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物語る亀

ネタバレありの物語批評

8月15日なので、戦争について少しだけ。

雑考

思うことがあって一度取り下げましたが、再掲載します。

 

亀爺(以下亀)

「今日は8月15日だから、戦争について少しくらい語ってみてもいいのではないかの?」

ブログ主(以下主)

「戦争ね……そんなに好きな話じゃないけれどね」

 

亀「そりゃ、戦争なんて好む人間などそうはおらん。物語だけで十分じゃ」

主「個人的には今日4回目のシンゴジラを見てきたから、それで終わりにしたい思いもあるけれど……

 じゃあ、炎上覚悟で個人的戦争論について書いていくよ」

亀「……なんでそんなに天邪鬼なんだかわからんの」

 

 

 1 私は『戦争』が嫌いである

亀「なんじゃ、この小タイトルは? 至極当たり前のことではないか?」

主「……寺山修司がさ、『書を捨てよ、町へ出よう』の中で、『誰もが戦争好きの社会』という小タイトルで書いているんだけど『原爆反対に反対なのだ』っていう論調に、すごく納得したんだよね」

亀「……何? 主は原爆賛成派なのか!?」

 

 

主「寺山はこう書いている」

 

『原爆反対に名を借りて、人間の醜悪を診たがる心理が、大衆の中に根深くあるかぎり、ぼくは歴史なんて信じないし、原爆反対のキャンペーンに与することはできないだろう。

 夏が来て、原爆記念号が企画され、ケロイドと死のアメリカの禿鷹の特別号が発売されても、ただの一冊も売れなかった、という時代が訪れたときにだけ、本当にベトナム戦争は終わりに近づくのだろう。

 どう思いますか、戦争好きの親父さん』

 

主「なんだかさ、これわかるんだよね。個人的には戦争を語るというときに、大きなバイアスがかかるんだよ。まるで、政府や世間の公式発表があって、それに従わないと叩かれるような、そんな『空気』や『風潮』が見えるんだよね」

亀「……? どういうことじゃ?」

 

 

『頑張らない』という自由

主「例えば、最近だとシン・ゴジラに関する話題が議論を呼んでいるわけだ。それこそ、作品から離れた政治的意見も多々ある。『あの一致団結した姿に気持ち悪さを感じる』『あれこそ虚構ではないか』とかいう意見。

 個人的にはシン・ゴジラと政治を絡めて欲しくないけれど、この気持ちはわかるんだよね。それって、自分が東日本大震災で思っていたことと同じだから」

 

亀「……東日本大震災と?」

主「そう。『がんばろう、日本』とか『絆』とかさ。そういう一致団結したムードが気持ち悪かった。なんだろう、『戦時中の日本もこんな空気だったんだろうなぁ』って思ったんだよね」

亀「東日本大震災と戦争を一緒にしてはいかんじゃろう。天災と人災の違いはある。戦争は防げるんじゃ」

 

主「そういう意見もあると思う。だけど、『国難に当たって国民が一致団結する』という意味では一緒でしょ? 『被災者のことを思えば、これくらいの我慢は当然』というのと、『戦地に赴く兵隊を思えば、これくらいの我慢は当然』という空気感の違いってそれほどないように思う。

 あの時、日本中が自粛ムードになったわけだよね。でもさ、あの震災で関係ない人は宴会やって、飯食って金を使えば良かったんだよ。そのお釣りを募金箱に入れてさ、また呑みに行って良かった。

 頑張れない人は頑張らなくていいし、無理だったらそのまま寝てていい。それは被災者とか、被災者じゃないとか関係なくさ。余力がある人が、少しずつお金を出したり、力を出せばいい。

 だけど、『頑張ろう、日本』とか、『絆』のシュプレヒコールの元、日本人がまとまらなければいけない空気感が形成されたことが、『気持ち悪かった』んだよね。正しいとは思うけれど」

亀「あれだけの規模の未曾有の大震災だから、当然じゃな」

 

 

戦争について自由な意見を言えるだろうか?

主「戦争に関しても同じことを思う。別にさ、偏っててもいいと思うんだよ。右派だろうが、左派だろうがさ。原爆に対する広島、長崎の立場は当然だし、被害国としての日本の立場は当然、理解できる。だけど、それと同時に加害国であるアメリカの立場も理解できる。

 原爆だけじゃない、戦争に関するいろいろなことが立場によって意見が変わるんだよ。あの戦争はそれだけ大規模だったし、世界の一大事だったからさ。

 じゃあ、今は公平な視点で語ることができるの?」

 

亀「……公平な視点というのは幻想じゃ。中立で絶対的に正しい意見などないの」

主「まあ、そうなんだけど。

 坂口安吾が『あの時代は理想郷だった』と語っているんだよね。みんな同じ服を着て区別がつかず、男がほとんどおらず、街灯は暗く、犯罪の起こる条件は揃っていた。だけど、盗みの一つもあまり起きず、戸締りもせずに眠っていたって坂口安吾 堕落論の中で書いている。

