今回は2024年のアニメ業界を映画を中心に興行・ビジネス視点から振り返っていきましょう
さまざまな資料をもとに、今のアニメをめぐるビジネスの流れを一回整理していくぞ
カエルくん(以下カエル)
近年ビジネスとしても注目を集めているアニメ業界を振り返る記事だね
亀爺(以下亀)
こういう記事を積み重ねて5年、10年と続けていけたら、一定の価値があるんじゃろうな
カエル「継続かぁ……うちで1番足りない言葉かもなぁ。
結局いろんな企画を思いつきではじめて、継続できた試しがないし」
亀「まあ、生きるとはそういうものじゃろう。
と、非常に大雑把に大きく括ったところで、分析記事を初めていくかの」
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アニメ映画の興行収入について
2024年の映画興行収入の振り返り
まずは2024年の映画興行収入を確認しましょう
現在発表されているランキングは以下のようになっておる
1:『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』158億円
2:『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』116億4,000万円
3:『キングダム 大将軍の帰還』80億3,000万円
4:『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』63億2,000万円
5:『ラストマイル』59億1,000万円
6:『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』53億6,000万円
6:『インサイド・ヘッド2』53億6,000万円
8:『変な家』50億7,000万円
9:『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』45億4,000万円
10:『怪盗グルーのミニオン超変身』45億3,000万円
2つの記事を統合したランキングを制作しています
ふむふむ……実写洋画が1本も入っていないことが話題だよね
100億円越えは2作じゃが、やはりアニメ・アニメーション映画が強いことが伺えるの
カエル「2023年に発生したハリウッドのストライキの影響もあり、ハリウッド映画の制作が止まっていたという事情もありますが、実写洋画があまりヒットしなかった中で、アニメーションはしっかりとお客さんを獲得したんだね。
日本は独特の映画文化を形成していますが、ハリウッドの状況に左右されづらいという意味では、今回はいい方向に働いただんだね」
亀「洋画頼みであったら、2024年の映画興行は悲惨なものになっていたじゃろうから、ガラパゴスのようじゃが日本の映画文化がいい方向に動いたんじゃな。
このランキングを語る上でわしが大事じゃと思ったのは”作品のIP力”じゃ。
IP”力”というのは正式な用語ではないが、この記事とアニメ興行を語る上では重要なワードなので、覚えていってほしいの」
作品のIP力……つまり原作も含めたシリーズの強さだね
ランキングのうち7作品が、シリーズ知名度が高い作品になっている
カエル「やはりシリーズ作品や、原作知名度が高い作品が興行に強い傾向は変わらないんだね」
亀「その意味ではこのランキングから見える日本の映画興行の独特な部分は、漫画・アニメの多彩なIPがあり、それが国内で強力な知名度を得て、映画興行の数字に結びついている、ということじゃな。
そしてそれが今では海外に輸出しようという流れが活発になってきているわけじゃ。
IPのない単発でヒットするというのが、いかに難しいかがこのランキングからも見受けられる」
最大のサプライズヒットの『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』
この中で最大のサプライズヒットと言えるのは『ハイキュー』じゃろうな
カエル「2024年で100億円越えは2作品ですが、コナンは近年の傾向を見るとかなり上振れして成長している感が強いですが、100億円突破自体は予想どおりという方が多いのではないでしょうか。
それにしても……まさか『ハイキュー』が100億円超えるとは、2024年の正月ごろは誰も信じなかったんじゃないかなぁ」
亀「わしもなんとなく予想じゃが20億円前後が妥当、50億円は難しいと考えておった。
しかし現実は50億どころか100億じゃからな。
これはうちの想像になるが、おそらく製作側も100億までのヒットは予想していなかったのではないじゃろうか」
一応、比較になるか微妙なところですが入場特典として配布された冊子を1つのデータとして参考にしましょう
近年はジャンプアニメ映画を中心に設定資料集や漫画などを入場特典でつけるケースが増えておる
亀「映画の入場者プレゼントの第1弾は200万人に配布予定じゃったが、これは計算しやすいように単価1500円で計算しても30億円という計算じゃ。
参考例を出すと『ONE PIECE FILM RED』が300万部、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』が150万部となっている。
おそらく『ハイキュー』は30億円〜最大でも50億円くらいを目標とし、50億円を達成したら素晴らしいと考えていたのではないじゃろうか」
それが100億円越えだもんね……
原作人気の強さを見せつけた結果じゃな
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』と『ルックバック』
あとは『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』もサプライズヒットといえるじゃろうな
カエル「歴代ガンダム映画で最も興行収入が高かったのは『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の22億円とされています。
SEEDは人気のあるシリーズだし、そこを超えるのは目標としていただろうけれど、まさかダブルスコアをつけるとは!」
亀「ここまで伸びたのは、サプライズヒットと言えるのではないじゃろうか。
特別編も制作されるなど、製作側の嬉しい様子が伝わってくるの」
それから『ルックバック』の20億円越えもサプライズヒットだったね!
