物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『先生! …好きになってもいいですか?』感想 広瀬すずと生田斗真の魅力がたくさん! 

 娘が、朝帰りをしてきた。

 

 いや、別にわかってはいるのだ。もう既に20歳を超えている大学生の女性であって子供ではないし、昨日は雨とはいえハロウィンだった。きっと至るところでパーティなどの催し物があったことだろうし、友達との付き合いもある。その中で少しくらい遅くなることだってあるだろう。

 私だって同じくらいの年頃の時は、大学の同級生たちと集まって朝まで酒を飲みながら、麻雀をしていることはよくあった。

 よく、妻にも怒られる。

『あなたは子供に甘すぎる』と。

 それは自分でも重々承知しているのだが……どうしても女の子ということもあり、そして遅くに生まれた子供ということもあって、甘やかしてしまうところがある。

 

『お父さんは楽よね、甘やかすだけなんだから……躾するのはいつも母親で、嫌われるのも私だけ』

 そう妻に愚痴を言われるのだが、夫を差し置いて2人で外にご飯を食べに行くなどして、寂しい思いをさせているのはどちらだというのか。そう反論するとやれ『帰りが遅いから』だの『女の好みと違う』だの『味オンチ』だのと言われるから、黙っていることにする。私が黙っていれば妻も上機嫌で娘も色々と心置きなく楽しめるだろう。

 

 だが、やはり初めての朝帰りはやはりダメージが大きかった。

 とりあえず外に出て適当にブラブラする。どこを歩いていてもハロウィン一色で、お化けやモンスターの類だけでなく映画やアニメのキャラクター、特撮ヒーローに扮した人がたくさんいて、それはそれで面白かった。小さな子供を連れた家族連れは、娘に不思議の国のアリスや白雪姫などの格好をさせながら買い物に興じている。

 今、娘が小さかったら私も同じことをさせたのかなぁ……

 どうしても娘のことが頭から離れずに、少しでも考えなくていいようにと映画館へと足を運んだ。

 

 今日は、私のもう1人の娘に会いに行こう。

 

 

 

 

映画「先生! 、、、好きになってもいいですか?」オリジナル・サウンドトラック

 

作品紹介・あらすじ

 

 実写映画化も果たした『俺物語!!』などの作者である河原和音原作の少女漫画を生田斗真、広瀬すずの主演で実写化映画化した作品。

 監督は『アオハライド』『僕は明日、昨日の君に恋をする』などの若者向け恋愛映画を中心に活躍する三木孝浩、脚本には『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

心が叫びたがっているんだ。』などのアニメ作品を中心に注目を浴びる岡田麿里。

 

 弓道部に所属する女子高生・島田響(広瀬すず)は生真面目な性格で生徒から少し評判の悪い世界史教師の伊藤先生(生田斗真)とひょんなことから近づくことになる。伊藤はただ生真面目なだけでなく、生徒思いの一面もあり惹かれていくのだが、生徒と教師という関係性は当然のことながら禁断の恋であり……

 

 

 

 


映画 『先生! 、、、好きになってもいいですか?』本予告【HD】2017年10月28日公開

 

 

1 感想

 

 この手の若者向け恋愛映画は娘と一緒に見に来たこともあるが、やはりどうしても派手な演出や脚本で私みたいなおじさんには受け入れがたいところがある。正直にそう言ってしまうと娘には『じゃあ寅さんでも見てれば!』なんて怒られてしまうから、あまり言わないようにはしているが。

 しかし、この映画はそうでもないようだ。派手な音やリアクションはそこまで多くなく、文字演出などのギャグのような描写もほとんどない。

 とにかく、若者向けの映画……『スイーツ映画』ではなくて『恋愛映画』を撮ろうという気概に溢れているのはよく伝わってきた。

 

 教師と生徒か……

 昔ながらの王道の設定だろう。私の学生時代は男女共学ではあったが、やはり年上の先生に憧れている女子生徒はたくさんいた。そして男子生徒もまた、大人の先生に憧れていたものだ。

