うまい焼肉屋がある、と風の噂に聴いたから、ボクはバイクを走らせた。
たかが焼肉のために冬の北風が体を強く煽る中、バイクで片道2時間の距離を走り抜け、名前も聞いたことがないような片田舎に来るのはさすがに酔狂が過ぎると自分でも思う。だけれど、それでもこの店の焼肉は一度食べたら忘れられないという評判があちらこちらから流れていたとあっては、寒空の下でも行くのが筋というものだろう。ただ、不思議なことにグルメブログ仲間やライターの友人に聞いても、誰からも実際に食べたという話は聞けなかった。
幻の焼肉屋……きっとこの店を紹介するときは、そんな煽り文句が週刊誌のグルメ特集でデカデカと表記されるのだろう。だが、実際に食べてみれば田舎にしては品質がいいレベルとか、あるいは老夫婦が営んでいて不定期な営業で品質がバラつく、なんてことになってしまい、肩透かしなことも多い。それでも不発に終わるとしても、うまい肉があると聞けば即座に向かうのが、我々の性分というものだ。
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