話題の原作だったものの、シリーズ作品ではないだけにこのヒットも見事、興行・作品評価ともに高い記録を出した2024年の主役の1作じゃな
『ルックバック』は58分と短尺ながら、ここまでヒットしたことも大きなポイントじゃな
カエル「『ルックバック』が特殊なのは、短尺と特別料金でしょうか。
短尺の映画はヒットしないという通説がありましたが『ルックバック』の場合はヒットしたこともあり、劇場側も上映回数を多くしています。
あとは今作は特別上映で、一律1700円で、割引や劇場の無料招待などが使えないというのも、単価が高くなり興行収入が高くなった要因でしょう」
亀「しかし、当然ながらその条件でも観客が入るという前提が重要じゃ。
パンフレットも1500円と他作品と比較すると高額で、そちらでも相当なグッズ収入があったことが推測できる。
この特別上映による固定料金や高価なパンフレットなどのグッズ収入というのは『閃光のハサウェイ』や『ガールズ&パンツァー 最終章』などでも見受けられるアニメ興行では多い形態じゃが、その強みを最大限に発揮したわけじゃな。
今後の興行形態の変化も予想させる出来事じゃったの」
ほぼ横ばいの作品
興行収入で横ばいだったと思うのはどの作品?
横ばいは『ドラえもん』『しんちゃん』あたりになるかの
カエル「『ドラえもん』は一時期50億円も超えていましたが、コロナ禍以降は少し落ちてしまい、2024年の『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』は43.1億円なので映画興行自体は非常にいい成績ですが、シリーズとしては横ばいといった形でしょうか。
『しんちゃん』シリーズは『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』が歴代最高興行収入である25億円を突破し、素晴らしい興行結果でした。
ただ例年安定して20億円を超える数字を叩き出しているので、微増と判断して横ばいと表現しています」
しんちゃん映画の興行で語るべきは公開時期の変化でしょう
『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』→ 2020年9月公開
『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』 → 2021年7月公開
『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』 → 2022年4月公開
『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』→ 2023年8月公開
『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』 → 2024年8月公開
夏に公開時期を変更することによって、興行収入を増やしているの
カエル「興行時期がいかに大事なのかがわかる結果となっています。
特に夏は一昔前は『ポケモン』がありましたが、現在は夏の定番アニメ映画がないので、その穴にハマった形でしょうか」
『ドラえもん』『クレしん』はシリーズへの信頼感が生み出した安定と言えるじゃろう
亀「興行成績は立派であり、まさにここまでの積み重ねの結果じゃろう。
しかし、特に『クレしん』はここ2年の映画への評価は辛口なものが目立つ。
その信頼感をあてにして、ここで胡座をかくとガタッと興行成績が落ちてしまう可能性もあるだけに、しっかりと評価の高い作品を生み出して欲しいの」
意外な結果になった『ヒロアカ』
意外でいうと『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』はもう少し伸びるかなぁ、と思っていたかなぁ
原作最終話との連動もあったので、こちらもわしは40〜50億を予想しておった
カエル「先に挙げたように入場者特典漫画も150万部と考えると、1500円換算で22.5億円、まあキッズも多くなるシリーズと考えると、36億円は妥当な結果なのかなぁ」
亀「前作の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』が34.3億円だけに、2024年は最終話との連動もあってもう少し伸びるかと思ったが、微増で終わったの。
一方で全世界でも興行が期待できるだけに、現状では世界興行収入を報道した記事を見つけられなかったが、国内の興行の結果だけで語るのは早計なのかもしれんの」
特筆したい作品
それ以外のアニメ作品で特筆したいのは?
