選択
辛口だけれど、決して悪いだけの作品ではないと……
かなりの意欲作であり、多くの改革を試みた異色作とも言えるわけだ
カエル「以下のインタビューで谷口監督はこのように語っています」
つまり、かなり挑戦しているということなんだ
カエル「これってシリーズ映画ではよくある話で……それこそ、実写洋画だけれど『スターウォーズ』なんてまさしくそうだよね。
それまであった過去作の流れや、今の世界情勢、世間の流れを受けて変えるべきところは変えていく……
でも、その結果がファンに受け入れられるものばかりとは限らない」
主「自分は『シリーズ映画は2塁打を狙え』理論を提唱している。
シリーズ映画というのはお約束を踏襲していくことで、次回作につなげることが重要なんだ。だからホームランを狙ってはダメ。ホームランというのは三振のリスクも増えるし、そのあとが続かない可能性もある。
それよりもきっちりとお約束を踏襲して、2塁打を狙っていき、次の作品、次の作品と歴史を繋いでいくことが大事なんだよ。
そしてそれを行なっているのが『ドラえもん』であり、『クレヨンしんちゃん』なんだ」
あまりにも大きく変えようとすると、次の作品が続かない可能性があるということだね
守るべきところは守り、その中で挑戦することを見つけるというのが大事なんだ
主「それでいうと、ONE PIECEではホームランを狙ったのは『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』だったかもしれないね」
細田守監督作品としては評価できるけれど、ONE PIECEとしては『これじゃない!』ってことも語れやすい作品だよね
ホームラン(過去を踏襲しない、新しい描き方)を目指して、ONE PIECEとしては……残念ながら失敗の印象の方が強い作品かな
主「それでいうと、今作もある程度はホームラン狙いなんだ。
つまり、壊す部分は壊そうとしているし……自分は谷口監督の過去作も大好きで、それこそ『スクライド』や『プラネテス』などに、かなり影響を受けているんだけれど、結構壊し屋な一面もあるんだよね。
それでいうとONE PIECEという作品、あるいは映画のお約束を壊そうという意図は感じられたし、ある程度はそれに成功している」
本作の構造的な欠点
際立つ意味と止まる流れ
それだけ言いながらも、今作が辛口なってしまう要因はどこにあるの?
……単純にテンポというか、流れが悪いんだよね
カエル「テンポが悪い?」
主「映画に限らないけれど……カットには2つの意味があると思っているから、以下にまとめよう」
1が際立つほどに、わかりやすい映画ということになるわけだね
この映画は1は際立つんだけれど、2がとても惜しいと感じるんだ
カエル「つまり、そのシーンの意図はわかるけれど、繋ぎ方……ある意味では編集になるのかな? そこがとても惜しいと」
主「これもよく言うことなんだけれど……この映画は物語の流れが止まる部分がとても多いんだよ」
これがミュージカルや歌唱映画の難しいところなんだ
主「物語というのは、情報を出すパートと流れがある。
ONE PIECEなんかは過去回想が多い作品として知られているけれど、回想はその人物の過去や重要な情報を開示することはできても、現在の物語は一切動かない。
だから深掘りはできるんだけれど、物語そのものは停滞してしまうんだ。
そしてそれはライブパートやミュージカルも同じで、基本的には物語そのものは停滞してしまう。
具体的な話をすると、この映画の初めの15分くらいはウタの歌唱パートも多くて、ルフィたちはスタート地点からほぼ移動していないし、物語もほとんど進行していないわけだ」
ふむふむ……
そうなると、物語の基本情報を開示することが必要となって、駆け足になったり、あるいは説明セリフが多くなってしまうんだ
カエル「確かに、前半ではモブの海賊とか、あるいは色々な海賊がウタを狙っている! という説明もあったりしたよね」
主「歌唱パートが山ほど入り、その度に物語が止まるから、説明セリフがオンパレードになってしまう。
その結果、歌唱パート → 説明セリフ・シーン → 歌唱パート → 説明セリフ・シーン → 過去回想 → 説明……
というようなことが続いてしまう。
これが構造的な欠点であり、今作はそれが終盤付近まで続いてしまったため、流れが悪く感じてしまった。
あとは後半になると歌唱パートも少なくなってきている印象で、序盤がピークだった印象だったから……そこも色々と中盤の退屈感を誘ってしまったかな」
ウタの魅力〜おじさんではないキャラクターの難しさ〜
次はウタのキャラクターの立ち位置の難しさということですけれど……
今までの過去作のFILMシリーズとは違うからこそ、難しさが際立った印象だ
カエル「パンフレットでも尾田っちは『伝説のおじさんに飽きた』と言ってましたし、それは映画発表時のコメントでも出ていたよね?」
主「今作のウタってすごく難しいポジションで……ルフィの幼馴染でシャンクスの娘というと、ヒロインポジション&仲間ポジションになりやすい状況になっている。
だけれど、実際は彼女が敵なんだよね。
そうなると、最初にウタの説明→ ルフィや赤髪海賊団との関係の説明→ 能力の説明→ 目的の説明……みたいな形で、説明することがとても多い」
これって、過去作のようにおじさんだったら、解消できたの?
