物語る亀

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物語愛好者の雑文

真田丸 18話感想と脚本構成を分析する

 このブログでは久々の真田丸の考察と感想を挙げる。1クール目の節目である13話で書いて以来なので、5話ほど書いていないことになるのか。

 別に不精だったわけではなく、実は少しばかり脚本構成に驚愕したのがその理由でもある。(それはこれから書いていく)

 

 相変わらずコメディーとシリアスの混ぜ合わせ方が非常にうまいなぁと感心する。

 

 

 

 前回の記事はこちら

 

blog.monogatarukame.net

 

 1 13話以降の脚本構成

 基本的に真田丸もその他の連続ドラマやアニメと変わらず、3話ごとに山場を迎える脚本構成をしていた。10〜13話は少し変則的にして4話構成になっていたが、これは13話で大きな見せ場である第一次上田合戦を魅せるようにしたかったものと理解することができる。

 

 では13話で脚本構成が崩れた後、どうなるのかなぁと期待しながら本作を鑑賞していた。(大河ドラマの脚本構成などを考えるのはこれが初めてなので、少しワクワクしていた)

 その結果が以下のとおりである。

 

14、15話 秀吉家中の表の顔と結束の強さをみせる

16〜18話 真田家上洛話と秀吉家中の裏の顔

 

 となっている。

 まさかここで2話で一区切りとして再び3の倍数で脚本構成をしてくるとは思っていなかったので、よく計算された作品なのだなぁと感心してしまった。

 

豊臣家中と真田家中の対比

 この18話などは豊臣家中と真田家中の一家としての対比効果がうまく使われていた。

 特に家内が茶々という毒婦の存在もあって瓦解していく豊臣と、何だかんだ言いつつも明治まで存続する真田の家の『家族の話』としての真田丸の対比構造がうまくいっているので、弱い主人公サイドの「そこまで大きくはなくても家族仲がいい姿」はより魅力的に映るのではないだろうか?

 でもこれだけ歪な家中であることによって、強大な権力を誇った豊臣がいかに瓦解していくのか、この数話の描写だけでもわかるようで非常に楽しみである。

 

 

2 伏線いっぱい

 真田家を扱うにあたり、最も重要なシーンは3つあって、第一次上田合戦と関ヶ原に伴う第二次上田合戦、そして大坂の陣である。

 どんな脚本家やプロデューサーであってもこの3つの戦を真田のメインに添えるであろうし、それは特に不思議な話ではないのだが、問題があるとすればこの3つの戦の期間が相当離れていることであろう。

 

 第一次上田合戦が1585年、第二次上田合戦が1600年、大坂の陣が1614年から1615年である。この間、綺麗に15年離れているわけである。

 ということは見せ場を作るにはいいものの、その間の15年が真田のみを扱った場合、非常に地味になってしまう。そのため、秀吉と信繁を接近させて、この後の大阪につながる伏線を張り巡らせるという案は、王道かもしれないがうまいと感心させられた。

 

 このパートは先ほどもあげた通り真田一家と豊臣一家の対比効果も上手く見せているのだけれども、それと同様に伏線が多い。

 例えば先週(17話)における秀吉が家康に小芝居を願ったシーンというのは、今後の関ヶ原のことを考えれば、ここでうまくやる術を学んだという伏線なのだろう。

 また、今週でいうと昌幸が「この城をどう攻める?」と訊いていたが、当時の常識からしてこれほどの巨大な城を攻めるということは、おそらく考えもしなかったことではないだろうか? 

 この時点でこの質問があるからこそ、大坂の陣での活躍につながるのだろう。

 

 細かい部分で見ればもっと多くの伏線が散りばめられており、そこを解明させていくだけでも面白い。

 

 

3 何と言っても役者の演技

 真田丸の最大の見所の一つは、特長的な役者の演技力にあるのは疑う余地がない。

 特に大阪編では誰もが絶賛する、小日向文世の豊臣秀吉が秀逸だろう。

 一応初登場自体は光秀を打ち破った時にしていたが、しっかりと描写されたのは15話からだったが、やはり升の話もそうだが、私が恐ろしさを感じたのは神経衰弱の場面だった。

 これにより信繁の記憶力や機転を図りつつ、茶々と内通する男を見つけ出し、そして最後には苛立ち交じりに札を全て混ぜてしまう。この狡猾な男の面と、さらに子供のような面を併せ持つ描写として、うまい描写だった。

 その後の17話での全く目が笑わずに笑顔のまま話し、さらにそのまま「うるさい」と一喝する様子などは、天下人としての底知れない恐怖を植え付けてくれる。

 今回の小日向文世の秀吉像は、歴史物に疎い人間からすると、天下人としての秀吉の今後のスタンダードになるような気すらしてくる。

 

 それから石田三成がいい。

 旧来も頭の固い融通の利かない男として描かれる場面も多いのだが、やはり今作も似たような三成像となっている。しかし、その描かれ方も言葉は悪いし、融通はきかないのだが、言葉の裏を読むと結構優しいことを言ってくれているツンデレ男としても読み取れる。

 最近石田三成の再評価が進んでいるように思うのだが、今作の実は熱くて優しい男という三成像もまた面白いものである。加藤清正や福島正則の気持ちもよくわかるが、大谷吉継などが慕ったという理由もわかるので、いいキャラクターになっている。

 

 ここまで見てきても相当練られているし、伏線も効いた面白い作品に仕上がっている。先が楽しみな作品になっている。

 

 

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