カエルくん(以下カエル)
「えーまずは、皆様に謝罪と訂正をしないといけないことがあります」
亀爺(以下亀)
「以下の記事にて本作品を著しく貶めるような間違いがあったことが発覚したの」
カエル「この記事の中で当初、この映画が『最低の映画を決めるラジー賞にノミネートされた』と書いてありましたが、そのような事実はありませんでした。
ここに謹んで訂正し、謝罪します。
大変申し訳ありませんでした」
亀「おそらく、記憶をたどっていくと『2017年のラジー賞候補』の記事と混同しておったようじゃの。そこでは『スーサイド・スクワッド』などもあったようじゃが、それも勘違いじゃったようじゃな。
ラジー賞にノミネートされそうな作品、の記事であって、ラジー賞ノミネートの記事ではなかったと」
カエル「本作の評価を著しく下げてしまうような勘違いに大変申し訳なく思っております」
亀「では実際、この映画を見た感想はどうだったのか? それはこの先の記事を読んで欲しいの」
カエル「それでは感想記事のスタートです」
1 ネタバレなしの感想
カエル「じゃあ……感想だけど」
亀「ラジー賞ノミネートも理解出来る作品じゃったの」
カエル「だからそれは勘違いだと!!」
亀「まあ、その噂が出るようなレベルの作品ということじゃな。
先に言っておくが、ラジー賞自体は最低映画賞と言っておるが、あれはジョークとして成り立つ映画や俳優を選んでおる。例えば新人俳優であったり、実績もないような監督の自主製作のような映画が選ばれることはまずないの。
そうしてしまうとただのイジメであり、ジョークとしても成り立たなくなるからの」
カエル「日本で言ったら『進撃の巨人』とか『テラフォーマーズ』みたいな扱いだよね。本当に実績のない新人俳優とかは選ばれないし、さすがに叩かない。
それだけの期待値があったということでもあるし、その意味ではある程度の実績を認められているからこそ、ラジー賞というジョークにもできるという、アメリカ流の駄作救済方法だね」
亀「逆に言えばアカデミー賞にもラジー賞にもノミネートされないような、いわば観るところのない中途半端な作品の方が危ないと言えるかもしれん。
そのような作品では話のネタにもならないレベルということじゃからな。それは表現者として大失敗じゃ」
ゲームを映画にする問題点
カエル「ラジー賞はいいとして……今作はやっぱり展開が早すぎたこともあるよね」
亀「ゲームを映画にする問題点と言えるかもしれんの。
わしはあまりゲームをやらんが『アンチャーテッド』をプレイした時に『今のゲームはここまで進化しているのか!』と非常に驚いたの」
カエル「アンチャーテッドは例えるならば『インディージョーンズ』のような作品だよね。アクションあり、謎解きありでゲーム性も面白い、脚本も演出も見事な作品でさ」
亀「『メタルギアソリッド』などでも思ったことじゃが、ゲームの映像クオリティやスケールの大きさはすでに映画を凌駕しておるかもしれん。脚本、音楽、演出などを考えた場合、総合エンタメの中でも最先端を走っておるのは、実はゲームかもしれんの」
カエル「本作もそんなゲームが元になった作品だよね。それが映画化した時に少し失敗したんじゃないか? というのが今回の論点だけど……」
亀「まず、ゲームという原作があるから当然のようにしっかりとしたストーリーや設定がある。じゃが、それはクリアするのに何時間、何十時間もかけるゲームという媒体ゆえのスケール感だったりする。
それを2時間に再構成するのは難しかったという印象じゃの」
カエル「世界観、キャラクター、敵と味方、戦い方などの説明もしないといけないからね。そういうことを時間かけて説明できるゲームと映画じゃ、やっぱり違うよね」
『脚色』が……
亀「つい最近アカデミー賞が発表されたがの。その中でも疑問に思うのが『脚本賞』と『脚色賞』の違いじゃの。
この違い、カエルは説明できるかの?」
カエル「え? 脚本は筋書きとか、台詞とかキャラクターとかに関する物語の台本とかだよね? 脚色は……なんだろう、演出とかとも違うし……」
亀「脚色とは『脚本をその媒体に合うように再構成する』ということじゃな。つまり原作をどのように切り取り、どこを残すか、その取捨選択とも言える。
