今回はIMAXで上映も始まった『AKIRA』の感想記事になります!
……映画館が閉まってしまったから、ネタがないと嘆くしかないの
カエルくん(以下カエル)
「より正確にいうならば、ネタはいくらでもあるんだけれど、書きたいと思える作品・あるいは集客力のある作品がない、というのが正解なのかな?」
亀爺(以下亀)
「しばらくはテレビアニメ・旧作レビューといくが……この現状ではテレビアニメもいつまで保つかわからんしの」
カエル「コロナショックは甚大だね……特に映画・アニメ界などのエンタメ業界は泣くしかないのかな……」
亀「しばらく耐える日々が続くの。5月から再開してくれればいいが……そうもなりそうもない、のが現状かの。
もう、2020年はなくなって、全部2021年に延期になった、くらいに考えた方がいいかも知れん」
カエル「ネガティブなことも言いたくなるけれど、それでも頑張って記事を書いていきましょう!
旧作や過去記事を手直すチャンスでもあるしね!
というわけで、AKIRAの記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
漫画家の大友克洋が1982年から「ヤングマガジン」で連載した同名コミックを、大友自らが監督を務めて1988年にアニメーション映画化。近未来の東京を舞台に超能力者と暴走族の少年たちや軍隊が繰り広げる戦いを描き、製作期間3年、総製作費7億円という当時としては破格の歳月や労力をつぎ込んで生み出された濃密でハイクオリティなアニメーションが国内外に多くの影響を与えた伝説的な一作。1988年7月、関東に新型爆弾が落とされて第3次世界大戦が勃発。それから31年が過ぎた2019年、東京湾上に築かれた新たな都市=ネオ東京は翌年にオリンピック開催を控え、繁栄を取り戻しつつあった。ある夜、職合訓練校に通う不良少年の金田と仲間の鉄雄らは、閉鎖された高速道路でバイクを走らせていたが、そこで26号と呼ばれる奇妙な男と遭遇する。その男は、軍と対立するゲリラによって、「アキラ」という軍事機密と間違えてラボから連れ出され、軍に追われていた。そこへ現れた軍によって、26号と接触して負傷した鉄雄が連れ去られてしまい……。製作から30年以上を経た2020年、4Kリマスターと音楽監督の山城祥二指揮のもとで行われた5.1ch音源のリミックスを施した「AKIRA 4Kリマスターセット」が20年4月23日にブルーレイ発売。それを受けて同年4月3日から全国のIMAXシアターで4Kリマスター版が劇場公開される。
(映画.comより)
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#AKIRA
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年4月6日
十数年ぶり、劇場では初観賞
こんなに作画面が凄かったか!と改めて実感、やっぱり映画館で真価を発揮する作品よな
1988とい時代を反映し学生運動・ヤンキーブーム・オカルトブームなどを風刺し現代日本に通じる作品と実感
あまり得意なタイプの作品ではないが当時の若者の熱さを体験した pic.twitter.com/GcgHPtg371
伝説になるのも納得の作品じゃな
カエル「もちろん、観たのはこれが初めてではなくて、10年以上前に鑑賞しているんだけれど、その時はポカ〜ンとしたのが、実情なのね。すんごい作品なのはわかるけれど、でも世界で絶賛される理由がわからなかったというか……
今回、劇場で、しかもIMAXで鑑賞したけれど、これほどとは! と非常にビックリしたよ!」
亀「やはり、劇場スケールで観るとその迫力が違うの。
また迫力もさることながら、改めて作画・演出面を中心に観るとここまで圧倒的だったのか……とびっくりする部分もある。なるほど、日本アニメを代表する金字塔にして『攻殻機動隊』や『人狼』などにも続くであろう、大きな流れを作った作品というのも納得の出来じゃ」
カエル「公開されたのが1988年で、7億円以上を注ぎ込んだわけでしょ? さすがバブル全盛期という感じだよね……これだけお金を注ぎ込めば、それだけ伝説的な作品ができるということの証明でもあるのかなぁ」
亀「それと同時に、ワシとしては80年代の流動的なアニメーターの処遇というのが、1つの理由のように思える。後述するが、この作品に関わったスーパーアニメーター達はまだ20代30代の若者であった。
そんな彼らを大きな役割で起用するのにも、歴史や伝統あるスタジオであれば難しいかもしれん。1人1人がスタジオの看板となれる人材であるだけに、自社の作品に関わってほしいと思うじゃろうしの。
これだけ多くの凄腕の若手を集められたのは……まだ、スタジオが今ほど多くなかった時代だからこそなのかもしれん」
カエル「予算にしろ人員にしろ、今では難しい作品なのは間違いなのかなぁ」
ほぼフルアニメーションの作画に圧倒される
正直、うちは作画について本当に理解しているのか? と言われると微妙なところがあるけれど……そんな人でも殴りつけるような、圧倒的な迫力だったね!
