物語る亀

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物語愛好者の雑文

『ブラックラグーン』既刊11巻ネタバレ感想&考察! 久々登場も魅力的なバイオレンス&エロティックは健在!

 

  

 

数年ぶりにBLACK LAGOONの新刊が発売です!

 

待ちに待ったから、これは嬉しいニュースだね

 

カエルくん(以下カエル)

「一時期大ハマりしていたし、アニメも大ヒットしていたから待ち望んだ方は多いのではないでしょうか?」

 

「個人的な話だけれど映画の『ボーダーライン』を見ながら、なんとなくブラックラグーンを連想していたからさ。

 こうやってボーダーラインの続編公開のすぐ後に新刊発売は嬉しいね」

 

カエル「今回はネタバレは少しですがちょいちょい挟みながら、過去の巻も含めて”ブラックラグーンが表現してきたもの”について考えていきます。

 では、記事のスタートです!」

 

 

 

 

 

 

感想

 

じゃあ、まずは11巻を読み終えた感想から始めましょうか

 

何はともあれ、これでひと段落ついたのは良かったな

 

カエル「正直、生殺しもいいところだったからね……8巻の時もそうだったけれど、10巻もいいところで話が続いちゃったから、結構続編を読むまでが長くて……」

主「たださ、これだけ長期休載に入るのもわかるのよ。

 確かにファンとしては長期休載されるとモヤモヤするし、その間に別の仕事をしていたら『いやいや、あっちを書いてよ!』となるのもわかる。

 だけどさ、長期休載に入る作品は、やっぱりそれだけの理由があると思うんだよね

 

カエル「理由?」

主「これは他の作家もそうだけれど、物語がとてつもないところに行き過ぎちゃって収拾がつかなくなっている場合。もちろん肉体的な問題などもあるよ、漫画家は過酷な仕事だしさ。

 物語の風呂敷を広げすぎてしまい、それをどのように畳めばいいのか全くわからないレベルにまで達してしまうことって、やっぱりあると思う。

 長期休載作品は『この先、物語を畳めるのか?』と思ったら、案の定続かなかったという作品もあるからね」

 

カエル「それはブラックラグーンも同じなの?」

主「同じだと思うよ。

 特にヤクザ編以降は、かなり物語自体が複雑化しすぎてしまっていた印象がある。

 自分は9巻、10巻を読み直してから11巻を読んだけれど、11巻はかなり印象が変わったね」

カエル「なんというか、絵のタッチがちょっと変わった印象はあったかな」

 

主「何年も過ぎているからそれは当然のことかもしれないけれど、全体的にスッキリした。

 相変わらず文字は多いけれど、それでも以前と比べたらだいぶマシになっているし……あの独特の洋画のようなスラングも減った印象を受けた。

 以前だったらもっとごちゃごちゃしたかもしれないけれど、この広げた風呂敷を一度畳むために、走らずにスリム化した印象を受けたな

 

 

 

 

ブラックラグーンを象徴するロックのネクタイ

 

ブラックラグーンって一言で言うとどういうお話なの?

 

ロックのネクタイの物語だね

 

カエル「……ロックのネクタイ?」

主「11巻もそうだし、ブラックラグーンという作品は”ロックという人間がどのように変化をしていくのか?”という物語でもある。

 そのため、彼にはいつも2つの道がある。

 

  • ロアナプラを始めとする悪党どもの街で生きる”ロック”
  • 日本の商社マンである”岡島緑郎”

 

 多くの場面で彼はどちらの道を選ぶのか? というお話だ。

 その目線で見ると、ブラックラグーンという物語の鍵は”ネクタイ”なんだよ」

 

カエル「11巻でも『ネクタイくらいは主義を曲げてもいいんじゃないか?』と言われているよね」

主「1巻から何度も言われているのが、ロックのネクタイ問題。

 もちろん、ネクタイをつけているキャラクター自体は張さんをはじめとして他にもいる。だけれど、彼の場合はチャイニーズマフィアらしさでもあり、相手を恫喝するためのファッションでもある。

 でもロックは明らかに日本のサラリーマンを模していて、この悪事の街の成り行きをじっと見つめている。

 その象徴がネクタイであり、それはヤクザ編の『夕闇』でもあり、彼がどちらにもつかない、ある種の半端な存在でもあるという証明でもあるわけだ

 

 

 

 

過去の巻を振り返って

 

では、ここで一度過去の巻も降り返って考えてみようということだけれど……

 

結構わかりやすいと思うんだよね

 

 

カエル「ものすごく大雑把にまとめると、このように分類できるのかなぁ」

 

