カエルくん(以下カエル)
「今回はアングリーバードを取り上げるけれど……ちょっとレビューや感想記事を読んだけれど、酷評されているね」
ブログ主(以下主)
「なんでだろうね?
最初に言っておくけれど、今回は結構褒めているよ。相当に面白い作品だったし、エンタメ性という意味では一部のピクサーやディズニー作品よりも上だったかもしれない。
『君の名は。』や『聲の形』とはまた違う面白みがあるし、確かに『ズートピア』の完成度には劣るけれどさ。あれを基準したら、今年公開した映画は実写も含めて全滅だから」
カエル「最近世間のレビュー評価と真逆な感想を書く記事を増えているよね……もしかして炎上してPV数を増やすのを狙っている?」
主「そんなわけあるか! 確かに『ハドソン川の奇跡』とかは映画としてはいいけれど、イーストウッドと考えると微妙とか書いたけれどさ……でもほら『シン・ゴジラ』とかもちゃんと絶賛したから。あくまでレビューはレビューだな」
カエル「……お金とか発生しているの?」
主「発生したらもっと賞賛記事がたくさん増えるねぇ……こんな個人ブログに袖の下を出すなんて奇特な人はいないよ。むしろ、こっちが払っているんだから。当たり前だけど」
カエル「じゃあ、感想記事を始めようか」
1 ネタバレなしの感想
カエル「じゃあネタバレなしの感想から始めるけれど……今作は最初にも言った通り相当面白い作品だったね」
主「そうね。アメリカのアニメ映画に求めるもの……ハチャメチャな演出やキャラクター性、ある種のドラック的な快感というのかな? さらにコメディ演出かとそういうものがすごく面白かったんだよね。
結構劇場でも笑い声が上がっていてさ、子供もそこそこ居たんだけど、賑やかな劇場だったよ」
カエル「90分くらいという短さだったけれど、テンポも相当良かったしね」
主「そうそう。子供向けアニメってあまりにも長すぎると当然ダレてきちゃからさ、長くても100分ちょっと、理想は90分くらいでまとめるのがいいんだよね。
その意味ではスピーディに展開しながら、90分にまとめたことであまりダレることなくお話を展開させたと思う。
まあ、中盤ダレたという意見もわかるけれどね」
カエル「あとは、すごく音楽が良かった!」
主「アニメにおける魅力の一つとして挙がるのが、音楽と絵の融合だよね。それこそディズニーはそれがお家芸で『白雪姫』もそうだけど、ハイホーの歌とか、白雪姫の歌に合わせて鳩が踊るとかさ、音楽と絵を合わせたカットを重視してきているわけだ。
それは現代でも同じで、今大ヒット中の『君の名は。』がこれほどまでに流行った理由も色々あるけれど、RADの音楽と絵が合わさった時の快感が大きいのもその理由の一つだしね」
カエル「それでいうとアップテンポな曲に合わせて踊ったりしてさ、飽きさせない工夫に満ちていたよね!」
主「結構音楽と絵を合わせることって難しいけれど、さすがにアメリカの技術ではお茶の子さいさいってことなのか、簡単に合わせてきた印象だな」
吹き替え声優について
カエル「まずは何と言っても主役の坂上忍だけど……まんま坂上忍のようなキャラクターだったね!」
主「怒ることが個性、しかもそれをコントロールすることが大事というのは、そのまんま坂上忍みたいだった。演技力も大きな違和感は少ないかな。
今作は吹き替え版だとクスリとする小ネタも多くてさ、セリフも日本語にマッチするようにうまく変更されていたりと、中々練られているなぁという印象があった」
カエル「山寺宏一も重要な役で見事にコメディー調に演じたしね。吹き替え版で見ても違和感はないんじゃないの?」
主「個人的には吹き替え版をオススメするよ」
子供を連れて行くべき?