同じ作品を原作としていても、リメイク版などでは全く違う印象を与える場合もあるじゃろう? 例えば『時をかける少女』などは実写で何度も映画化などもされ、アニメ化もされておる。その大元の原作は同じであっても、与える印象は全然違う。
それは脚色の影響じゃな」
カエル「その物語媒体に合うように再編集するってことだね」
亀「そうじゃの。
そして本作はその脚色がうまくいっておらん。この作品を原作の持ち味を活かしたまま映画化したかったのはよくわかるし、それは賞賛するものかもしれんが……非常に多くのシーンで説明不足であったり、描写不足になってしまっていた。
しかも展開も早く、テンポがいいというよりも単純に飛ばしているという印象じゃの。そのため、この映画は観客をおいてきぼりにしてしまっている」
カエル「結構複雑なお話なんだよね……」
亀「テンプル騎士団とアサシンの対立という単純な話だったら、もっとわかりやすかったのじゃが……そこに様々な要素が絡み合ってしまった。
なので原作を知っている『ファン向け映画』に終始してしまった印象じゃな。まあ、全世界で3700万本という驚異的なヒットをしている作品の映画じゃから、それでも問題ないのかもしれんがの」
以下ネタバレあり
2 複雑な世界観
カエル「結構序盤からコロコロとお話や設定が動いてしまうんだよねぇ……」
亀「第一の問題はそこじゃの。お話がコロコロと動いてしまうから、観客が理解する前にお話がすぐに揺れ動いてしまう。
最初に500年前のスペインのお話、次に80年代の子供の頃のお話、そして現代へと3つの時代を経てしまう。それはもちろん重要なことではあるのじゃろうが……設定の羅列だけで終わってしまった印象じゃの」
カエル「CGなどのクオリティは凄いけれどね。それだけだとちょっと、初見だと辛いよね……」
亀「まず物語に没入させることが非常に大切なわけじゃからな。その前提条件になる情報がこれだけパッパと切り替わってしまうとの」
カエル「さらに言うとさ、複雑な世界情勢だったり、相手だったりするんだよね……」
亀「ここで簡単におさらいしておこうかの」
物語設定のおさらい
アサシン教団
自由を信じ、人の心を縛る『エデンの果実』がテンプル騎士団の元へとわたらないように守り通している者たち。
主人公のカラム・リンチ、父親、ムサ(黒人)、リン(中国風の女性)などが配属している。
中世スペインではアギラール、マリアなどが在籍
(なお、おそらくこの白人、黒人、アジア人という配役は世界規模の興行を狙うための人種的配慮と思われる。アジア人枠が中国人なのも、いかに現代のハリウッドが中国を重要しているかわかるものとなっている)
テンプル騎士団
エデンの果実を手に入れて、人々の支配を試みる人たち。
2016年ではソフィア、ソフィアの父であるアランなどが在籍しており、アニムスを持つのもこの一団。
つまり、ソフィア博士などは最初から敵であり、この計画は『エデンの果実』がどこいったかわからないから、知っているはずの過去のアサシンたちの記憶を辿ろうぜ!→ヤベェ! あいつら過去のことを思い出して覚醒しちゃった! みたいな自滅のお話でもある。
エデンの果実
神話の時代から存在するらしい宝物。どうやら人間がエデンの園から追い出されるきっかけになったものらしい。
これを手に入れたものは人の心を操ることができるようになる。
アブスターゴ財団
現代の物語の舞台。テンプル騎士団が設立した企業であり、その力は莫大なものである。リンチが運ばれてきたのもこの施設であり、つまり本作はテンプル騎士団の手のひらの中で最初から実験を行っていたということになる。
アニムス
遺伝子情報を読み取り、その人物の祖先にあたる過去の人物の記憶を追体験することができるトンデモ発明品。
ちなみに500年前の人物の子孫が1人だけって、それって辿れないってことだよね? テンプル騎士団の中にその人物がいてもおかしいないような気が……
カエル「少なくともこれだけでも紹介しないといけないわけだからね……」
亀「専門用語の雨あられ、それを理解するのも大変じゃし、ほぼ設定を語るだけに終始してしまった印象じゃの。
イーグルダイブ! なんて言われても、ゲームをやっておらんわしからすると『へぇ……』レベルでしかないからの」
3 結局このお話ってなんだったの?
