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物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『築地ワンダーランド』感想 日本の食を支える職人たちの熱き思いが胸を打つ!

映画 雑考 食いしん坊 ドキュメンタリー

 ようやく『築地ワンダーランド』の映画を見に行くことができたので、その感想を書いていこうと思う。

 なお、今回はいつもと趣向を変えて記事を書いていく。

 理由は……特にない。いつも働き通しなカエルくんと亀爺のお休みだと思っていただければ幸いである。

 

 

 なお、この記事は『食事系ドキュメンタリー3部作』の第1章にあたる。

 

『築地ワンダーランド』

『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやってきた』

『カレーライスを一から作る』

 

 の3作である。理由は公開時期が似ていることと、そして何よりも私が鑑賞した日付が近いことである。それ以外に理由は……ない!

 だが、おそらくこの3作を見たという人も日本に100人もいないと思うし、さらに記事にまとめた人は誰もいないと思われるので、その意味では希少性は非常に高いと思われる。(需要は知らん)

 

 

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 それでは感想記事を始めよう

 

 

 

 


『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』予告篇

 

1 築地をめぐる問題

 

 現在移転問題が混迷を極めている築地市場ではあるが、その歴史は長く1935年に移転をした。戦前から続く世界屈指の魚市場であり、すでにその歴史は80年を超える。そのために老朽化も激しく、移転自体は必要不可欠な事態であった。

 この問題がややこしくなったのはオリンピックという制限時間が設けられてしまったこと、そして建築の素人であるマスコミによる報道の影響である。

(あくまでも噂レベルの話であるが、一説には蓮舫の二重国籍問題の話題を逸らす目的と、オリンピック関連の不手際、東京都にとって最大級の懸念事項であった市場移転問題を報道したところ、舛添前都知事の不祥事、小池都知事人気もあって予想以上の反響を呼んだという分析もある)

 

 私は築地市場の移転自体は賛成の立場であるが(現在の築地市場の老朽化が激しく、ここが震災などでつぶれた場合の被害の方が大きい)これだけ揉めに揉めた背景には、何と言っても日本人の国民レベルでの『食への関心の高さ』というものがあるだろう。

  

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食いしん坊な日本人

 

 日本は世界屈指の食の都と言われている。

 特に東京は顕著であり、個人の趣向はあるにしろ、基本的にどこのお店に入っても食べられないほど不味いという店はほとんどない。チェーン店などが多いというのがその理由でもあるのだろうが、ミシュランガイドの東京版にて星を獲得した店の数が世界一になったというニュースは、まさしくそれを証明している。

(東京は226、2位のパリは94と倍以上の差をつけて圧勝)

 

 また、日本人の食に対するこだわりの強さは政治面でもわかるという。農業のTPPなどは経済的な面も指摘されているが、世界の安い理由である大量生産された野菜や食べ物に対する安全面を懸念する声も大きいし、鳥インフルエンザ、BSE問題、異物混入問題、食中毒問題などは毎年のようにトップニュースを飾る。

 中国の『ダンボール餃子』なども連日トップニュースになっており、食に関する話題は非常に注目度は高い。

 

 一方では夕方のニュース番組ではグルメを扱うと一定の視聴率を稼げる、ということで『激安グルメ!』などと称して似たような話題をどこかの局が毎日のように宣伝しているほどである。

 また、物語の観点からいうと食べ物を美味しそうに食べるシーンなどは人々を惹きつけるものがあり、スタジオジブリ作品の多くには食事のシーンが描かれている。

(食事のシーンはアニメで描くことが難しいとされている)

 

 そんな日本の首都、東京を支える台所こそが築地市場である。

 

 

 

 

2 築地という場所

 

 私事ではあるが、築地という場所は魅力に溢れた場所であり、一時期週に2回は通っていたこともある。

 さすがに場外市場となると全ての店を回ることは難しいが、場内市場であればそこまで数も多くないため、全ての店を回ったほどである。値段も少し高めの場所もあり、観光地価格になっているのは否めないが、おいしい店が密集していることもまた事実だと思う。

(かの食通芸能人である寺門ジモンも週に1度は通うと公言している)

 

 

 今見ると相当拙い記事ではあるが、このような記事も昔書いていた。

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  築地というとどうしても魚ばかりが注目されてしまうが、隣には青果市場もあって実は新鮮な野菜なども手に入りやすい場所でもある。さらにいうと、食肉を扱う問屋などもあり、牛、豚、鳥を問わず肉も美味しい場所だ。

 『鳥藤』という鶏肉専門業者が開いている『鳥藤分店』という親子丼が有名な店もあるのだが、そこの親子丼は天下一品の出来であり、私などは日本で1番美味しい親子丼なのではないか? と思うほどだ。

 他にも場内市場には有名な『吉野家1号店』があったり、またカツ丼などを出してくれる定食屋の『豊ちゃん』場外市場の名物となり、この寒い時期には是非食べたいホルモン丼の『きつねや』などもオススメしたい。

 

 どうしても築地というと『魚が食べたい!』となりがちだが、観光客目当てでそう美味しくない寿司屋や海鮮丼を出す店もあるために、特に場外市場で探す場合には気をつけてもらいたい。

 そして迷うことがあれば、魚にこだわらずに肉でもイタリアンでも評判の良さそうな店に入ってもらいたい。

 

 

 

 

3 ようやく映画の話

 

 さて、ようやく映画の話に入る。

 私はこの映画を見ている最中、何度か目頭が熱くなってしまった。

 ドキュメンタリーとしてどれだけ優れているか、ということはわからない。テレビなどの特集よりは詳しく、そして念密に作られていると感じたが、それは築地市場を扱った映画ということを考えれば、当然といえば当然のことかもしれない。