だって、最初から敵だってことがわかっていたでしょ?
こうやってみると、敵キャラクターがとてもわかりやすいんじゃないかな
主「つまり、全員おっさんではあるけれど、肩書きがONE PIECE世界だとすごいわかりやすいんだよね。
ロジャーのライバルとか、元海軍大将とか、そう言われるとONE PIECEが好きな人なら『おぉ!』と説明不要になる。
テゾーロだけはちょっと説明がいるけれど……」
カエル「確かに、それに比べるとウタもシャンクスの娘という肩書きはすごいけれど、敵としてすごいかと言われると……ってのもあるかも。
しかも歌姫で、シャンクスの娘で、能力者で、強くて、でも弱点もあって……とかだと、確かに説明することも多いし」
主「今回は尾田っちの意向もあって、女性が敵とするのは良かったけれど、でもそのせいでハッタリの効く敵ではなくなってしまった印象だ。
だからこそ、説明が必要になり、さらに複雑化して、色々と難しい部分が増えてしまった……そんな印象が強いかな」
オリジナルキャラクターを映画で出す難しさ
それから、やっぱりウタが映画オリジナルキャラクターというのも、大きかったかもね
正直に言えば、自分はウタよりもヤマトを映画で観たかったかなぁ
カエル「ヤマトも仲間になるとは言われているけれど、まだ正式に仲間になっていないからそれはできないのはわかるけれど……
でもウタもいいキャラクターだと思うけれどなぁ」
主「いいキャラクターだよ?
それは本当に認める。
だけれど、前作の『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』などがそうだけれど、オールスターの強いところて『みんなが知っているあのキャラクターが大活躍!』なわけじゃない?
でもさ、みんなウタのこと知らないから……そんなキャラクターのライブシーンを見せられても、知らないアーティストのライブに行くようなものだと思うんだよね」
過去作の場合は敵だったから、そこまで掘り下げなくても良かったけれど、今回は味方で思い入れが薄い状態でライブシーンが入るわけだもんね
これが……まだブルックのコンサートだったり、麦わらの一味のライブだったら、印象は違ったかもしれない
主「映画オリジナルキャラクターってとても扱いが難しいけれど、今作の場合はやはりそれが難航した印象だ。
上記のように、今作はかなり難しいポイントがたくさんある。
これだけ説明しながらも、オールスターのような形で色々なキャラクターも出さなければいけないしね。
そこを処理しきれなかった印象もあるかな」
作品考察〜今作がテーマとして描いたもの〜
今回の能力が示すこととは?
では、ここからは考察といきますが……まずはウタの能力について考えていこうか
今回、色々と挑戦しているけれど、わかりやすいのはウタの能力だろう
カエル「ウタの歌唱を聴いてしまうと、意識を失ってウタのオリジナル世界へと行ってしまいます。その代わりウタが寝るとその能力は途切れるんだけれど、逆に言えば起きている最中は延々とウタの歌ワールドに入ってしまうという……ある意味ではホビホビの実の上位互換とも言える能力だよね。
体力お化けのビックマムあたりが使ったら、チートになりそう……」
主「この能力はONE PIECEでは絶対にできないことをやっていたんだ」
ONE PIECEでは絶対にできないこと?
つまりデジタル空間の創設、簡単に言えばネットの話だよ
カエル「インターネット?
そりゃ、デジタルなんてない話だし……でんでん虫という便利なアイテムはあるけれど、インターネットはさすがに出てこないんじゃ……」
主「だから、今回はそれをやったんだ」
まさに、ネットの世界じゃない?
カエル「まあ、そういう見方もできるのか……」
主「多分……というか、尾田っちって絶対にネット文化とか好きな人で、Vtuberとかも好きなタイプだと思うんだよね。
これは完全に自分の独自考察だけれど……ウルてぃって、絶対ホロライブの桐生ココがモデルだと思うんだよ。どちらもドラゴンだしさ、デザインも話し方というか、性格もかなり似通っている部分がある」
今作でAdoを起用したことで持つ意味
それは正解かはわからないけれど、結構新しい文化とか、楽しいことに敏感そうなイメージはあるかなぁ
音楽などにも詳しいようだし、色々な文化に精通しているよね
主「もちろん、尾田っちの好みというよりは、谷口監督の方向性や、脚本の黒岩勉の案かもしれないけれど。
作中で『ウタの勝手な思い込みだ!』みたいなことをモブが話すシーンがあるけれど、あれってネットの描写なんだよね。賛否が割れて、簡単に誰もが歌手を評価し、その考え方などを肯定も否定もできる時代。
つまり、この映画がやったことは……ネット文化と歌唱という意味では『竜とそばかすの姫』と似ているとも言えると思うわけだよ」
なんだか、突飛な意見のようにも聞こえるかもしれないけれど……
そう考えると、Adoの起用の理由もわかるんだよね
主「Adoって、そのまんまウタと重なるところがあると思わない?
