物語る亀

ネタバレありの物語批評

『当て屋の椿(既刊14巻)』感想 エロチックの中にある男と女の業

カエルくん(以下カエル)

「LINEマンガでの読めるようになったとのことなので、ここで改めてレビューを書きなおすとしますか」

 

ブログ主(以下主)

「しかしLINEマンガも攻めるなぁ……全年齢向けの作品ではあるけれど、結構過激な性描写の多い作品だよ? しかもアブノーマルな面も多いし……」

 

カエル「その意味では電子書籍とか向きだよね。そんなにLINEマンガを読まないからラインナップは知らないけれど、やっぱりこの手のわかりやすいキャッチーな要素が多い作品が多いのかな?」

主「まあ、この作品はエロだけじゃないけれどね。むしろ、江戸時代の風俗だったり文化を知る意味では結構わかりやすくていいかも。

 子供には絶対に読ませないけれど!

 一昔前のジャンプとか、そういうレベルのエロじゃないからなぁ……

 それにしても、今作って売れているのかよくわからんのよなぁ……14巻で100万部突破だけど、これって1巻あたり10万部以下でしょ?」

 

カエル「少年漫画がそれこそ桁違いの作品が多いからねぇ。1000万部突破とか言われるとすごい! ってのはわかりやすいけれど……

 青年誌で100万部も十分すごいんだろうけれど、ワンピースが何億部とか言われると100分の1かぁって話になるのは仕方ないかなぁ

主「過去トップの売り上げのものと比べるのがおかしいとはわかるけれどね……

 では記事を始めようか」

 

  

 

当て屋の椿 14 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

1 各巻の紹介

 

カエル「じゃあ、ここで各巻について簡単に書いていこうか」

主「とりあえずは以下のようになっている。

 

 1巻 本作の登場人物などの説明と狛犬の行方(狛犬の行方は本作の象徴のようなエピソード)

 2巻 浄瑠璃心中物語(篝登場)と尼寺に潜む怪物(竜胆登場)

 3巻 尼寺に潜む怪物(後編)と富くじ7不思議(長屋のお話)

 4巻 喰う者、喰われる者

 5巻 雨に濡れる思い、神の住む山

 6巻 神の住む山(後編)盗人草(和尚初登場)

 7巻 盗人草(後編)、海処の情

 8巻 海処の情、あがほとけ(本作品の転換点)

 9巻 あがほとけ(後編)天網(衝撃の展開)

 10巻 天網など、夜鳴く(鳳仙の過去編)

 11巻 夜鳴く(中編)

 12巻 夜鳴く(後編)など

 13巻 天の果て 海の角(椿の過去編)

 14巻 天の果て 海の角(後編)馬喰い

 

 となっている」

 

カエル「この中で特に重要なのは……やっぱり『あがほとけ』以降だよね……ここからお話が一気に動いた印象があるし」

主「個人的に好きな名エピソードはドラマCDにもなった『狛犬の行方』

 最も好きなエピソードである『浄瑠璃心中物語』

 あとは……蚕の物語である『喰う者、喰われる者』『盗人草』あたり、後編ならば『夜鳴く』などが好きかなぁ」

 

カエル「特に狛犬の行方は紹介のところでも書いたけれど、本作品の中核となる物語でもあるよね」

主「短くして物語としてもしっかりしているし、本作がどのような作品なのかわかりやすい見事な導入の物語になっているしね」 

 

 

blog.monogatarukame.net

 

『 夜鳴く』について

 

カエル「この記事は12巻のレビューのリテイクなんだけれど……夜鳴くについて語っている部分があるので、それについてちょっと残しておこうか」

主「この話は2巻に収録されている『浄瑠璃心中物語』とほぼ同じ構成をしていると思う。

 例えば圧倒的才能を持つ絵師(2巻では人形師)のモチーフにしていたのは死体であるという共通点や、福寿と糸葱という2人の女の業というものはほぼ同じだ。

 その最大の違いがあるとすれば、そこに鳳仙自身があまりにも濃く関わっているか否かということだったりする」

 