1つは『劇場版ブルーロック EPISODE 凪』の18億円かの
今では日本のサッカー漫画・アニメIPとしても人気トップクラスであり、スポーツ作品としても相当人気が高いコンテンツだよね
亀「本作はある種スピンオフということで参考記録かもしれんが、ここで『ブルーロック』シリーズの人気を測る上で、興行収入という数字の1つの基準ができたのではないかの。
同じような形じゃが、意外と伸びなかったと思ったのは……『劇場版ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』が15億円前後と認識しているが、スマホゲームも非常に人気であり、作品も文句なしであったために、十分な結果であるが、もう少し上にいくかと思っておったの」
2024年のアニメ映画業界の変化
大手による相次ぐ経営統合
次は2024年のアニメ業界の変化ということだけれど……
目についたのは、大手によるアニメ制作スタジオなどの買収じゃな
カエル「元々、株などを保有していたり、協力関係にあったりと様々な背景がありますが、思い出せる範囲では以下のニュースが目立ちました」
もっと大きなところでは、ソニーがKADOKAWAの買収を行うのでは? という話題もあったよね
かなりアニメ業界の再編が進んできている印象じゃな
カエル「2023年だと日テレによるジブリ買収なども大きな話題となりました。
大手によるアニメスタジオや関連会社の買収、あるいは提携などが進み、業界全体の再編が進んでいます。
その中でソニーと東宝が2大巨頭で確立して感もあるね」
亀「もちろん、バンダイナムコホールディングスなども活発じゃが、どこも『アニメでビジネスする』ことを目指し、業界再編が進んでいる。
製作(作品で商売をする)と制作(作品を作る)は明確に異なるが、製作側が有力な制作スタジオを欲しがっている構図は続いているの」
アニメ”制作”サイドと”製作”サイドの思惑
この業界再編はいいことなの?
良い悪いというよりも、そうせざるを得ないというのが実情じゃろうな
カエル「2024年の8月に公開された帝国データバンクの『「アニメ制作会社」動向調査2024』では、アニメ制作市場が初の3000億円市場を突破という記事が出ています」
URLはこちら
https://www.tdb.co.jp/report/industry/j4_7almgnr8w/
また「アニメ産業レポート2024」では2023年のアニメ市場が3兆円を超えたことも報告している
カエル「市場規模が3兆円とは日本全体で見たら非常に大きいというわけではありませんが、何よりも特筆すべきは成長性です。同記事では14.3%増となっていますが、これだけ成長していく分野はあまりなく、しかも日本が世界相手にリードできる分野として注目されています」
亀「そのような事情もあり、国・大企業もアニメ業界の振興に力を入れておるわけじゃな。
ここで2つのデータを統合して考えると、製作する側、つまりアニメビジネスの市場規模は3兆円超えあるのに対して、制作、つまり作り手の市場はその1/10に留まる、ということじゃな」
アニメビジネスの構造
つまり、アニメを作る人と、それで商売する人の差が激しいと
構造的な問題じゃな
カエル「この構造を変えようと頑張っている制作側の人もたくさんいますが……それも簡単ではないと」
亀「制作側が会社としてできることで、わしが思いつくのは以下の解決じゃな。
- 大手と資本・業務提携していく
- 権利を取得し、独立していく
そして今は、1の動きが多く見受けられるんだね
カエル「大手の中に入って、安定的な経営を目指すのが1つの手、ということじゃな。
あるいは独立したまま経営を磨き、多くの権利を獲得していく。この成功例は上場企業としてはIG・コーポレーション(プロダクションIG、WIT STUDIOなど)だよね。株式保有上位企業では電通グループ、日本テレビがいるけれど、筆頭株主は19%保有している創業者の石川社長だよね」
亀「あとは資本関係はちょっとわからないけれど、MAPPAが製作委員会を作らず100%出資で『チェンソーマン』を製作するなど、アニメーションビジネスに積極的じゃな。
ufotableも自ら製作委員会に出資するなど権利を確保してビジネスに参加することに積極的じゃし、あとは京アニも現在は不明じゃが、原作をKAエスマ文庫として確保したり、ショップを設立するなど独立した動きを見せておる」
