物語る亀

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物語愛好者の雑文

漫画『アンノ対ホノウ』感想 島本和彦がシンゴジラで果たした役割

カエルくん(以下カエル)

「シンゴジラも公開2ヶ月目も終えようとしているけれど、さすがに落ち着いてきたねぇ」

 

ブログ主(以下主)

「公開時期に加えて『君の名は。』が大ヒットしちゃっているからな。結構こっちの方にミーハー層というか、ブームだから行こうぜってファンは流れているんじゃないの?」

 

カエル「どちらも相手次第では100億を狙える作品だし、それだけの勢いだっただけに惜しいといえば惜しいね

主「どこの配給会社やクリエイターたちも負けてられないからさ、そんなに甘いもんじゃないってことね。ここ数年でもベスト級が被るってことがあるんだなぁ」

カエル「これで100億届かなかったのは『恋愛などの一般層に受ける要素が少なかったからだ』とか語る論評が出てきたら、本当に悔しいよ」

主「さすがにこれだけの売り上げがあればケチのつけようはないだろうけれどな」

 

カエル「で、今回はその『シンゴジラ関連本』の中でも特に熱いファンである、島本和彦の『アンノ対ホノオ』を取り上げるわけね。ついに同人誌まで手を出すかぁ」

主「……実は同人誌って初めて買ったんだよね

カエル「……え? オタクってみんなコミケとか行くもんじゃないの?」

主「だって夏は暑いし、冬は寒いしさ。人は多いし、冷やかしでいくにはハードルが高いでしょ? 大体、今時ネットで大体買えちゃうし、現地でしか買えないようなものは積極的に調べなければ知りようがないしさ。

 結局買うものがないから、わざわざ行かなくてもいいやってなるんだよ

 

カエル「そんなもんかなぁ? 今回はシンゴジラを取り巻くSNSの動きと、島本和彦の影響ということについても語っていくんだよね」

主「そうね。シンゴジラがこれだけヒットしたのは『ファンが熱いから=育てたから』というのも大きいだろうし、そこもセットで語りたいね」

カエル「じゃあ、長い前置きはここまでにして感想記事スタート!!」

 

 

 

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 1 アンノ対ホノオの感想

 

カエル「なんかこの漫画のテンションさ、感想記事を書いた時の主と同じような熱量があるよね」

主「それだけの強い感動があったからなぁ。違いがあるとすれば、自分の隣にはトン子さんがいなかったことか。この感動を語る相手がいなかったから、ブログをやっていて本当に良かったと思うよ

カエル「あれだけの熱量を受け止められる人はそうそういないからねぇ……しかもかなり長い感想記事になったし」

主「それだけアクセス数も多いから、面白い記事ではあると思うけれどね。(宣伝と自画自賛)映画記事の書き方がこれで固まった気がするよ」

 

カエル「このタイトルからも想像できるけどはさ、当然のようにシンゴジラを鑑賞していないと意味がわからない本ではあるけれど、大体書いてあることに納得するよね。特に仮面ライダーとかさ、庵野秀明の自主制作作品時代とか、こういうのって……言い方は悪いけれど『古いオタク』でないとわからないことだし

主「初代仮面ライダーって1971年放送開始だから、もう40年以上前の作品なんだよ。この世代の人……1960年くらいに生まれた人からしたら、もうドンピシャな話題ではあるけれどさ。今の若い人じゃほとんどわからないから、こういう解説を入れてくれると一周回って新鮮でいいね」

 

カエル「特に仮面ライダーは今でいう戦隊モノとかとはちょっと違って、ダークな印象があるから、少し理解力の増した10歳くらいが一番ハマるかもねぇ。60年前後生まれだと、一番ハマる年頃に仮面ライダーを見ているわけだし」

主「その後の人生とか、オタク濃度が決まるのが大体10歳から14歳くらいの時期でさ。この時期に好きだったものって、大体一生好きなんだよ。余計な知識がない分素直に受け入れられるし、ある程度お話などを理解する力を身につけるのが、大体このあたり。