カエル「もしかしたらちょっと意識したのかなぁ?」

主「偶然かもしれないけれどね。

 自分は先に述べた通り、この作品で1番好きな話はこの『浄瑠璃心中物語』なのだが、どことなく心中の美しさがある2巻に比べて、今回の夜鳴く編はバトル要素が絡んでしまったからか、その美しさは影を潜めてしまったように思うな」

カエル「でもあのラストとかはさすが当て屋の椿って思ったね」

主「バトル要素が強くなってくるから、そこはあれだけど……本作はエロチックな部分などがよく言われるけれど、本当の魅力はこの無常感だからね。それがこのダークな雰囲気と調和していて、この作品しかない味が生まれているんだろう」

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

2 女の業

 

カエル「当て屋の椿のテーマってざっくりと言うとなんだとおもう?」

主「一言で語るならば『人間の業』なんじゃないかな?

 その中でも特に多いのがやはり『愛』に関する業だ」

カエル「多くの人がそれぞれの愛の業によって苦しみ、そして辛い思いをしているね……」

主「これは夜鳴くに出てくるエピソードだけど……主人公、鳳仙の過去に出てくる母親は可愛らしく美しい女性だったんだよ。幼い子供が憧れるような存在で……だけど、直接言及するのもあれだから濁すけれど、結構過酷な体験をしているんだよ。

 その際の出来事がトラウマとなり、鳳仙は女性の中に美を見るよりも、醜悪な業を見えてしまうようになった。だが、逆にそれが鳳仙の絵を上げて、春画師としての名を大きく上げることになった。

 そういう意味では鳳仙もまた、自らの壮絶な経験を持っているからこそ名を挙げた絵師の1人と言える」

 

カエル「不運な運命になってしまったからこそ、育てられた作家性か……これもまた1つの業なのかもしれないね」

 主「そして女の業というと、糸葱の中に眠る業も良かった。

 鳳仙と再会し、その春画師としての腕前の高さに目をつけた糸葱は過去の好意もあって、次の『秋海』としていて欲しかった。実際に糸葱の絵師を見る目は相当なもので、柾にしろ白茅にしろ、その描く絵は見事なもので御用絵師という名前をペテンがとしても守りきることに成功していた。

 だが、彼女の本心は「あえたのが嬉しくて 甘えたくて あなたをここで飼い殺そうとしたの」という非常に強い独占欲だった」

 

カエル「当て屋の椿では多いパターンだけど……また独占する心もまた愛なのかも……」

主「これは2巻の福寿と同じで、福寿の場合は恋人である八葉の死の際に

『私なら捜し出す 髪の一本だって 誰にも渡さないのに』

という強い執着をみせた。この2人の中にある執着というものは同質のものではあるが、しかし糸葱には圧倒的にその量が足りなかった。

 福寿の場合はその巾着袋に毒を忍ばせ、殺した上で、もしかしたら心中することすらも考えていたことに比べて糸葱にはそこまですることはできなかった。

 これが絵師でありながら、鳳仙たちほどの絵を描き上げられなかった原因なのだろう」

カエル「表現と執着の差かぁ……」

 

 

 

最後に

 

カエル「とりあえずこの辺りにしておくとして……エロチックなことばかりが注目を集めがちだけど、その書かれている内容もしっかりとしたものなんだよ」

主「当て屋の椿は結構お話がグチャグチャとしていて、感想記事や考察向きではないと思う。何せ訳わからん部分が多いし、説明しているようであんまりしていない場面も多々あるからだ。

 だが、人間の内面ってのは本来そういったもので、理路整然とした物語では語れない魅力がある」

カエル「まあ、吉原という舞台も裸体とまぐわいを描くのに都合よく、女性の裸体が毎度のように書けるからというのもあるのかもしれないけれどね」

主「エロが人気かもしれないけれど、それだけじゃないのがいいよ。エロって確かに『反射』の部分が多いけれど……エロがあるからこそ書けるものってのあるんだよ。今作品はエロが目的のようだけど、本当に描きたいのはその先にあるもの……業だと思うけれどね」

 

カエル「……でもバトル要素は必要なのかなぁ?」 

主「まあ、それも含めてこの先も楽しみにしていようじゃないか」

 

 

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