カエル「アニメ映画で大切なことだけど、この作品は子供と一緒に見に行ってもいいし、それこそ……小学生くらいだったら面白さがわかるんじゃないかな?」
主「そうね。基本はアップテンポで明るい場面が続くから、子供も飽きることなく笑いながら楽しめると思う。少しブラックな小ネタだったり、これは感想記事を読んで知ったけれど『シャイニング』をモチーフとしたシーンもあったりと、子供にはわかりづらいネタもあるけれど、基本は子供向けの作品として楽しめる。
もちろん教訓もあるし、悪い印象はないと思う。原作ゲームを知らなくても全然OK。むしろ、自分も知らなかったし」
カエル「一方、大人の方はというと……」
主「結構子供向けと言われているけれど、そこまで子供向けに終始したかなぁ? 結構この作品って重いことをやっているけれど、それがあまりにも軽く、さらりとした演出だから気がつかないのかもね」
以下ネタバレあり
2 スタートの演出
カエル「じゃあスタートから語るけれど、ここはどうだった?」
主「いきなりスピード感があるよね。島をグルリと一周するように画面が回転するんだけどさ、ここでいきなりアクセル全開でスピード感たっぷりに演出してくれている。
さらに、ここからアングリーバードが森の中を駆け回るけれど、ここだけでしっかりと面白いんだよね」
カエル「絵としての面白さに溢れているよね。しかもこの森がこれから舞台になるんだよ、と言うアピールにもなるし」
主「そうそう。そしてその急いだ理由がすぐに明かされるわけだけど、ここで2つ大きな説明をしている。
1つは主人公のレッドの怒りやすさ。ここで大切な主人公の性格の説明をしていると同時に、面白おかしくギャグを交えながらこの作品の方向性の説明をしている。
もう1つは卵の大切さ。この大事なキーアイテムとなる卵というものをここで説明することによって、この後の大騒動の伏線を張りつつ、最後に起こるちょっとしたことの伏線もまた張っているんだよね」
カエル「そして一度暗転して、ゲーム風の紹介が始まるわけだ」
主「そう。ここでレッドの過去とかも少しだけ見せてもらえて、彼がなぜそんな性格になってしまったかという説明をさらりとするけれど、それもそれなりに重い理由なんだけれどさ、湿っぽくすることなく絵だけで説明しちゃう。
ここで湿っぽくする方がドラマ性はあるかもしれないけれど、この破茶滅茶な面白さは削がれちゃうじゃない? だから今作は、あくまでも重い話、重い設定の多くは大きく説明しないで、さっさと説明するか笑いの中にあるんだよね」
面白い鳥社会
カエル「そしてこの鳥社会の描き方になるわけだね」
主「裁判もあって、警察官もいて、交通整理のおばさんもいて、しかも車はないけれど町を歩く鳥にも速度制限があってと、相当面白い絵になっている。
その中でレッドの苛立ちというのは……少しわからないこともないんだよね。無茶振りのようなお客だったり、ノロノロと横断歩道を渡ったりと、少しは経験があるって人も多いんじゃないかな? そんな日常の面白さを鳥社会でマイルドに描きながら、こちらにも共感するようにできているんだよね」
カエル「それはあの集団で円になって、自分のことについて話すという治療法でもあるよね。あの馬鹿馬鹿しさと、毒吐きたくなる気持ち、わかるなぁ」
主「そういう面白さにも溢れているんだよ。ズートピアもそうだったけれど、擬人化した動物の社会というのは見ているだけで面白いものだし。
しかも、この……文明レベルの描き方が相当にバランス良く描かれている。
そして孤独に暮らすレッドの寂しさをジオラマ描写で出すでしょ? あそこでレッドの『口には出さないけれど寂しがっている』という状況をうまく説明しているよ」
3 豚の登場
カエル「いよいよ今作の敵である豚が登場するわけだけど……」
主「こいつらが中々コミカルで面白いけれど、相当ヤバい奴らでさ。我々はメタ的にこいつらが敵で悪いということを知っているけれど、鳥たちは当然知らないわけだ。
ここが相当にブラックなことをしているけれど、それは笑いによってかなりマイルドにされている。子供向けに配慮されているんだよね。多分、ピクサーやディズニーならここを強調すると思う」
カエル「……この豚の登場ってそんなに大きいの?」
主「そうだよ。まずは、急に船でもって鳥の島へと乗り付けるでしょ? そして面白おかしく自己紹介をして、プレゼントも用意して、パーティも開いて、住人のこころを開かせるわけだ。
だけどその裏では恐ろしい計画が進行していた……これって何かに似ていると思わない?」
カエル「なんだろう? 物語としては結構王道だよね」
主「つまりこれは、白人による植民地支配の過程を描いているんだよ。最初は友好的に近づき、贈り物をする。現地人は歓待して、楽しんでいるけれどその間に侵略者はじっと戦力や計画を練っているんだよね。
そのもたらされた知識によって生活は一変するというのは、キリスト教を布教された後と考えてもいい。それまでの生活が一気に変わるんだ。
そして最後には卵を根こそぎ奪われて、町全体を破壊していくでしょ?
