物語る亀

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物語愛好者の雑文

本多孝好 FINE DAYSの考察

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE たまには小説についても語ってみようかなと思い立って何の本にしようか迷っていたが、私が特に好きな現代作家の1人である本多孝好の青春小説について語ってみようと思う。 ちなみに本作品は短編であり、FINE DAYS…

通勤途中に小説を〜短編小説 『見えないもの』

今週のお題「卒業」 三月に入ると一時期に比べて、寒さもだいぶ和らいできた。つい一月前は雨が降るたびに『雪が』と騒いでいた天気予報も、今は花粉と桜の開花予想に話題が集中している。 終業式も終わり、職員室とは別に用意された準備室に戻ると老齢の教…

通勤途中に小説を〜短編小説 『あい傘』

雨が降ってきた。 ちょっと見栄を張って入ったルノアールは、大きな商店の立ち並ぶアーケード通りの二階にあって、大きな窓に面した席から下を覗くと、雨粒を避けようと走る人の姿があった。心なしか、小降りにもかかわらず雨の中で濡れ鼠になることを厭わず…

有川浩の「新品を買ってほしい」という提言に関して反論する

こんな記事を見つけたので、思うところを書いていく。 (消えちゃいましたので代わりの記事をはります) blog.monogatarukame.net

通勤途中に小説を〜短編小説 桜花〜

西高東低の冬の寒気も少しずつ去っていき、少し前まで身を切らんばかりに冷えた風が、ほのかに暖かくなってきた。今年は暖冬だったから冬の間も暖かい日が何日も続いたが、それでも春の匂いの訪れはようやく、といったところだろうか。 このくらいの気温にな…

ましろのおと 弘前大会編までをまとめて感想(8巻〜15巻まで)

ここ最近発売された15巻にて一つの区切りがついたので、8巻から15巻まで(竹の華入店から弘前大会まで)を読み直した。その感想や気になった部分をあげていく。 絵が上手いだけでなく、これだけ内容の深い世界観を描き出せるから本作はやはり素晴らしい作品…

通勤途中に小説を〜エンジェルキッス〜

お題 初夏 女 下駄 雲ひとつ無い青空にぽっかりと存在を強く主張する太陽が周囲を焼きつける。まだまだ日差しは弱いというが、暑さは日に日に増していき、すでに長袖はタンスの奥にしまわれて久しい。 アパートを出ると熱気が俺を襲う。一歩足を踏み出すだけ…

パンプキン・シザーズ 20巻の感想 面白い思想と細やかな作り

月刊少年マガジンで連載中のパンプキン・シザーズの新刊が発売されたのでそのレビューみたいなものを書いていきたい。 本当は今月の月マガレビューでも書こうと思っていたのだが、川原正敏作品が新連載に伴う準備のため休載(むしろ始まってもいない)、ポー…

通勤途中に小説を〜短編小説 『星』

気がつくと周囲は夕闇に閉ざされて、ほんの少し先さえも、光のしっぽすら見えない中、俺は草むらに横になっていた。別に遭難したとかいう大事な話ではなく、町外れの森の中を、真っ昼間から陽の光を木々で避けながら、ずっと草を敷き布団にしていたのだ。 大…

通勤途中に小説を〜短編小説 『幽霊』

線香の灰や枯れた花が一掃され、ぺんぺん草一つ生えないまでにキレイに片つけられたのは少し前のことなのに、今では夏に供えられた花がそのままに風に身を揺らしている。枯れススキは風情があるが、枯れ仏花は恐怖心を煽るだけだ。それだけに墓場には相応し…

物語を作りたい人が始めにやるべきこと

個人的物語論 今回は小説が上手くなるためにやるべきことについて語っていこう。 いきなりだが、ある当たり前のような常識を覆すような言葉から言わせてもらう。 「物語を作りたければ、まずその手にある本や映画を見てはいけない」