物語る亀

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物語愛好者の雑文

ふらいんぐうぃっち 4話までの感想とちょっとした分析

 ふらいんぐうぃっちの4話までの感想と、ちょっとした分析をしていきたい。

 個人的春アニメランキング(1話)の中ではオススメ度が最高の5であり、他には今期とは言い難いガンダムUCの2作しかないので、私の中では今期No,1アニメの評価になっている。

 いつもはブログでは物語の展開とか、その構造などを分析しているのであるが、本作はその物語の展開というものが一切ないので語ることに向いていないのだが、4話を中心にその空気感や日常感の作り方を考えていきたい。

 

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 1 原作の膨らませ方のうまさ

 まずはこの記事を紹介したい。 

otapol.jp

 

 この話にある通り、原作は最新刊の4巻が発売したばかりであり、アニメ化のタイミングとしては些か早い気がする。私も原作が好きだったし、いつかはアニメ化するだろうなと思っていたが、比較的刊行速度が遅い別冊少年マガジンでそこまでページ数も多い作品ではないから、まあ東京オリンピックまではいかないにしても、あと数年はかかるだろうと思っていた。

 しかし、まさかの4巻でアニメ化とあって難しさもあると思う。

 

 確かにストーリーがない1話完結作品なので、いつでもアニメ化できるし、どこで切っても違和感はない。オリジナルストーリーも入れやすいだろうが、登場キャラクター数も多くない中でどう膨らませるかというのが課題になると思う。

 

 では4話のみに注目してみた場合、いつもと同じくAパートに1話目(原作8話、2巻に収録)Bパートに2話目(原作9話)となっているが、問題提起に対する解決編であり、台詞量も展開も詰め込まれているBパートと違い、Aパートは台詞量も少なくアニメ化した時にオリジナル展開を入れないと間延びしてしまうだろう。

 

 4話におけるオリジナルパートというのは千夏が色々な食べ物を買うシーンであるが(りんご飴などを買うシーンは原作にない)ここでのキャラクターの魅せ方がうまい。

「お祭りで食べる綿あめのロマン、お風呂でアイス食べるのと同じだよ」という台詞等に代表されるように、千夏などのキャラクター性や可愛らしさを出しながらも、原作と比べても違和感がないような脚本が作られている。

 

 先のインタビュー記事で女性脚本家にお任せしたいということで赤尾でこを起用したあるが、3話の江夏由結、4話の福田裕子と女性の柔らかい言葉などが出ているのではないだろうか。

 この辺りもこの空気感を作り出すのに一役買っているだろう。

 

 

2 独特の空気感

 漫画のみにかかわらず、小説などのような紙媒体において難しいのが、『空気感の醸し出し方』だったりする。音楽なども流れないし、読む速度も人によって変わる中で、文章や絵のみで表現しなければならない紙媒体においてどのように表現するか。

 

 よく小説を読む際に『行間を読め』という言葉があるが、本当に大切な例えば登場人物の心情や、作者の込めた思い、メインテーマというものは作中にハッキリと出て来ない場合も多い。それを直接表現することもできるのだが、そうするとその作品自体が軽くなってしまう。

(彼女は悲しんだ、と書くよりも彼女は涙を零して顔をそっと背けたと書く方が情緒がある)

 

 ふらいんぐうぃっちの原作でもその空気感の作り方はうまいのだが、それはこのような漫画的表現に代表される。

 まずはこのシーンを見て欲しい。

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 ふらいんぐうぃっち2巻 P55

  

 これは4話でいうとAパートの最後の部分であるが、空気感の作り方としてうまいと思うのは、似たようなコマを連続で見せることによって、止まった時間を表現していると同時に、ラストで神社の背景描写を入れることで背景が単なる背景以上の意味合いをもたせている。

  

 一番その特徴を生かしている作品は『ぼのぼの』だろう。基本的にコマ数の少ない漫画であるが、時にはただ歩くだけのコマが何コマも続いており、幼い頃にこれはコピーではないかと疑って読んだのだが、背景の細かい部分が違っていたりと、きちんと書いていることがわかった。

 このような描写を行うことで、独特のノホホン、ゆっくりな時間が感じられるだろう。

 

 では漫画であればこういった表現ができるものの、実際に時間が流れているアニメでおいてどのようにこの独特の空気感を表現するのだろうか?

 そこが気になっていたのだが、時折4話においては弘前城だったり、空、桜などの背景描写を描き出すことで、独特の空気感に繋がっているように思う。この背景美術の美しさなどもこの作品の魅力の一つだが、おそらくこの絵があるかないかということは大きな違いがあるのだろう。

 

 あとは細かい部分の作り方も好きで、ハムスターのアルと猫のチトが出会ったシーンなども実はアルが震えていたりするなどの演出も魅力を高めている。

 

 

声優について

 最後に声優に関して少し言及していくが、本作の声優陣はお母さん役の井上喜久子など一部のキャストを除いて、あまり有名でない若手声優が担当している。

 最近はおそ松さんなどの大ヒットを見てもわかる通り、担当声優の知名度や人気は作品にも直結するものであるが、今作はあえてアニメ的ではない(アニメの癖が少ない)声優陣を選んだという印象がある。

 

 特に圭役の菅原慎介の演技は少しばかり不満の声も聞くのだが、私は非常に作品世界にもキャラクターにもあっているし、この独特の空気感を作り出す一因になっていると思う。

 

 日常系アニメの空気感というのもは表現しづらいものであろうが、私は今作は非常にうまくいっていると考えている。

 もっと早い時間でゆったりと見たいと思わせてくれる作品だ。

 これから先も濃いキャラクターが続々登場するので、楽しみにしていきたい。

 

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