 誰と誰が付き合っている……なんて話は少しずつ聞こえてきて、それが不純異性交遊だ、なんて騒がれたりもしながらも、実はそうガミガミと叱っていた先生が生徒と結婚した時はズッコケたものだ。かと思えば、不自然なタイミングで人気のあった若い女性の先生が学校に来なくなったりと、色々あった。生徒との恋愛関係がバレたのだろうという噂は流れたが、それが真実かどうかはわからない。

 ただ、その噂を流していた男子生徒はその前に女性教師に告白して、当然のようにふられていた。その腹いせなのか、もしくは他に付き合っている生徒がいたことを知っていたのかは……今となっては調べようもない。

 

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時代を代表するヒロイン、広瀬すず
(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会

 

広瀬すずについて

 

 私が場違いだともわかっていながらもこの映画を1人で観に来たのは『もう1人の娘』に会うためだった。

 広瀬すず。

 現代を代表する女優であり、最も輝きを放つ女性の1人でもある。

 初めて会ったのは多くの観客と同じ是枝裕和監督の『海街diary』で、天真爛漫な性格ながらも、複雑な事情を抱える中学生の役を見事に演じていた。その時、ちょうど娘も部活だ、勉強だと忙しくなっていき、そして手が離れ始めたこともあってどこか寂しい思いを抱えていたのかもしれない。

 その心の隙間を埋めてくれたのが彼女だった。

 

海街diary

 

 もちろん、私の娘の方がかわいい。

 しかしいつの間にか私の中で彼女の存在は大きくなっていき、それは『私の理想の娘』像の1つになっていた。だから彼女が出演する映画やドラマは積極的に観るようにしている。ただし、妻や娘にはバレないように細心の注意を払いながら……だ。さすがに娘より年下の女の子のファンです、なんて言ったらどんな罵倒がとんでくるかわからない。

 昨年『怒り』で天真爛漫で人懐っこい性格の少女が変化する姿を見せつけれられてからは、また見方が変わった。海辺で歩く彼女を見たときに、ああ、きっとこの娘は大女優になるのだろうと確信した。

 その後は『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』では、持ち前の元気いっぱいの女の子を演じかと思えば『三度目の殺人』では殺人の被害者の娘という重い役を演じきった。

 

 そして今作である。

 広瀬すずは世界一の美少女だ。

 もちろん、それは映画だから当たり前だ。そうなるように監督も撮っているのだろう。

 だけれど、この作品の彼女は元気いっぱいの女の子ではなくて、ちょっと奥手な、おとなしい女の子である。これほどの様々な表情を見せるカメレオンのような女優が……しかも若い女優が演技しているということは驚愕なんじゃないか?

 『三度目の殺人』の時は私の娘が辛い目にあっているような気がして見ていられないところもあったが、今作ではもう1人の娘に会いに行ったはずなのに、さらに遠いところに行ってしまったような気すらしてくる。

 

 

 

生田斗真について

 

 そして生田斗真である。

 かっこいい。何しろかっこいい。

 彼もジャニーズ事務所所属なのでイケメンなのはわかりきっていたが、今年はジャニーズらしからの演技を披露している。『彼らが本気で編むときは、』ではLGBTを抱えて、心は女性だが体は男性という難しい役を熱演していて、絶賛の声が相次いでいる。

 そして本作でもその演技力は健在だ。

 高橋一生みたい……といえば今時の若者らしいのだろうが、私にはなぜか坂口安吾を連想してしまった。きっと髪型とメガネのせいだろう。

 

 かっこいい。何しろかっこいい。

 本当にそれ以外の感想が出てこないのである。

 こんな教師が学校にいたら、そりゃどの女子生徒もクラクラしてしまうだろう。そういえば昔、友人の高校教師も語っていたが、ただでさえこの年頃の女子というのは年上の男性に憧れているものだ。女の子の方が成長が少しだけ早いから、同い年の男なんてつまらないように見えてしまう。