 もっと若いと理解するのが難しいし、歳を取ると余計な知識が邪魔することもあるし」

 

カエル「これはオタクとかリア充関係なく、大体みんな『子供の頃に戻りたい』とか『懐かしい』って感じるのは、自分が10歳から15歳くらいの間に流行したものだったり、体験したことだったりするよね

主「実際は15歳くらいって大変だと思うけれどなぁ。家族関係とか、学校の人間関係、部活に勉強とやらなきゃいけないことがたくさんだし、金もなければ逃げ場もない。だけど脳内では美化されてしまうんだろうな」

 

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リメイクの意味

 

カエル「ここも納得だよねぇ。多くの作品がリメイクとか、実写化とかするけれど、その意味って何よ? って話でさ」

主「特にゴジラシリーズって過去にも……それこそハリウッド版も含めたら何作も初代のリメイクとしてのゴジラがあったんだよね。だけど、そのどれもが初代を超えることができなくなっている。

 それだけ初代ゴジラっていうのは……あえて、この表現をするけれど『呪い』だったんだよ

カエル「影響力が強いもんね。後々の怪獣特撮にも大きな影響を与えたし」

 

主「当然今見ればちゃっちい部分もあるけれどさ、当時の最先端の技術で作られた、過去にないタイプの映画だったわけじゃない? その衝撃度の高さはやっぱり異常なもので、とんでもない作品だったわけだ。

 だけど……これは難しいところだけど『ゴジラとは何か』という一番大事な部分が多様的になりすぎて、迷走してしまった印象がある」

カエル「ゴジラとは何かって一言で語れないもんね」

主「そうするうちにお約束とかさ、様式美とかも出てきて、怪獣映画のイメージがあって……という風にがんじがらめになっちゃった。さらにウルトラマンやら、なにやらと他の特撮や怪獣映画との差別化をしなければいけないしと、怪獣映画の元祖と呼べる存在にも関わらず、やれることが少なすぎたんだな」

 

カエル「それがあの『リメイク作品』の年表なわけだね」

主「さらにゴジラシリーズ最大のヒット作は『キングコング対ゴジラ』なわけじゃない。あの当時、日本中に映画館があって、そこに洋画のスターであるキングコングとゴジラが戦うとなると、そりゃ人は集まるわけだけど……ここで後々につながる、怪獣プロレスと揶揄される怪獣同士の対決モノが主流になる運命が決まったわけだな

カエル「どうしても戦うことになると子供向けというか、ファミリー層むけになるよね」

主「それでゴジラというものが生き残ってきたのも事実だし、それはそれでいいものだけど……初代のリメイクが難しくなってしまった。そこが課題かなぁ」

 

 

2 『シン・ゴジラ』という現象

 

カエル「シン・ゴジラがこれだけの完成度となると、色々と危惧するものがあるんでしょ?」

主「そう。初代というのが怪獣映画として完成されすぎてしまっていたように、シンゴジラも……完成度は様々な意見が出るだろうけれど、衝撃度では対等なものだったわけだ。まぁ、実際は当時の衝撃を知らないからなんとも言えないけれどさ、現代における衝撃度のリメイクはできたわけと言われているわけよ」

カエル「でも、それの何を危惧しているの?」

 

主「それだけの衝撃度があると、これは初代のゴジラと同じように『呪い』になる可能性があると思うんだよね。むしろさ、初代は時代も違うし『それまで怪獣映画というものがなかった時代に作られたからこれだけの衝撃があった』ということもできるんだけど、現代でこれほどの作品をリメイクすることができたんだから、それも今後は言い訳にならない。

 そうなるとさ、この衝撃を目指すためにいろいろした挙句、結局たどり着くことができずにダメになってしまうということもあり得るわけだ

カエル「ああ、新しい呪いってことね」

 