  • 1〜2巻 ロックが街に馴染むまでの物語
  • 3〜4巻 ロアナプラをはじめとした裏社会の描写
  • ヤクザ編 ロックの転換点①
  • ロベルタ編 過去との比較
  • フォン編 ロックの転換点②

 

主「まず、最初は日本人の岡島緑郎がロックとなり、街の一員となるまでの物語だよね。そこでレヴィとゴタゴタが起き、最後はあの伝説的なタバコキスを交わすことで2人がお互いを認め合う……

 つまり、ロックが本当の意味で街の住人になった、レヴィが認めたといういうことを表している。

 そして大人気の双子編などはキャラクターの深堀とともに、彼らが接する裏社会の闇を中心に描く。それはメイド編1回目などよりもより濃く、この社会は恐ろしいものだと描写していた」

カエル「ここまでは結構難しいことを考えないでも楽しめる娯楽作でもあったのかなぁ……」

 

主「そしてヤクザ編はロックの大転換点だ。

 生まれ育った日本に行き、そこで事件が巻き起こり、ロックは様々な選択をする。家に帰らない選択、銃を撃たない選択、そして……雪緒との会話。

 雪緒はロックのもう1つの姿でもあり、まっとうな明るい道から足を踏み外し、暗い闇の世界へと頭と口八丁だけで渡りあるこうとした。

 もちろん、銀次の存在は最強の用心棒であり相棒でもある、ロックにとってのレヴィである。

 ここで彼は夕闇を選び、雪緒はその半端な世界にいることを許せなかった……

 だけれど、ドブのような世界でも生きようとしてしまった、それが彼女の敗因となってしまった」

カエル「生きようとすることが敗因というのは皮肉といえば皮肉なのかな……」

 

 

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ロベルタ編とはなんだったのか?

 

僕なんかは、ロベルタ編ってよく意味がわからないことも多いんだよねぇ

 

あれはOVAだとかなり改変されていてわかりやすくなっているんだよ

 

主「数年前にニコニコ動画で一挙放送がされていたから見ていたけれど、かなり大胆に改変されていて驚いた。

 その分、物語はだいぶわかりやすくなっていたけれど、一部シーンがなくなったことにより、意味合いが大きく変わった印象を受けた。

 具体的なことに関してはもう忘れちゃったけれど、確か……ロアナプラを出た後のレヴィとファビオラの会話がかなり改変されていた記憶がある」

 

カエル「そのあたりは結構あやふやなので、漫画版だけの話にしようか。

 あれってさ、よくわからないこともあったけれど、どう見たらいいの?」

主「あれって考えようによってはヤクザ編の裏返しなんだよ。

 ヤクザ編は雪緒をはじめとした登場人物が、どんどん暗い道を選択して闇の中へと沈んでいく物語だった。

 ロベルタ編はその逆。

 真っ暗で、ドロドロとしたクソのたまり場のような世界においても、光を目指して突き進んでいく純粋な物語。だから、最後はものすごく綺麗な方法で……ブラックラグーンにふさわしくないような方法で、終わっていったわけだよね」

 

カエル「あのロベルタを止める方法とか、かなりファンタジーでもあったよね……」

主「そこでロックが使ったのは策と空砲。

 つまり、紛い物で空っぽの武器。

 ロックとしては銃であっても人を殺さず、目的を達成できる手段だと思っていた。だけれど、それはやっぱり外法であり、ファビオラたちは本気で怒った……それが”夕闇”なんだよ。

 つまり、雪緒編において真っ暗なドブの中にいかざるを得ない少女にも否定され、逆に明るい世界を模索するガルシア達にも否定される」

 

カエル「それを考えると、雪緒もガルシア君も大人の都合や仕方なく家を継ぐという行為になっているもんね……」

主「ロベルタが暴走したのは、最強のボディーガードが敵討ちに走ったというのも……銀次が雪緒を取り替えしに大立ち回りしたというと、まったく一緒だろう。

 だけれど、それと同様に一度暗い世界に足を踏み入れたものは、あそこまでやらないと元の場所には戻れない、ということも描いているんじゃないかな?

 

 

 

 

ガルシアとロック、ファビオラとレヴィ

 

ちょっと話を広げて、この対比について話をしましょう

 

というのも、やっぱりここがブラックラグーンの肝だと思うんだよね

 

カエル「ものすごく複雑だったけれど、この対比についてはどう考察するの?」

主「とても簡単といえば簡単……言葉をメタ的なものにすれば、少年漫画と青年漫画の違いとでもいうのかな?