ここ2年くらいで一気に出てきて、顔出しはしないで配信などを中心に活動しているアーティストで。まさにネット文化の申し子みたいな存在でもあるじゃない?
この映画においてAdoを起用することで、複数の意味を持たせることができる……つまりウタ=Adoであり、あのウタのワールドはネットの世界とすることができる。
そう考えるとウタって、それこそVtuberのような、ヴァーチャルなアイドルのようでもあるという印象になると思うんだよ」
谷口監督のインタビューから考える
それを裏付けするようなインタビューがあるの?
他作品について語っているときなんだけれど、谷口監督のインタビューが、すごく色々と考えさせられるんだよね
これは『エスタブライフ』という作品について語っているのだけれど、そのまんま今作にも通じると思わない?
カエル「特に後半の『目の舞にある現実以外での生き方』というのは、ウタの理想だよね。
ウタは海賊が嫌いで、支配者が嫌いで、誰もが平等に楽しく暮らせることを目指した……その意味では、とても改革者としては理解できるし、それだけの能力があったわけだもんね」
主「ボクはインターネットの世界の人間だし……こうやって意見をネットであげているわけだしね。インターネットには希望的な観測を持っている。
だけれど、そうじゃない人も中にはいるかもしれないよね……それが次の論に繋がるんだ」
新時代とは何か?〜ルフィが目指すものと、ウタが目指した時代〜
この映画の中では何度も『新時代』について語っているけれど……それって一体なんだと思う?
それこそ、この世界ではない新しい時代なんだ
カエル「それはそうだけれど……ONE PIECEの世界では特にシャンクスが何度も『新時代、あるいは新しい時代』というセリフを言っている印象だよね」
主「ルフィ、シャンクス、ウタに共通している(であろう)ことは『支配者を嫌う』ということだ。
ウタはさらに暴力……海賊も嫌う。だから海軍も海賊も一緒に新たなる世界=ウタワールドへ引き込もうとしていたわけだよね。
おそらく三人に共通している理念として『自由を好む』ということだ。
ルフィは当然だよね、何度も『海賊王は海で1番自由なやつ』という発言をしているわけだし」
自由であること、そのためには強くあることが必要なわけだね
ルフィはとても単純な考え方をしていて『強いやつ→海賊として自由なやつ』という思考だろう
主「一方でウタが目指したのは、肉体的な苦痛は忘れて、全員でウタワールド=デジタルなワールドに引きこもろうよ、という考え方だ。
これはまさにVtuberであったり、あるいはメタバースの世界が行き着く先の未来と言えるかもしれない。
肉体的、現実的な苦痛はAIとかに任せ、仮想空間で楽しくやっていこうという考え方。
ちなみに、自分はウタの理想に共感する」
ネット大好き民にとっては、理想の環境だよね
でもルフィはそれを否定する
主「ルフィにとって自由とか世界というのは、現実と地続きなものなんだ。
ウタの理想はルフィには相容れない。それは現実ではないから。
ルフィにとっては現実を改変すること、そこで自由であることを模索する。
ウタワールドがどれほど楽しくても、それは自由とは程遠いものだという考え方をする。
これはこれまでのONE PIECEの物語に合致する」
まとめるとこういうことだね
ウタとルフィは目的は似ていても、その思考方法が決定的に異なってしまう
カエル「さっきあげた記事の『実は人間って、分かり合いたくないんじゃないのかなと思っているんです。』という部分に近い思想なのかもね」
主「どちらを好むかは人によるかもしれないけれど……明らかに1つ言えることは、ウタの正義とルフィの自由は決定的に交わらない。
シャンクスという同じ目標や根っこから始まった二人の関係性は、決定的に異なってしまうわけだ。それがラストの対峙につながる。
その意味では、今作はONE PIECEという作品の根本であり、今後の物語では中心になるであろうテーマ……ONE PIECEとは何か、ひいては自由とは何か? ということについても語っているわけだな」
最後に
あれ……なんか、最後は辛口じゃないような
だから悪い作品ではないって!
主「ただ、やりたいことがものすごく多くて、それで失敗している部分も多く見えてきてしまうというだけの話でさ。
色々と歪ではあるけれど、でもいい話だと思うし、ONE PIECEだからこそやる価値はあると思う。挑戦的なタイトルだし、海賊の功罪というのもいいテーマ。
ただその整理や流れに失敗しているのかな、という思いがあるから、作品としては評価しづらいんだけれどね」
カエル「なるほど。
それでは、ONE PIECE考察記事はここまでになります!」
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