主「そう。新しい呪いが生まれることによって『結局ゴジラって様式美の、マンネリだよな』『シン・ゴジラには敵わないよな』って状態になる可能性も十分ある。

 だけど、個人的にはこの島本和彦のような人が、そのシン・ゴジラを『呪い』とすることを防いだようにも思えるんだよね

カエル「……? どういうこと?」

 

主「島本和彦はさ、この作品を絶賛しているし、その衝撃をしっかりと受け止めているわけだ。だけど……これは庵野秀明を古くから知っていることもあるんだろうけれど、その上で『俺の勝っている可能性は大!!』とか言いきれちゃうわけじゃない?」

 

 

主「この類のツイートがすごく多くて、このブログに載せることはしないけれどさ、まとめサイトでいくらでもあると思うし。

 そのツイートの意味って、この作品を『クリエイター賛歌』にしたことだと思うんだよ。

 

 確かにこの作品は素晴らしい、だけど、この作品の前に膝を屈するのではなく、この作品に勝てるような作品を作ろうじゃないかってこと。

 これがすごく大切なことでさ。クリエイターとしてはシン・ゴジラの前に崩れ落ちる瞬間は確かにあると思うよ?

 だけど、そうじゃない。崩れ落ちるんじゃなくて、勝負する相手として、これほどうってつけの存在を作ってくれたじゃないか、正面から戦えるじゃないかってことだよね。

 その思いが、シン・ゴジラという作品を『呪い』にしないという意味において、すごく大きな意味があると思う」

 

カエル「有名漫画家とはいえ、Twitterと同人誌の中で書いたことにそれだけの効果があるのかな?」

主「あると思うけれどね。シン・ゴジラが一気に盛り上がったのは、ネットの評判が異常に良かったという面もあるわけだし、より強く感動した人は能動的に調べるわけでしょ?

 そうすると島本和彦は少し調べたら感想に出てくるしさ。勇気をもらえたという人も多いんじゃないかな? 

 もちろん、現在進行形の現象だから、10年後に振り返らないとわからないかもしれない。だけど、シンゴジラが呪いじゃなかったとしたら、それは『私は好きにした。お前たちも好きにしろ』っていう庵野秀明のメッセージと、それを取り巻く島本和彦を代表とするファンの功績がすごく大きいと思うね

 

 

最後に

 

カエル「しかし、今年はこういうある種の『呪い』になりそうな作品が多いよね」

主「シン・ゴジラは特撮界における一つの頂点だと思うし、今後も君臨する絶対王者として扱われるだろうけれど、庵野秀明はそんなの気にしないだろうし、業界が苦しむだけかもね。

 その意味ではEVAの再来かもね。あれは庵野秀明も縛る呪いになっているけれど。

 個人的に心配なのは『君の名は。』でさ。新海誠もここまで売れるとは思っていなかっただろうし、これだけ売れると、次が作りにくいよね。それが次回作でどうなるかという問題はあると思う」

 

カエル「売れすぎたり、偉大すぎるのも考えものだね」

主「宮崎駿なんて完全にアニメ映画界における『呪い』になってしまっているからね。そこを追いかけるクリエイターも多いし、ファンもそれを望んでいる節があるし……」

カエル「だからこそ、島本和彦みたいなファンが重要なんだね」

主「そうね。その作品を『呪い』としないために、鼓舞するファンというか、そういう存在は大事だよね。やっぱり、作品はファンが育てる部分もあると思う。その第一歩として、島本和彦が果たした功績は大きいんじゃないかな?」

 

カエル「……主もそうありたいの?」

主「そりゃあね。できれば既存の物語を語るだけじゃなくて、物語を作りたいとは、いつも思っているよ」

カエル「じゃあ、さっさと小説を書くべきだ!! さあ早く!! 映画の感想記事ばかりあげている場合じゃないよ!」

主「……あ〜あ、耳が痛いわ……」

 

 

 

 

 

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