権利を有する元請になる重要性
独立していくには高い実力と人気のあるスタジオにならないと難しいから、大手に入るというのも1つの手なんだね
大きな目で見ればアニメ製作を取り巻く業界再編によって、効率化が進んでいるとも言えるわけじゃしな
カエル「大手の子会社になる以外では、どんな手段があるの?」
亀「先の『「アニメ制作市場」動向調査 2024』の4Pに、以下の文書がある」
また、自社IPを有さない小規模な元請制作では収入増の恩恵に乏しく、IP保有の有無による収益力の格差拡大が進行している。
結局、強力なIPを手に入れて、その権利を有することが大事なわけじゃな
カエル「この動向調査では3Pに『ただ、平均売上高は「元請・グロス請」で増加が顕著な一方、下請となる「専門スタジオ」では小幅の伸びにとどまるなど、制作態様によって差がみられた。』と記述があるように、市場が増えてみんなウハウハ、というわけではないということだね」
亀「市場の増加はコストの増大という側面もある。海外への外注も円安があり、コスト増じゃからの。そこをカバーする収入として、IPがあれば制作費の増額にも対応できるが、そうでないスタジオはより厳しい環境になる。
IPやリスクをとって製作委員会に出資できるスタジオ=権利を有する存在が、今後独立していける可能性が高まるということじゃろうな」
東宝に見る、大手の戦略
東宝の戦略
次は東宝の戦略を参考にしながら、大手の戦略について考えていきましょう
ここでは東宝のIR(投資家・株主に対する企業からの説明資料)を参考にしよう
URLはこちら
色々書かれているが、ChatGPTの要約では以下のようになるかの
ChatGPTによる要約
東宝株式会社のアニメ事業は、映画・演劇・不動産に続く「第4の柱」に位置付けられています。資料では市場成長を背景に、IP最大化の総合力やプロデュース力を強調し、オリジナル作品、グローバル展開、ゲーム化を通じた収益拡大を目指す戦略が示されています。また、北米での自社配給強化や配信プラットフォームとの連携も含まれます。
東宝株式会社は、以下の具体的な方法でアニメ事業を強化しています:
- オリジナル作品の制作: 独自IPの開発と制作スタジオの連携を強化。
- グローバル展開: 海外子会社(北米、シンガポール)を通じて市場拡大。
- ゲーム化戦略: 人気アニメIPを活用したゲーム展開。
- 配信プラットフォーム連携: 動画配信の普及に対応し、収益源を多様化。
- 北米配給強化: GKIDSの完全子会社化で現地市場に直接進出。
これらにより、年間100億円から営業利益拡大(P30)を目指しています。
ふむふむ……このようなことが書かれているのね
これらは大手の大資本だからこそできることじゃな
カエル「確かにグローバル展開とかをアニメスタジオ単位でやろうと思っても、難しいところがあるよね……」
亀「1のオリジナルアニメ制作・IPの強化とアニメの安定的な制作のためにサイエンスSARUなどのアニメスタジオを買収したり、また他のスタジオとの事業提携を確実に進めている。
そして作品のプロデュース側では川村元気が代表を務めるSTORY株式会社があるわけじゃな」
海外、特に北米へのアプローチの強化ということで、2024年の10月にGKIDSを買収しているわけだね
SONY系列がCrunchyrollで海外への供給を強めているのと同じじゃな
カエル「海外へのアプローチの手段はNetflix、Amazonプライムなどの海外の動画配信サイトだけではなく、自社でもしっかりと確保するのが重要だということだね」
亀「東宝は作品プロデュースや制作スタジオなどの制作面だけでなく、映画の配給、自社での興行、配信も行っており、入り口から出口まで揃えているのが強みじゃな。
大企業という繋がりではSONYの場合はゲーム分野に強く、KADOKAWAの株式取得により魅力的な原作も確保しているので、この2社はアニメ製作(アニメビジネス)で重要な立ち位置になることは間違いないの」
アニメビジネスで唯一の再現性が高いヒット作の生み方
それで……アニメビジネスって再現性が高いヒットが難しいと思うけれど、そこについてはどう思うの?