これって相当マイルドに描かれているけれど、やっていることは原住民の虐殺なんだよ。そしてそこで得た利益を国に持ち帰って繁栄するということを描いている」
カエル「それだけ重いものだけど、面白おかしくトランポリンなどを使うから気にならなくなっているんだ」
主「その選択は良かったと思うよ。これをもっと重くしたら、鑑賞していて……妙な重さが出ちゃうじゃない? でも原作の爽快感とかも考えたら、そのイメージもあまり付けたくないだろうしさ。
結構子供向けに演出されているようで、それなりに重いことをテーマとして描いていると思うけれどね」
4 怒りの意味とその帰結
カエル「そこから敵の城へと攻撃をするわけだけど……」
主「ここでみんなのリーダーにレッドが選ばれるけれど、ここはさ、ゲームの主題なのかもしれないけれど、怒りをもって攻撃するわけだ。
これもさっきの植民地支配の考えでいくと、そこで根こそぎ奪われた原住民の復讐という意味もあるんだろうね。個性として、欠点としての『怒り』を正しく使うことによってみんなを鼓舞したという意味もある。
つまりさ、欠点の有効活用だよ。
他の鳥もそうでしょ? せっかちな嘘つきだったり、爆発だったりという個性をうまく使った。
その意味ではデカいのを有効活用できなかったことは減点かな? でもあの鳥の描き方も、相当な意味がありそうだけどね。感情が上手く表現できないけれど、芸術センスは溢れているとかさ」
カエル「ゲームとしての個性を、欠点とすることでキャラクター性を演出しつつ、それをこの先の攻撃シーンでゲームと同じように発揮したということね」
主「だから、結構考えられているよね。ゲームをモチーフとするとその特殊能力の使い方が難しい課題になると思うけれど、主人公格の3人の性格に入れてしまうことによって上手く処理している」
怒りの帰結
カエル「そしてラストの対決に向かうわけだけど……ここで師匠格であるマイティーイーグルの登場などもあって、師匠と弟子ものにもなるね。あの鷹がどこまで計算なのかわからないけれど、いいキャラをしていたよね」
主「その前のCGアニメと2Dアニメの切り替えとかも面白かったなぁ。アメリカのアニメ!! って感じがしてさ。
豚の王様と最後の直接対決だけど……ここでこれまの描写が大きな意味を持つ」
カエル「怒りの克服だね」
主「そう。それまでの行為って、ほとんどが怒りが原因であんなことになっているわけだよ。最初の配達の時もそうだし、そのあとの色々な事件もそう。怒りをもって行動をすると、碌なことにならない。
だから最後は怒りを抑えてじっと我慢をしていたんだよね。
そこに光明を見出し、上手くピンチを切り抜けた」
カエル「その意味ではすごく教育的な映画でもあるよね」
主「だから、この作品においては2つのことをきっちりとしているわけだよ。
植民地支配と、怒りの帰結。特に怒りの帰結に関しては、最後の勝利条件に繋がる描写がたくさんされてきたわけだ。これだけあっても『子供向け』の一言でストーリー性を否定するのは……ちょっと納得いかないねぇ」
カエル「最後にきちんと自分の活躍があまり反映されていない像が作られても怒らないという説明も、セリフ付きでされているんだけどね」
主「しかもちゃんとそのあとに成長のご褒美もある。怒りを封じれば、みんなと仲良く暮らせるよって。
ギャグは人によって好き嫌いが分かれるからなんとも言えないけれど、成長もあり、爆発などの外連味もあり、エンタメ性も豊富で、子供への教訓もある……
それを考えると、評価が低いのは不思議だよねぇ。抜群にうまいというわけではないけれどさ、中々練られているのに」
最後に
カエル「というわけでアングリーバードの感想記事だったわけだけど……」
主「やっぱり、この手の映画って日本では少し不利なのかもしれないな」
カエル「……不利というと?」
主「ディズニーやピクサー、ジブリというブランドもなく、しかもオタクアニメじゃないからオタクも見に行かない。多分、映画評論ブログの多くはこの作品を無視しているんじゃないかな?
もちろん町山智浩とか、宇多丸みたいな有名映画好きも語らないだろうし、それを考えると評価される土壌がそもそもないのかもしれないね……」
カエル「興行収入10位だっけ? まあ、アングリーバード自体が日本では大ヒットしているとは言えないしねぇ」
主「日本ではあの手のゲームってあんまり流行らないからなぁ。日本は基本課金前提だし、海外は無料前提でしょ? またこの分野もガラパゴス化するんだろうな」
カエル「それが日本の良さであり、売りを作ってきたけれどね。それこそ、鎖国で植民地支配を防いだみたいなものでさ」
主「……まあ、子供と見に行こうかな? って迷っている親御さんにはオススメだね。少し乱暴な描写もあるけれど『ペット』とかに比べれば少ない方だし。
いい映画だったので、ぜひどうぞ。あ、焼き鳥は買わない方がいいかも?」
カエル「フランクフルトでも食べながら鑑賞が一番かな? もしくは……ソーセージ!」
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