 特に後半部分に至っては築地というよりも、日本の食文化に対する啓蒙のような部分もあり、その部分はカットして時間を短くした方が映画としての完成度は高まるのではないか? という思いもあるにはあった。

 隣で見ていた夫人は途中から寝てしまっていた。

 

 だが、私などは美しい食材と、それが織りなす芸術品のような食べ物が並ぶたびに、涙が出るような思いがするのだ。

 

 食事というのは毎日必ず行われることである。少しくらいならば食べなくても生きていけるが、それでも栄養をとるということは、すなわち『生きる』ということと同義である。

 毎日の食事だからこそ気を使うこともあるだろうが、毎日の食事だからこそ疎かにしてしまう部分もあるだろう。

 しかし、専門の職人が信頼できる業者から仕入れて、技巧を凝らした料理などは世界一短命な芸術だとすら、私は思うのである。

 

 そしてその芸術を支えるものこそ、この築地の仲卸をはじめとした流通業者であったり、生産者である。

 彼は普段スポットライトに当たることはない。我々が『美味しいレストラン』『凄腕料理人』のことはテレビや雑誌で目にすることはあっても『凄腕仲卸』というのは目にする機会はほとんどない。

 そんな縁の下の力もちにスポットライトを当てたのが本作である。

 

 

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『性癖』の映画

 

 こういうと誤解を招きそうだが、私はこの映画は『性癖』の映画だと思った。

 性癖というとムチで叩かれるのが好き、などのセックスに関することを連想しがちだが、本来は『その人が生まれ持つ性格や素質』に関すること全般を指す言葉である。

 それがいつの間にか言葉の意味が狭くなり使われ始めてしまった。(誤用とまでは言いづらいが)

 

 この映画に出てくる仲卸の目を見て欲しい。みんな、まるで初恋の女性に出会った少年のようにきらめいている。

 それはこの築地を研究するハーバード大の教授も同じで、魚や貝などを見つめるその目は、一点の曇りもないのだ。

 

『仕事じゃないよ、もう』

『マグロのことしか考えられない』

『穴子以外知らないですからね』

 

 そんな言葉がポンポンと出てくる。まさしく、職人の世界である。

 きっとこの映画に出てきた仲卸は、サラリーマンのようにお金のために働いているという感覚ではないのだろう。

 好きだから、というその一点だけで働いている。私にはそう見えた。

 

 その好きを何十年と重ねてきた人たちが、夜が明けるどころか、一般のサラリーマンがほろ酔いで帰路につく時間にはもう動き出している。それが東京の食文化を支えていると思うと、頭がさがる想いである。

 そして、何よりもその仕事を『愛しい』と思うその感情こそが、あまりにも純粋で尊く、美しくこの映画は捉えているのである。

 

築地の記憶 人より魚がエライまち

築地関連の本もいっぱいあるねぇ……

 

 

 

4 食事系ドキュメンタリーとして

 

 さて、私はこの映画を『食事系ドキュメンタリー3部作』のスタートとしても位置付けているが、ではどのように語ることができるだろうか?

 

 

 食の流通、目利きなど素材の専門家を扱った『築地ワンダーランド』

 世界一の料理人として腕をふるう職人の努力を描いた『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやってきた』

 そして、食べることの意義、その苦労を問う『カレーライスを1から作る』

 

 という位置付けになる。

 

 築地ワンダーランドの中では『文化としての食』を支える仲卸の姿が描かれていた。

 流通業者というのはいわゆる『中抜き』のように扱われることもあり、時には辛い思いをすることもある。『産地直送』とうたうことにより『安価で新鮮』というイメージもついた。

 確かに流通業者がいると、その手間がかかる分値段が上がるだろう。それは一般の消費者からすると少し痛いものでもある。

(私は日本人の貯金癖はもう病気の域であると思っているし、金は天下の回りもの、溜めるくらいなら投資でもしようよと思うが、どうやらそんな人間は少数派のようだ)

 

『ノーマ東京』のレネなどの一流の職人も築地の目利きなどに驚きを隠せずにいたし、この流通業者や目利き役がいないと、最悪の場合『カレーライスを一から作る』のようなことになりかねない。

 彼らがいるからこそ、安全でおいしく、見た目もいい野菜、魚、肉が安定して入ってくるのである。

 

 農薬、養殖、遺伝子組換え……それらの『科学的な変化』を嫌い、もっと自然な農法で作られたものが最高だと思う人も多いかもしれない。それはそれでいいと思う。

 だが、そんな人こそ『カレーライスを一から作る』を見て欲しい。実践しろとは言わない。何せ、1杯のカレーを作るのに9ヶ月かかるのだ。

 だが、映画ならば2時間で済む。

 

 築地市場や作り手の農家、漁師などの重要性が、よくわかるだろう。

 

 そしてその『安定供給』がいかに素晴らしく、工夫と努力の上に成り立つものか、痛感すること間違いない。

 

 

 

最後に

 

 誰にでもお勧めできる映画か? と問われると、そんなことはない。

 築地という町であったり、食に対してある程度以上の興味がないと、ただ退屈なだけかもしれない。

 今まで知らなかった新しい事実とか、自分の常識が変わるようなことも一切ないかもしれない。

 だが、私はこの映画に深く感銘したし、とんでもない作品だと思う。1年を追って、美しく画面を彩った魚たち、これに舌鼓を打ちながら、今日も築地に思いを募らせる。

 

 

 

 

カエル「……なんで今回はこんな形式にしたのかね?」

亀「久々に一人語りの記事が書いてみたくなった、とか言っておったが……」

カエル「自分に酔った文章を書いてみたくなったのかな?」

亀「……わしはそこまで言っておらんぞ!」

 

 

 

 

 

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