 ガルシア、ファビオラは少年漫画、ロックとレヴィは青年漫画の主人公と相棒であり、この世界はドロドロの青年漫画である、とね」

 

カエル「……納得するのが難しそうなのでもうちょっとちゃんと説明して」

主「ロックってものすごくいい人に見える。

 11巻でもそうだけれど、女の子たちに信頼されているような描写もあって、とても優しい善人のようだ。

 だけれど、それはあくまでも”ロアナプラの基準”で考えるとそうなんだよ。

 彼は夕闇の中の人間であり、もっと綺麗な世界を求めるもの……つまりガルシア君にしてみると、かなりドス黒い、汚い人なわけ。

 しかもさ、彼自身は何も手を汚さず、口八丁手八丁で切り抜けている

 

カエル「リスクはちゃんとおっているけれど、それはわかりづらいしね……結局はただのギャンブルのように考えてしまう描写は、ロックがものすごく悪人に見えるという……」

 

主「で、ファビオラは……自分の言葉で表すならば”過去のレヴィ”もしくは”ありえたかもしれないレヴィの可能性”でもあるわけだ。

 OVA版ではレヴィの過去の関する衝撃の映像が流れる。それはもしかしたら、ファビオラも同じような目にあっていた可能性はありうるわけだ。境遇としてはそこまで大きく変わるようなものではないしね。

 だけれど、そこでファビオラが出会ったのがガルシアだった。

 レヴィは少女時代にガルシアやロックに出会えなかった。

 

 ”でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ。

 だから このお話はここでお終いなんだ”

 

カエル「確かに、そう考えると”正常位じゃ誰もイケない”レヴィがファビオラに過度にイラついているのもよくわかるかもね……」

主「キラキラ光る少年たちの姿が、肥溜めの人生には憎く思えるのは、そりゃそうだって話だよ。

 ……そう考えると、双子編などをはじめとして、ブラックラグーンが描いていることは案外単純なことなのかもしれないね

 

 

 

フォン編について

 

では、ようやく最新話のフォン編について語りましょうか

 

2つの世界を覗いたロックが、再び自分の転換期も迎えることになったんじゃないかな?

 

主「フォン編ってさ、ロベルタ編のことがよく出てくるんだよね」

カエル「ある種の振り返りのような部分もあるよね」

主「この辺りは作者自身がロベルタ編をどのように受け止めるか自問自答しているような気配も感じるけれど……それは置いておくとして、フォンという存在は当然ロックのもう1つの姿である。

 自分が所属する組織に捨てられて、命すら狙われた。そこを助けてくれる人(ロック)はいるけれど、レヴィに該当するような用心棒はいない。

 その代わり、自分の持つパソコンスキルでもってしてその場をうまくいなしていく」

 

カエル「結構すっきりしたという話だけれど、どこいらへんが?」

主「以前だったらイタリアマフィアの様子とか、あるいは敵をもっと描こうとしていたかもしれないなぁ……って。

 長編の割には意外とあっさり4兄弟も倒されたし。まあ、今回はそこまで大物ではないというのもあるんだろうけれど」

カエル「敵がどうこうという話ではないし、そういえば軍の描写も11巻では一切なかったような……」

 

主「じゃあ、この11巻の見所は? と言われたら、自分はやっぱり……小説版以来となるレヴィの艶やかな姿と、ノリノリのエダになるのかな」

カエル「え、ここまで真面目な話をしてきてその話なの?」

主「まあ、それは冗談として……いや、冗談でもないんだけれど、この流れで語るならばやっぱりフォンとロックの会話だよね。

 2つの道しかないように思うけれど、実はもっと自由に物事を考えてもいい……それだけといえばそれだけなんだけれどさ」

 

カエル「そして”物語”というワードが出てきたね」

主「物語を見届けたいから、宵闇の中からそれを見つめ続ける……この考え方ってとてもよくわかる。見届ける者は確かに宵闇の中にいるのが1番都合がいいんだろう。どちらにも行けるしね。

 では、この先ロックはどのような物語を見届けるのか……そしてロックはどのような選択をするのか、それも楽しみにしたいね

 

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです!

 

  • 11巻は長期休載も挟んだからか、すっきりした印象も!
  • ロックは”夕闇”の中で何を見つめ続けるのか?
  • 相変わらずバイオレンス&エロティックな作品!

 

いやー、いい感じでエロいよね

 

カエル「広江礼威の書く女性はどことなく色気があるからね。男性もおじさん達はしっかりと渋いし」

主「特に今回は娼婦もたくさん出てくるからな。

 終盤のエミュシラがしばかれているシーンの表情とか、ああ、ハマっているなぁというのが伝わってくるし、相変わらずこの手の描写が抜群にうまい!」

カエル「あとは……次がどのタイミングで発売するかだね」

 

主「早く読みたいけれど、じっくりと作って欲しいし、いろいろと他にも仕事もあるようだから、ゆっくりと待ちましょう。

 ……できれば2年以内には発売して欲しいな」

 

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