言葉は難しいが”映像表現で殴られたような衝撃”じゃったな
亀「今回劇場で鑑賞して改めて感じたのは……なんというか、”忙しない、落ち着きのないアニメ”という印象じゃった。
これは3コマうちが主流の現在のアニメに慣れすぎてしまっていることからくるものかもしれん。
例えば歩くシーンや話すシーンなどは、同じ原画の使い回しが一般化しておるが、今作はそんなものがほとんどない。
2コマうちの映像が圧倒的、ほぼフルアニメーションと言っても過言ではない出来だけに、そこに違和感もあったのかもしれん」
カエル「確か”フルアニメーション”の定義って全編が1コマ、2コマで制作されたアニメーションのことをさすんだよね?
それでいうと、本作は3コマの部分もあったということだから、正確にはフルアニメーションではないにしろ……その圧倒的な迫力が感じられたね」
亀「正直に言えば、近年どんどんとグロテスクな作品が苦手になっていく身である為に、眉を顰めるような描写もあった。
さらに言えば、前半20分ぐらいかの……金田のバイクで走り回るシーン、あそこまでがピークに感じられてしまった作品でもある。
しかし、そんなことはどうでもいいと語るくらいに、リアルな身体表現に魅了された」
伝説的なクリエイターが若い頃の熱さが詰まった作品
何と言っても、現在でも第1線で活躍する伝説的なクリエイターがたくさん起用された作品としても有名だよね!
今では圧倒的な技術力故に、神と呼びたくなるクリエイターたちが勢ぞろいしておるの
カエル「もちろん監督を務めた大友克洋もそうだし、作画監督にはなかむらたかし、作画監督補に森本晃司が起用されているほか、さらに原画を務めた方になると
- 井上俊之
- 沖浦啓之
- うつのみや理
- 木上益治
- 大平晋也
- 梅津泰臣
- 金田伊功
- 大塚伸治
- 高坂希太郎
全員挙げると大変なことになるので、この程度にしておきますが……いやいや、1人起用するだけでも大変な作品を生み出す、スーパーアニメーターばかりだね……」
亀「しかも、何が素晴らしいかと言えば、『AKIRA』制作時には20代、30代と若々しい年頃の方々が多いということじゃな。
スタジオジブリでも活躍するアニメーターが多いが、あちらが東映動画が築き上げた”子供にも安心して見せられる王道のアニメ”を目指しているとすれば、こちらは”大人が熱狂するエログロバイオレンス満載の邪道のアニメ”と言えるかもしれん。
ある意味では荒々しく、物語そのものも……今のワシからすると大絶賛するほど作り込まれているとも思えん。
しかし、その出鱈目とも言える圧倒的なパワー、それが最大限発揮された作品でもあるの。
良くも悪くも、若い。
若さ故の作品と言える」
でもさ、貶しているようでもあるけれど、これが半端に”上手い”作品だったら、ここまでの伝説的な作品にはなっていないよね!