このIRを見ているとワシは以下のように解釈した
- 魅力的な原作を
- 派手な映像を含めしっかりと映像化し
- 大規模興行でヒットを生む
……え、なんか当たり前な気がする
これが今、明らかになっている唯一のヒット作の生み方ではないかの
亀「実際に東宝アニメーションが製作した作品を簡単に振り返ろう」
- スパイファミリー
- 呪術廻戦
- 葬送のフリーレン
- 薬屋のひとりごと
- 怪獣8号
- 僕のヒーローアカデミア
IRに乗っている作品を中心に本当にざっくりと振り返るけれど、確かにこれはそうそうたるメンツだね……
亀「もちろん、東宝アニメーションとはいえヒット作ばかりではないし、相対的にはそこまで話題になっていない作品も手掛けている。
しかし上記の作品たちはしっかりとヒットしているし、また上記の3要素、つまり”魅力的な原作””高い映像化能力””大規模な興行・TV放送”という方式で話題になっているわけじゃな。
TV放送でも『葬送のフリーレン』などは日テレと連携して、金曜ロードショーで2時間(4話)放映するなど、大規模なアプローチを行なっておる」
確かにこの作品ラインナップを見ると、その法則は間違えてないって話なのかな
この方法以外に、なかなかヒット作を生むことは難しいのじゃろうな
亀「その意味では、東宝アニメーションの戦略は”アニメ化によって原作人気のブースト”なのじゃな。
それは大手だからこそできる戦略といえるじゃろうな」
オリジナル映画のヒット作を生み出すためには?
だけれどさ、東宝といえばアニメで、しかもそのオリジナル大作は失敗している気がするんだよなぁ
<p
>2024年でいうと『きみの色』も『ふれる。』も、興行的にはふるわなかったからの
カエル「となると、原作が魅力的でヒットしていたら上記の法則も使えるけれど、そうでない時にどうするか、という問題なのかなぁ」
亀「ここは難しいの。
ここは考え方次第じゃが、ワシは”下手な鉄砲数打ちゃ当たる”という結論になってしまうのでは、と考えている」
結局数で勝負なの?
少なくとも、山田尚子監督にしろ超平和バスターズトリオにしろ、実績は十分なわけじゃしの
カエル「近年の東宝からオリジナルアニメ映画を発表した監督を考えても、全く”下手な鉄砲”ではなかったわけだしね。
むしろスナイパーライフルか、大砲ってくらいのメンバーばかりで。
それで興行的に苦しむならば、やはりヒットには数しかない、と」
亀「例えば実写映画でも単体で見たら『BLEACH』『ジョジョの奇妙な冒険』などはコケた漫画原作実写映画として記憶されている。しかしそれらの挑戦がなければ『キングダム』シリーズのヒットもなかったかもしれん。
そういうふうにヒットする作品や監督が出てくるまで、ガチャを引き続けるというのも1つの手じゃな」
力技のようだけれど、TVアニメのヒット作も原作側(漫画側)で大量のガチャを回して、ヒットしなかった作品の上に立っていると考えれば一緒なのかなぁ
一応、東宝は別のレーベルも用意しているがの
カエル「2024年から新設された小中規模の配給レーベル『TOHO NEXT』だね。
こちらでは2025年は『ベルサイユのばら』、『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』などが該当します」
こちらがさまざまな挑戦の場となるんじゃろうな
カエル「『TOHO NEXT』が次世代への挑戦の場であり、もしかしたらオリジナルアニメなども発表する場になるのかもね。
そしてそこで有望な企画が大規模公開の東宝アニメーションなどでさらにそれを盛り上げるという戦略に感じるね」
亀「この辺りはさすが劇場を多く持つ東宝といったところじゃろう。
こういった形で大手のアニメ戦略も見受けられるの」
東宝の弱点
ちなみに、逆に東宝の弱点はどこになるの?
