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物語る亀

ネタバレありの物語批評

ちはやふる31巻 感想 粘れ!

 このブログは立ち上げてまだ2か月なのだが、ちはやふるの記事は2回目。えらい早いスパンで出版したなぁと思ったら、映画公開に合わせてきたか。当たり前といえばそうなのだが、このスパンで出してくるのは少し驚いた。

 

 さて、まずは前回書いた30巻の感想を紹介しよう

 

blog.monogatarukame.net

  私はこの記事で大変失礼なことを書いた。

 改めて言わせて欲しい。

 

 末次由紀は天才である

 

 もう一度言う

 末次由紀は天才である

 

  以下ネタバレあり

 1 衝撃の結末

 私は前回の記事のラストをこう締めた。

 

『さて、気になる決勝の相手だが、どちらになるのだろうか。

 王道でいけば新率いる藤岡東だが、そろそろヒョロくんに活躍の場が欲しいので北央も……どちらにしても相手にして圧倒的な相手ではないから、強者との対決は準決勝の富士崎が最後になりそうな気がする。

 ちはやふるは簡単に勝たないところがまた魅力でもあったが、作者が3年の団体戦を負けさせることができるか。ここからの盛り上がりに期待したい。』

 

 この言葉には言外にこんな意味も含まれていた。

『まあ、どうせ3年だし最後の団体戦だから優勝させるでしょう。その相手はやっぱり新になるのだろうけれども、太一のいない瑞沢と新設みたいな藤岡東じゃ2年の頃のような盛り上がりはないよね。さて、ここからどう盛り上げるのか楽しみにしていますか』

 というお手並み拝見のような、非常に上から目線のような思いも含まれていた。

 

 すみませんでした!!

 

 ちはやふるという作品は、いつも勝つべきところ、盛り上がるポイントで負けてきた漫画だ。ちはやは確かに天才だが、そんな天才の努力とはいぼくによってライバルたちをより魅力的にして、咬ませにせずにここまでやってきた。

 なぜだか、私はそのことを忘れていたのだ。いや、忘れていたというよりも、無意識のうちに「3年の全国大会編では優勝するだろう」と思い込んでいた。

 

 「3対2での富士崎高校の勝利です」

 私はこのシーンを電車の中で読んでいたが、思わず座席で大きなため息をついて1度本をしまってしまった。

 涙がこみ上げてくるのだ。

 こんな展開が許されるのかと。

 

 連覇の夢も賭けた、新との決勝という最高の舞台ではなく、それを3位決定戦という舞台に持ってきた。そして逃してしまった最高の舞台に上がるのは、最強のライバル富士崎と、最高のライバル北央学園である。

 

 こんな展開ある!?

 でも、本当に最高の結果を持ってきた!

 

 

2 誰1人として使い捨てにされない登場キャラクターたち

 この巻の見せ場はもう、本当に色々あって、例えば瑞沢の敗北というのもその1つではあるが、やはり特筆したいのは『ヒョロくん』 と『太一の母』の存在だろう。

 ここまでこの2人というのは、咬ませだったり太一の夢を邪魔する悪役として描かれていた。しかし、この2人の思いというのは、実はどの登場人物よりも強いものであった。

 ヒョロくんは団体戦勝利のために。

 母は太一の将来のために。

 そのために全力を傾けてきただけだ。

 

 まずはヒョロくんに焦点を当てる。

 ヒョロくんは小学校からのライバルであり、それまで何度も何度も戦う姿が表されてきたが、もはやその実力は新、千早はおろか、太一、肉まんくんにも劣るかもしれない。その実力差はもはや、努力では埋まりそうもないところまで来ていた。

 だが、それに潰れてしまうような柔な男ではない。

 何度も挑戦し、何度も弾き返され、その度に立ち上がっていった不屈の男こそヒョロくんである。

 確かに個人戦では活躍できないかもしれない。だが、誰よりもチームのために努力をしてきた男である。

 その男があと1勝で、全国制覇を成し遂げる。これほどのドラマがあるだろうか。

 まだ結果は出ていないが、32巻の内容次第では、あまりの感動に泣いてしまう可能性すらも感じている。

 

 そして太一の母。

 千早や太一の目標を邪魔する存在が『物語における悪役』だとするならば、彼女は確かに悪役だろう。瑞沢メンバーを翻弄し、太一の夢を潰してしまったのも他ならぬ彼女である。

 1人の母としてはわからない行動ではないのだが、それを子供目線で見た場合は明らかにこの作品の憎まれ役を買っている。

 だが、末次由紀はそんな母を単なる悪者にしなかった。

 

「君も 持っているものを無視しすぎだ」

 

 この周防名人の一言は私にも非常に効いた。あれが足りない、あれがうざったい、これが邪魔だ、そんなものばかりなのだろうか?

 本当に当たり前のように手にしているものは、当たり前なのだろうか?

 負けず嫌いで、何事にも熱心で、そして諦めない太一を育てたのは誰だったのか?

 

 この2人を凡百の創作者であれば、単なる咬ませと邪魔者にしておしまいだったろう。ここまで長く引っ張ってきて、ここに来て一気に輝かせる、本当に素晴らしい手腕だ。

 普通はできないよ、主人公級以外をこの大舞台で活躍させるなんて。

 

 

3 「根気強く粘り やり続ける以外に 自分を変える道はない」

 名言、格言の非常に多いちはやふるであるが、この巻のマイベストはやっぱりこのセリフだろう。

 若い頃というのは、何事も上手くなるのはあっという間だとか、あの凄い人は天才であるという幻影に囚われることがある。

 だが、そこそこ年齢を重ねてくるとわかるのが、その才能というものは『根気よく粘り続けた結果であるということ』だ。

 

 確かに才能はあるかもしれない。

 一瞬で上手くなってように見えるやつはいるかもしれない。

 それでも、『自分が変わるためには、自分が勝つためには粘り続けるしかない』のである。

 これはこのブログでおいても私は短編小説を書いているが、その腕はどうかというと、そんなに大したことはなさそうだし、自分よりも上手い人間なんてこの世に腐るほどいる。

 もちろん笑われたことも、罵倒されたことだってある。

 でも、そんなことで簡単に諦めれるほど軽い気持ちであったならば、ブログを立ち上げて人を呼んで、いろんな人に読んでもらおうなんてことはしていない。

 

 才能がない、あいつは天才である。

 それは非常に簡単な、諦める言い訳になる

 

 でも、才能とかそういうことではなく、「自分がどうであるか、自分がどうしたいかこそが一番重要なんじゃないか!?」ということを語りかけられているような気がしてくるのだ。

 

 ちはやふるを読んでいると、感動と共にふつふつとやる気を出せと発破をかけられる。これほどの作品は非常に少ない。

 あまり感想や、考察としては意味をなさない自分語りに終始した感があるが、それほどまでに熱中してしまった素晴らしい1巻だったということだと思っていただきたい。

 

 深夜テンションでお送りしました。

 

ちはやふる(31) (BE LOVE KC)

ちはやふる(31) (BE LOVE KC)

 

  

 

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