この荒々しさ、若さを最大限発揮したことが、最も重要な作品じゃな
亀「これが中途半端に巧さやまとまりを意識した場合、一気に作品としての魅力は損なわれてしまったであろう。
突き抜けたほどの荒々しさがあるからこそ、多くの人がいまだに称賛する作品になっておる。
それは……ある意味では、若さというものに対する多くの人々の渇望なのかもしれん。
何かを変えてくれるかもしれない。
何かが変わるかもしれない。
そう思うほどの力……それがこの作品には込められているのではないかの?」
作品考察
『AKIRA』も予言できなかった現代
今だからこそ、この映画は観られるべき作品に仕上がっているとも言えるよね……
東京オリンピックの延期、感染症の蔓延、緊急事態宣言も出た2020年……いやはや、リンクすることが多いの
カエル「それ以外でも、多くの場面で今の日本にも共通することが語られているよね。
大佐の『堕落した政治家や資本家に踊ろされてはいかん』とか、他にも『怖くてたまらずに覆い隠した。恥も尊厳も忘れて築き上げてきた文明も科学もかなぐり捨てて……』などの発言とか、ドキッとする部分もあるし……
最近『三島由紀夫VS東大全共闘』を観たけれど、その中でも『だらしない日本と戦う』みたいな話があったけれど、結局、その時代から何も変わっていないというのが明らかになったというか……」
亀「この作品がエポックメイキングだと思うのは学生運動・ヤンキー文化・オカルトという60年代〜90年代に一代ムーブメントを起こしたカルチャーの要素を内包しているところだと思っておる。
今作で印象に残るのが学生運動の要素であり、大友監督は世代的にも全共闘運動に間に合わなかった世代である。どれだけ学生運動に関心があったのかは、少し調べただけなのでピンとこなかったが……しかし、多感な時期に若者達の熱い思いを見てきて、いい方向か、あるいは悪い方向かは別としても、なんらかの影響を受けているはずじゃ」
そのエネルギーが、この映画の中にもあるよね
ただし、1つだけ現実の2019年と大きく変わってしまったものがある
カエル「えっと……スマホがないとか、そういう軽いことではないんだよね?」
亀「もっと根幹に関わる部分じゃな。
つまり”若者の熱さ”じゃよ。
今の時代、金田のような熱い男というのは、あまり一般的な存在ではない。
女子に腕を組まれて『ウゼェ〜んだよ、このアマ!』みたいなことをいう、硬派な不良もいなければ、仲間の為に熱くなる姿も、大人達に歯向かう姿も一般的ではない。
ワシはこの作品をみると、やはり80年代〜90年代前半までの作品という印象を受ける。
まだ戦うべき社会・大人がしっかりとした価値観で存在し、子供や若者がそれに楯突くことで、一種の革命を志すことができた作品と言えるわけじゃからな」
カエル「……正直、今回見直しても『なんか、ノリが合わないなぁ』と思ったけれど、もしかしたら思春期の頃に『涼宮ハルヒの憂鬱』などを迎えて、キョンや……あるいは新海作品のようなキャラクター達、ある種の村上春樹的なモノローグを語る、冷めた青年のようなキャラクター達に多く触れてきたから、とも言えるのかもね……」
AKIRAとは何者なのか?