これはわしの考えじゃが……旧来の興行スタイルや宣伝方法から脱却が難しいことかもしれんな
カエル「大手だからこそできる大規模な宣伝などのスタイルに対して、大手だからこそできないことがあるってこと?」
亀「これはうちがVTuberファンということもあるが、ファンメイドで盛り上げるシステム、つまりUGCが難しいというところじゃろうな。
UGCとは以前にうちでVTuber論を書いた時に詳しくまとめているが、今ならば”配信の切り抜き動画”とか、あるいは”自発的なTikTokなどのダンス動画”などがそれに該当するじゃろう」
ファンがコンテンツを二次創作で作り上げて、一次作品や人物を盛り上げることだよね
ただ、これは著作権管理などが難しかったりするのじゃな
亀「例えば『きみの色』では、ファンを広げて話題性を作ろうとして、ダンス動画を上げている。残念ながらほとんど話題にならなかったが、こういう試みがあったの」
ダンス動画などでバズを引き起こそうとしたが「大きな資本でネタを投下する」という、旧来の宣伝スタイルから脱却ができておらん
カエル「つまり、インフルエンサーなどが話題や情報を投下して、それがヒットするIGCで止まってしまって、その次の段階、つまり観客やファンが作り出すUGCまでは発展していかないってことだね」
亀「これは特にオリジナルアニメ映画では難しいということもあるのじゃろう。
2024年でバズったダンスなどの動画を見ても、アーティストやキャラクターの継続的な活動があってこそ出てくるヒットが多い。いきなり突発的に流行るというのは、ネコミームなど一部のネットミームになるが、それこそ”下手な鉄砲数打ちゃ当たる”の結果にあるもので狙ってバズるものではない。
またファンは商業的なバズ狙いを敏感に察知する。
ネット戦略は空中戦と言われがちじゃが、むしろその逆で、継続的な活動を何年も重ねてバズを引き起こすものでもあるわけじゃな」
著作権管理とかも厳格にすると、ファンからの発信が止まってしまうわけだしねぇ
作品を広めてくれるファンをどのように獲得していくのか、というのも1つの課題になっていくわけじゃな
作品ごとのファンは生まれるが、横のつながりが生まれづらい
となると、作品ごとのファンは生まれるけれど、それは作品ごとのファンで止まってしまうわけなのかなぁ
そのファンの輪をどのように生み出すのか、ということじゃな
カエル「上記のTOHOアニメーションの代表作も、それら1つ1つはとても話題になったけれど『ジャンプ作品』とかのレーベルで見ることはあっても『TOHOアニメーション』として見ているわけではないもんね」
亀「制作スタジオのファン、つまり京アニファンやufotable、MAPPAファンは生まれるのじゃが、製作のファンはなかなか生まれない。作品のファンは生まれても『TOHOアニメーション』のファンは生まれにくいわけじゃな。
この辺りは大手だからこそ難しいものかもしれん。
しかし旧来のTVなどのメディアで宣伝しまくって話題性を作って興行に繋げる、というのは、もう通用しない時代になり始めているのではないかの」
最後に〜大作映画の宣伝に対する苦言〜
というわけで、長い2024年のアニメ業界の興行分析記事もここまでとなります
最後に苦言を呈しよう
カエル「え? 何?」
亀「もう、実写俳優を主演キャラクターの声優にする宣伝方法はやめた方がいいのではないか」
そこに言及するんだねぇ
何か意味があるとは、わしは思えん
亀「わしとしては芸能人声優=悪ではないと考えている。それらの味があるからこそ、生まれる作品もあるじゃろう。
しかし……単純に宣伝目的でマスコミに宣伝してもらうための方法で、作品そのものを傷つけるような真似は本末転倒じゃ。
肝心の作品が傷がついてしまうし、洋画の吹き替えと違って字幕と吹き替えの選択も基本的になくなってしまう」
う〜ん……アニメアニメしている作品なのに、声だけ実写っぽい演技を見せられても……という作品もあるよね
作品を推したくても、それができなくなってしまいかねない
カエル「うちも映画ライター業やブログ記事を書いていますが、正直、演技が邪魔をしてほめられない作品もいくつもありました。
やるならば、ディズニー/ピクサー作品くらい、しっかりと役者を選んで、作品の魅力を上乗せするくらいにしてほしいってことだね」
亀「先にも挙げたが『ファンは商業的なバズ狙いを敏感に察知』するものじゃ。つまり、芸能人声優というだけで忌避感を抱く人も少なからずいる。
そしてその手法が宣伝として優れているのであれば、そういう作品はすべからく成功しているはずであるが、アニメ映画では芸能人声優を起用したところで、爆死の山じゃ。
それはヒットに繋がらないし、なんのエビデンスもない行為だとわしは考えている。
先にも言ったが……そういったトリッキーな空中戦ではなく、地道な地上戦で何年も実績を積み重ねて信頼を勝ち取っていく時代に変化していると、わしは思うがの」
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