物語る亀

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物語愛好者の雑文

クレイジージャーニー〜丸山ゴンザレス『メキシコ麻薬戦争』5/5放送〜

 クレイジージャーニーの感想記事をあげるが……

 なんというか、今回はとんでもない回だった……毎週毎週言っているが、どんどんクレイジー度が上がっているし、ゴンザレス回史上でも番組史上でもNo1の危険度を伴う取材だったのではないだろうか……

 

 ちなみに、私は今回この記事をあげるに渡り、少しだけカルテルやメキシコについて調べたのだが、閲覧注意の山だったので調べないほうがいい。人間はどこまで残虐になれるのか、という見本市のような状況だったので、おそらくこれを読んでいるあなたが想像する最悪をさらに超えるものだった、とだけ言っておく。

 

blog.monogatarukame.net

 先のアメリカ大統領選挙の予備選にてドナルド・トランプが掲げた公約の一つに『メキシコとの国境に壁を築く』というものがあった。

 これに対して「もはや国境に壁を築く時代ではない」とバチカンが発言するなどの騒動にもなったが、今回の話を聞けば確かにその発言が支持を強く集める要因になるというのもわかる。

 メキシコとの国境は場所によってはまるで獣避けのような有刺鉄線が巻かれているだけの場所もあり、大人が足を上げるだけで簡単に乗り越えられる場所もある。そんな状況ではアメリカ側からしたらたまったものではない。

(つまりそれだけ簡単に麻薬の密輸ができるということでもある)

 

 

 メキシコの詳しい状況はこちらから。 

(全てゴンザレスの記事)

ameblo.jp

gendai.ismedia.jp

zasshi.news.yahoo.co.jp

 先の大統領選挙ではトランプが共和党の指名権を獲得したが、これにより民主主義の危うさも露呈する形となった。ゴリゴリの保守派であり、将来のビジョンが見えないような人物であっても、民衆が支持をすれば権力者になれてしまうという歪な構造が見えてくる。日本も有名人が出馬して当選すると『タレント候補』などと言われて持て囃されるのだから、似たようなものかもしれない。

 しかし、この状況がまだ幸せだということが今回の取材でよくわかった。

 

 民主主義というのは『多数派の民衆が選ぶ相手が賢者である』という思想の元に成り立つ制度である。アメリカなどのヨーロッパ各国はこのやり方が最も優れた政治だとして世界中に輸出し、その結果が中東の混乱なのはご存知の通りだ。

 だが、その多数派の民衆が犯罪組織に加担し、恐れているということを考慮していない。

 極端な話、大きな犯罪組織のトップやその息がかかった人間が、まっとうな理由で国家元首などの重要なポジションに立ちうるということを、今回のメキシコの話は教えてくれたのではないだろうか?

(カルテル撲滅を訴えた市長や弁護士などは拉致された後、殺害され、無残な姿で発見される事件も発生している)

 

 麻薬カルテル、自警団、政府の三者の三つ巴の状況が紹介されていたが、治安が安定しない頃は警察や軍だけでは治安を維持できないため、このような地元の有力者の力を当てにすることはママにあることだ。

 日本においても警察とヤクザが共同で治安を維持していたという話もあるし、いまだに裏社会の問題が発生した時は警察が動いてくれないからと、裏社会の人間を当てにするケースはままある。

 

 では自警団という組織は良いのか、悪いのかというと、武装した市民が麻薬カルテルを追っ払っているという見方もできるのだが、そのような武装した市民が力を持つと単なる犯罪組織となって暴走を始めるというのもよくある話である。(コロンビア等そのような例は沢山ある)

 そのために他の記事を読むところによると、現在のメキシコ大統領は大量の死者や残忍な事件を生み出してしまう麻薬カルテルとの戦いよりも、それよりも少しは相手取りやすい自警団の摘発に乗り出したようだ。

blog.goo.ne.jp

 特に地下に潜り、仲間ですら信用できないカルテルよりも、顔や名前がある程度分かっている自警団の方が相手としてやりやすいのだろう。本来ならば警察機構が果たさなければいけない役割を担えないことが、このような混乱する状況により拍車をかけているのだろう。

 それならば彼らを警察組織に統合するということも案としてはありなように思うのだが、このような状況では金銭的な事情などもあってそんな簡単な話ではないのかもしれない。

 

 しかし、本当にゴンザレスは勇敢を通り越して無謀にすら思える。車が炎上していたシーンなど通訳の女性がグッタリしていたのが印象的だった。おそらくここまでいくと感覚が麻痺しているのだろうが、今までのスラム街などが、それぞれのやり方ではあるが治安の維持された平和な場所だったのかよく分かる回となった。

 

 

 今回はクレイジージャーニー史上最もクレイジーな回だったのは間違いないが、同時に番組の危うさというか、どこまでできるのかというのも心配になる回だった。これ以上はもう無理だろうな……死体まで写しているし、あまりに刺激が強すぎた。

 でも戦争などを扱うジャーナリストからするとこれでもまだまだなのかもしれないな。 

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