 そこに真実の美はないが、これほど壮観な見世物もない、ってね。

『私は一人の馬鹿であった。最も無邪気に戦争と戯れていた』と書いているんだよ。

 でも、今は東京大空襲を語るとき、そんなことは言ってはいけないという空気感がある。坂口安吾の堕落論って、国語の教科書に載る作品じゃない」

 

亀「それは安吾が特殊というだけで、多くの人間は嘆き悲しんだであろうに」

主「そうだと思うけれど、でも『あの偉大なる破壊の前で、ケラケラと笑う16,17の娘』がいたことも事実じゃないの? その事実は無視するの? って話でさ」

亀「……何が言いたいんじゃ?」

 

中立的な意見とは

主「だから、『原爆は恐ろしい、戦争は怖い』という意見は当然あっていい。だけど、それと同じように『アメリカ側の原爆、戦争下の生活や娯楽』を描いてもいいんじゃないかってこと。

 クリント・イーストウッドは『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』という、両者の視点に立った作品を作り上げたわけじゃない。この、もう片方の意見が日本には欠けていると思う。

 政治的な偏りはあっていい。大事なのは、右に傾いた意見があれば、左に傾いた意見もあるということを学ぶこと。右が正しいとか、左が正しいとか、そういうことではないんだよね。それが中立的な意見というものじゃない?

 だけど、この国のマスコミは……それから世間の空気感は、一度固まった意見を覆すような意見を言うと、反感を持たれてしまうように感じるんだよね」

 

亀「ふむ……では、そのためにはどうすればいいのかの?」

主「個人的には、早く第二次世界大戦を『歴史』にしたい。今は『政治』であり、まだ生きている案件だよ。でもさ、歴史にしないと中立的に語ることは難しい。

 例えば関ヶ原の合戦において、徳川家康と石田三成のどちらが正義なの? どちらが正しくて、どちらが間違っていたの?

 倒幕派と幕府は、どちらが正しくて、どちらが間違っていたの?

 そんなの決められるわけがないじゃない。戦争ってそういうもんで、勝ったほうが正しいとなる。勝てば官軍なんだからさ、日本が間違っていたとか、アメリカが原因を作ったとかさ、そういうことじゃないと思う。

 『反戦』ではなく、主義も主張も関係ない『知戦』こそが大事なんじゃないの? ってね」

 

瀬戸内寂聴と五木寛之

主「瀬戸内寂聴と五木寛之の戦争体験で、面白い話がある」

 

 瀬戸内寂聴の場合

 中国からの引き上げ時に、アメリカ兵が女を要求した。みんなが困って黙っていると、一人のダンサーが「私が行くわ」と言ってアメリカ兵についていき、犠牲になって帰ってきた。

 その姿に感激して、周囲の人はみんな拝んで感謝したという。

出典

絶望に効くクスリ vol.13―One on one (ヤングサンデーコミックススペシャル)

 

 

 五木寛之の場合

 引き上げができず、困り果てている時にソ連兵が「女を出せ」と言って、水商売風の女性であったり、未亡人を連れて行った。

 そしてボロボロになって帰ってきたその人を見た親たちが子供達に「あれは何の病気があるかわからないから、近いじゃダメよ」と叱って遠ざけて、白い目を向けていた。

 

出典 

http://www.yomiuri.co.jp/matome/archive/20150801-OYT8T50003.html

 

 

 

主「この二つの話は、どちらも真実だと思うし、どちらも人間らしい反応だよ。だけど、どちらを体験したかによって、その後の戦争観や生き方は全く変わってしまう。

 戦争って、それだけ語るのが難しいし、多様的なんだよね。だから、一面的に日本軍が間違っている、正しいとか、アメリカがどうとかって語れない。

 だから、その両方の意見を聞かなければいけないけれど……そこに『感情』が入らないようにするには、後100年くらいかかるのかな……」

亀「難しい問題じゃの……」

 

まとめ

主「……とりとめのない意見になったけれど、まとめるとさ、

『戦争ってそんなに簡単に語れるものではなし、結論をつけれられるものじゃない』って当たり前のことが言いたいんだよ。

 だからこそ、主義や主張に縛られず、『色々な人の、色々な戦争』を語り、知ることが一番大事だと思う」

 

亀「結局、主の意見は玉虫色ってことかの」

主「まあそうね。左派の言い分も理解できるし、右派の言い分も理解できるし。何が正しいとか、あまり言いたくないなぁ、ってこと。

 もっと、多様性のある自由な意見があってもいいんじゃない? 第二次世界大戦なんて、どこを紐解いても悲惨なことしかないんだから。戦争ダメ絶対って結論になるだろうし。

 戦争をしないためにどうするかまでは、語るつもりはないけれど」

亀「今回は真面目に終えるかの」