若者そのものが抱える悩み、あるいは社会の姿が一変してしまったということが、浮き彫りとなった作品でもある
亀「ここで大事になるのが『AKIRAとは何者か?』という問いじゃな」
カエル「えっと……作中では、なんでできる万能の超能力者のような力というような解釈だったけれど……」
亀「ワシはもっと色々なメタファーを含んでおると感じた。
例えば……そうじゃな、全共闘時代で言えば、革命の先にある未来、かの。
あるいは……オウムであれば、革命の先にある理想、とも言えるかもしれん。
一定の世代のやコミュニティの中に存在する、共通化された希望……そんな曖昧なものであるが、誰もが信じてしまう輝かしい未来・あるいは栄光と言えることができるかもしれん」
カエル「……ちょっと哲学的な語り方だね」
亀「受け取り方はいくらでもあるからの。
その力はともすれば宇宙に存在する兵器も破壊し、地理関係を滅ぼすほどの、まさに核に等しい万能の力を示すものじゃ。
……なんだか、こういうとニュータイプに近いのかもしれん」
そう言えば、逆襲のシャアも1988年公開だから、同じ年なんだね
その内包するメッセージ性というのは、共通したものがあるようにも感じられる
亀「ワシが考えてしまうのは、あの大きな隕石をも押し返すニュータイプの力、あるいはAKIRAのような力……SFアニメの代名詞的な作品でありながらも、どこかオカルトのような部分を感じさせる力、というものが、現代でも通用するのだろうか? ということじゃな」
カエル「それこそ、若者達が希望を信じて行動することができた時代に生まれたものだと……?」
亀「というふうにワシは考えておる。
だからこそ、AKIRAというのはあの時代にしかできなかった、その時代性を熱烈に反映した作品でもある。
あの10年以上前であれば……そもそもあのスタッフが集められなかったであろうが、あそこまでのオカルトじみた物語にはならなかった。
10年後であれば、それこそ『EVA』後となり、オカルトじみた描写に対する違和感の声もあったじゃろう。もちろん、AKIRA無くしてEVAが作られたのか? という疑問はあるにしろ、の。
あれは学生運動に乗り遅れた、さらにオウムまでに到るオカルトブームの最中、そして戦うべき敵がまだ存在していた80年代という時代そのものを象徴するような作品である、というのが、ワシの評価となるの」
ガイナックスとの共通点と繋がり
最後に語っておきたいのが『王立宇宙軍 オネアミスの翼』との共通点だね
この2作はセットで語りたくなるの
カエル「やっぱり、ガイナックスメンバーである庵野秀明などの主要スタッフがまだ20代前後と若い頃の作品という共通点、そして1987年公開と年代が近いということもあるのかな?
こちらもバブルだからこそできたアニメ、という趣もあるかなぁ」
亀「この後の『機動警察パトレイバーTHE MOVIE』などにも繋がる、どこかSF的でありながらも、リアルな社会や若者意識を反映する作品であるからの。
ワシとしては気になるのは……どちらも世界を変える、今までの常識を覆すという趣がありながらも、王立はどこか退屈そうな部分にあるかの」
カエル「若者らしい熱さ・情熱というのは、明らかにAKIRAの方が大きいよね」
亀「その辺りがガイナックスとの大きな差なのかもしれんがの。
どちらも主人公が、どちらかというと受動的な印象を受けた。
金田は活発でありながらも、どちらかと言えば巻き込まれ方に主人公である。結局は巻き込まれて、それに反発して行動するだけ、と言えばそういうタイプの主人公像じゃ。
王立の方も主人公はそこまで宇宙開発に興味がない。
どちらも首を突っ込む理由が……女と友情。このあたりはその後のセカイ系談義につながっていくものかもしれんの。
また、王立を見返した時にでもその辺りは触れていくとしようかの」
まとめ
では、この記事のまとめです
- 80年代前後の時代性を反映した作品!
- バブル期と伝説的スタッフの若手時代だからこその熱さがある作品に
- SFでありながらオカルト的な部分に時代性や若者の思いを感じる?
得意な作品ではないが、認めざるを得ない作品じゃな
カエル「今後もしばらくは、このように旧作レビューやテレビアニメの記事が続くと思います。
とりあえずは……『EVA』は最優先かな」
亀「あとは押井守作品と、さらには……そうじゃな、それこそガイナックス作品などもいいかも知れんの。1日も早い平穏な日々を迎えられるように、祈るしかない日々じゃな」