 そして恋愛経験が乏しい彼女達にとっては大人の男性というのはみんなカッコよく見えてしまうもの……らしい。さすがにそれは失礼だというものだろうが、毎年100人、200人以上の女生徒が入学してくるのだから、1人くらいは先生を好きになる子もいるのだろう。ただ、その好かれる対象の教師は毎日女子高生と会っていると、あまりにも子供すぎて魅力はない、らしい。

 まあ、そうだろう。私も10代、20代前半の時ならともかく、30代にもなった頃には10代と付き合うのはさすがに……と思っていた。

 

 話を戻して生田斗真である。

 これは少女漫画に良くあるパターンなのだろう。娘の読んでいるマンガやアニメを少し調べると、こういうぶっきらぼうな男が女の子と交流を持つというのはよく話だった。

 私からすると単にいけ好かない男である場合も多かったが、この先生は確かに生徒のことも考えていて、ぶっきらぼうなだけでいい先生だと思う。

 確かに、これは惹かれるのも無理はない。

 

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ジャニーズ事務所の演技派、生田斗真

(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会

 

その他の役者について

 

 しかし、この2人以外の役者について語ることは特にない。

 私の娘の……失礼、広瀬すずの友人である森川葵は演技が過剰なように見えるし、他の男性陣も取り立てて目を引くところがない。

 極め付けは比嘉愛未演じる、中島先生である。

 私には大人の教師とも、魅力あふれる女性とも思えなかった。ただの言葉のきつい、女性の嫌なところを濃縮しただけの嫌な女である。

 そういう役なのかもしれない。その意味ではとてもうまく演じているのかもしれない。ただ、その言葉の端々、所作の端々から見下しているような雰囲気を感じて不快になる。もしもこの会話を狙って書いたのであれば、この脚本家は相当にうまい。かなり女の嫌なところを知り尽くしているとしか思えない。

 

 それにしても、みんな先生が好き過ぎないだろうか? 

 いくら高校生といえども、ここまで生徒が教師に恋愛感情を抱くものだろうか?

 しかも森本レオ以外は大人のおじさん教師が出てこないのも違和感になってしまう。結局はキラキラ感をアピールするための構成なのだろうが、ここまで若い人だけだと何らかの作為的なものを感じてしまう……いや、フィクションだから作為的なのは当たり前だが。

 どうにも主演の2人が魅力的すぎて、他の役者の良さが一向に伝わってこない作品になってしまっているように思う。

 

 

 

 

2 恋愛の壁

 

 そもそもである。

 本作は恋愛作品として重大な欠陥があるとしか思えないのだ。

 教師と生徒の恋愛というのは、そこまで悪いことなのだろうか?

 私の時代ですら、普通に教師と生徒が恋愛しているという話はあった。先ほども言ったが噂レベルであればよく聞く話である。もちろん、倫理的に問題があるのはわかるが、犯罪ではない。それで学校を転校することになったとしても、そこまで好きならば別に構わないのではないだろうか?

 何しろ、まだ先生も若いのである。恋愛のハードルになっているとは思えない。

 

 仮に娘が先生を結婚相手として連れてきたら……と想像してみた。

 それが近藤真彦のような、いい年をしてチャラチャラした男であれば私も激怒するであろう。小日向文世のような娘よりも私に年齢の近い、いかにもおじさんであっても困惑する。

 だが、生田斗真である。

 もちろん、最初は反対するかもしれない。少しは怒鳴りつけるかもしれない。教師が生徒に……! なんてことを言うだろう。だが1時間もしたら渋々折れて、娘を幸せにしてくれと言う自分の姿がすぐに思い浮かぶのである。

 何を反対する理由があるのだろうか?