カエル「でさ、結局のところ、このお話ってなんだったの?」
亀「簡単に言えば過去の記憶を思い出した主人公がエデンの果実を守りました! 現代にアサシンがよみがえりました! ということじゃろうな」
カエル「う〜ん……なんか納得いかないよねぇ」
亀「ほう……何がじゃ?」
カエル「結局さ、あのソフィア博士は何がしたかったの? アサシンに対して人道的に扱っていたのはいいと思うよ? だけどラストのゴタゴタの後、父親があんなことになって、そのあとで『私が跡を……』みたいなことを言っていたけれど、あの人のキャラクター設定ブレブレすぎじゃない?」
亀「そうじゃの。悪党なのかヒロインなのか、よくわからん描かれ方をしておったの」
カエル「あとは現代のお話が専門用語の羅列すぎて眠くなってくるよねぇ……ゲームをやっていないとこの実験の目的も、何がしたいのかもよくわからないし。
いや、説明しているかもしれないけれど、パッパと進んじゃうから理解が追いつかないというかさ」
亀「専門用語の羅列じゃからな。
これもゲーム作品原作の欠点かもしれんの……ゲームでは何度も繰り返しプレイできるし、理解できなければ止めて検索などで調べることができるからこれでいいのかもしれん。専門用語を多くすることで、世界観を演出することもできるしの。
それを映画にされると、ここまで辛いとは思わんかったの」
ちょっと危険なツッコミどころ
カエル「ここの危険ってどういうこと?」
亀「この映画が抱えておる問題点じゃの。
本作はDNA構造が重要という話になっておるが……はっきりと明言しておったが、DNAがこう言う風になっておるから、暴力的な性格になると語っておったの。これは生まれながらにおいて暴力性や犯罪性などが決定しておるということを考えれば、極めて危険な考え方じゃ。
場合によっては選民思想になりかねん」
カエル「まあ、それを言うんは悪役のソフィア博士だけどね」
亀「じゃが、それを明確に否定することはしておらんかったじゃろ? これは危険な思想を持ってきたな、という印象が拭えん。
そういうことがあるからテンプル騎士団はエデンの果実を使って制御したいというのはわかるのじゃが、映画としては明確に否定せねばならん部分じゃとわしは思う」
カエル「原作のゲームがそうなっていたらどうしようも無いかもしれないけれどね」
亀「あとは、やはり気になったのは500年前の人間のDNAをどう調べたのか、それからそんなものを調べたとしても現代の人間ではおよそ25年周期に子供が生まれたとしても20世代も離れておったら、DNAなどなんの意味も無いような気もするがの。
そのような科学的に部分に対するツッコミどころも多くて、物語に没入できなかった印象じゃな」
最後に
カエル「なんか、続編を作りそうな雰囲気だったよねぇ……」
亀「やはりこれだけビックネームで手間暇をかけておるから、続編を作りたいのかもしれんの。
じゃが、これだと次が公開されても見に行くかどうか……非常に迷う作品になってしまったの」
カエル「大規模公開だから観るというだけになってしまいそうだね」
亀「アクションシーンは確かに素晴らしいが、それも全体の……どうじゃろう、1/5ぐらいか? そのためにこの映画を見に行くというのもの。
満足度は決して高くない結果になってしまったわい」
カエル「原作のゲームファンならオススメできるかもしれないけれどね」

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