 もちろん、生徒に手を出したというのは悪いこともかもしれないが、しっかりとした職を持ち、しかも公務員である。ホテルに行ったわけでもない。それも生真面目な好青年であり、そして若い。むしろ願ってもない相手である。

 まあ、数年は我慢してだな、卒業してからゆっくりと考えれば……とか言って適当にやり過ごすに決まっている。

  

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森川葵が1番浮いていたかなぁ……

(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会

 

様々な恋愛

 

 私だって何十年も生きてきて、色々な人を見てきた。その中には『こいつだけは絶対に結婚相手にしてはいけない』という人間だってたくさんいた。

 

 人にお金を借りておいて返さずに遊びほうけるやつ。

 会社勤務の裏では風俗店のボーイを務めているやつ。

 次々と女を変えては、その都度適当な嘘を撒き散らすやつ。

 

 そんな男はいくらでもいる。『恋愛をしちゃいけない相手なんていない!』というが、世の中はそんなやつもたくさんいるのだ。

 

 特に10月に入ってからの恋愛映画はレベルが高くて脳性麻痺を患った障害者と風俗嬢の恋愛を描いた『パーフェクト・レボリューション』に、同じ週に公開された大作SF映画の描きだした恋愛はもっととてつもない愛を語っている。

 それに比べれば今作のタブーや恋愛というのは、それこそ子供のチャチな恋愛であって、特に何かを思わせるようなものではないのだ。

 

 そこまで考えてふと思い出した。

 私の学生時代はどうだったのだろうか?

 ここまで熱中した恋愛なんて人生でも経験したことがない。妻ともお見合いのようなものだったし、お互いに好きな異性がいたわけでもない。いや、妻に関しては本心はわからないが、少なくともそのような話は聞いたことがない。

 だが、それでも私は幸せだった。

 家庭を持ち、娘に恵まれて、こうやって20歳になるまでしっかりと育て上げた。休日には1人で映画館に来るような経済的、時間的余裕もあって、家庭みんながそれなりの幸せだと言える。それでいいではないか。

 それに比べたら、教師と生徒の恋愛がどうとかなんてことは実は重要ではなくて、その愛をいかに持続させるか、そしてお互いを幸せにするか、そのためにどのように努力するのか……そのことが一番重要なことではないか。

 

 結局、私もただのおじさんなのだな。

 

 

 

最後に

 

 映画館を出ると人混みはさらに激しくなっていて、これ以上どこかをウロつきまわるということは難しそうだった。さすがに1日に2本観ることも躊躇われたし、そろそろ夕方にもなるので帰らないと妻にドヤされてしまう。

 とりあえず駅前で適当に団子でも買って帰る。昔はケーキなどの洋菓子を好んで食べていた妻と娘だったが、最近はカロリーを気にしているのか、脂質の多い洋菓子はあまり好まれなくなり、次第に買って帰ると怒るようになってしまった。それでも文句を言いながらバクバクと食べるのだから、よくわからない。でもそれを指摘するとまた怒られるし、手ぶらで帰るとまた何か言われそうだから、私はいつも比較的カロリーの低い和菓子を買って帰ることにする。

 

 家に入ると妻は買い出しに出ていて、娘はまだ寝ているようだった。もう夕方になるのに……と思いながらも、昨日朝帰りということは夜通し遊んでいたのだろうから、仕方ない。私も同じくらいの歳では似たような生活を送っていたし。

 テーブルの上に和菓子をおくと、そこにはビニール袋が置かれていた。どうやら中身は本のようだ。

 さて、なんだろうか? 私は買った覚えもないし……と思い中を開けてみると、男のアニメキャラクターが描かれたイラスト集のようだった。

 

「ちょっと! 触んないでよ!」

 ふと振り返ると髪がボサボサにはねている娘が、眠気まなこでこちらをじっとにらみつけていた。

「せっかく買った限定品なんだから! 昨日のオールナイト上映以外で売ってないんだからね!」

 そう言うと私からひったくり、そのまま自分の部屋の扉を大きな音を立てながら勢いよく閉める。

 ……オールナイトかぁ。そういえば昔よく行ったなぁ。今ではああいうアニメもオールナイトで上映するような時代なのか。

 

 どうやらすずちゃんと違って娘が私の元から離れるのはまだ先らしい。

 ただ、なんとなく今の物言いは思うところがあるので、買ってきた和菓子は一人で全部食べてやった。

 妻と娘から怒られたのは、言うまでもない。

 

 

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映画「先生! 、、、好きになってもいいですか?」オリジナル・サウンドトラック

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