物語る亀

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ネタバレありの物語批評

映画『リベンジGirl(リベンジガール)』感想 覆面系ノイズもそうだけれど三木監督ってもしかして……

カエルくん(以下カエル)

「クリスマス到来! この日にデートムービーを見に行くというのもなかなかのチャレンジャーだよね」

 

亀爺(以下亀)

「意外とレイトショーに行ったらカップルは少なかったの。一人で来ているおじさんや女の子2人というのが多かった印象じゃな」

 

カエル「まあ、レイトショーはまた違うからね。桐谷美玲のファンだから見たい! という男性だって少なくないだろうし」

亀「最近、スイーツ映画をそこそこ見ておったから、その見方もなんとなくわかってきたしの

カエル「……スイーツ映画に見方なんてあるの?」

亀「基本は役者を見ておればいいのかもしれんが、監督ごとの個性や演出の味を楽しめるからの。

 特にこの手の映画はサイクルが早く、今作の三木康一郎監督は先月『覆面系ノイズ』を公開した後なのに、もうこの映画を撮っておる。

 毎年3作4作は公開している監督もいるしの」

 

カエル「本来は制作期間の短さとか闇を感じる話でもあるけれど、でもその分いろいろと経験を積むにはいいのかな?」

亀「ある意味で、昔のピンク映画みたいなことになっているのかもしれんの。女優と原作とキスシーンがあれば、後はどんな演出もいいよ……みたいな。まあ、そんな簡単な話であるはずもないが、これはこれで面白いものじゃな。

 では、今回はそんな三木康一郎監督の前作『覆面系ノイズ』も感想を書いていなかったので、そちらを交えながら『リベンジガール』について語っていくかの

カエル「では、感想記事のスタートです!」

 

 

 

【映画パンフレット】 リベンジgirl 監督

 

作品紹介・あらすじ

 

 桐谷美玲を主演に、人生初の失恋であり唯一の汚点を残した男を見返すために女性初の総理大臣を目指す女性の選挙戦と恋愛を描いたラブコメディ。監督は『覆面系ノイズ』や『植物図鑑』などの恋愛映画を多く描いてきた三木康一郎。

 相手役の政治家秘書の男性には鈴木伸之、復讐対象の元恋人は清原翔が演じるほか、斉藤由貴、馬場ふみか、佐津川愛美などが脇を固め、ガッツ石松、山本紅葉などが個性豊かな政治家を演じる。

 

 東大主席でミスキャンパスグランプリにも輝いた過去を持つ24歳の宝石美輝は、その実力を過信し自分を愛し、他者を下に見る最低の性格ブス。そんな彼女にも政治の名家斎藤家の御曹司と恋愛に落ちるのだが、実は斎藤裕雅には彼女が沢山いる女癖の最低に悪い男だった。

 裏切られて捨てられてしまった美輝はその高いプライドを満たすために彼に復讐をすることを誓い、選挙戦に出馬することにする。

 


映画『リベンジgirl』予告編

 

 

 

 

1 感想

 

カエル「では、いつも通りTwitterの感想から始めます」

 

 

亀「わしはこの映画について『復讐する』程度しか知らずに見に行ったのじゃが政治を描く作品になったのは斜め上すぎてかなり面白かったの。

 肝心の政治の描写に関しては、もうガバガバも過ぎるものじゃが……この『政治』をテーマにしたスイーツ映画という発想自体は評価したい。

 それにコメディとしてもバカバカしい描写の多い、まあバカ映画でもあるのじゃが、それがゲラゲラと笑えるシーンもあって評価できるの

カエル「劇場内でもガッツ石松などの個性豊かな政治家たちが出てくるシーンでは笑い声が起こっていたよね。色々な政党の人が出てくるけれど、ここは風刺になっているのかな? とか思ったりして。

 スポーツ青空党でガッツ石松が党首と聞くと、アントニオ猪木が率いたスポーツ平和党を連想させるよね」

 

亀「そういったコメディパートは中々笑えるのじゃが、まあやはり限界はあるの。全体的に脚本がボロボロ&先が読める展開ばかりなので、かなり辛い評価が多くなってしまうのは致し方ない。

 もっとバカ映画に徹すれば変わったじゃろうが……」

カエル「それこそ、2017年は『帝一の国』とかもあったしね」

 

映画『帝一の國』感想 

 

帝一の國

 

亀「いっその事、コメディに振り切ってもよかったかもしれんの。かなり笑えるように頑張ってはいたのじゃが、選挙自体は実際の選挙戦をモチーフにしているためにかなりボロボロになってしまった印象があるの」

 

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今作はこの構図が多くつかわれていた印象

(C)2017「リベンジgirl」製作委員会

 

 

役者について

 

カエル「では、今作の役者陣について語るとしましょう」

亀「桐谷美玲は……まあ、酷いといえば酷いのじゃが、悪くないといえば悪くない演技じゃな

カエル「……え? それ褒めているの?」

亀「演技らしい演技であり、かなりのオーバーリアクションで違和感はバリバリである。しかし、今作の主人公は『知能、美貌もあるが性格は最低の女』という設定じゃから、あの演技過剰な様子はそれだけの自信があるということを示しておるようで有りといえば有りなのかもしれん。

 現実味は全くないキャラクターじゃからの」

 

カエル「ガバガバ設定ではあるけれどミスコン優勝の美貌と東大の主席って考えたら確かに政治家や官僚になってもおかしくはないしね。むしろブルガリの広報でいいの? ってレベルだし……」

亀「基本的には、この映画は頭のいい映画ではない。

 全く頭の良さは感じなかったし、ばかばっかりの映画ではあるが……わしは彼女が成功するのもなんとなくわかるんじゃな」

カエル「え? どういうこと?」

亀「この子は自分の魅力が『美貌』と『知能』にあることを知っておる。

 そして、それを最大限生かすために努力もして、行動もしているし、足りないと思ったら努力を重ねる力もある。その根底にあるのが自己愛だとしても、ここまでできる人間はそうそういない。

 確かに性格は最悪かもしれんが、わしはそこまで嫌いでもない。己を知って努力を重ねるのであれば、何をやっても成功するタイプじゃろうな

 

カエル「意外な好評価……相手役の2人に関しては?」

亀「本作の復讐対象になる清原翔の演じる斎藤雅裕は、まさしく最低の人間であって現代における政治家の不倫や女性スキャンダルは致命傷なのにも関わらず、それに対して全く意にも介しておらん。これはおかしな話でもあるの。

 父親も全く止める気すらなさそうなのを見て『ああ、やはりバカ映画だ』と思ったものじゃ」

カエル「製作陣にとって都合のいい設定ばかりだよね」

 

亀「その中でもよくいる『嫌味な男』であった清原翔しかり、秘書役の鈴木伸之といい、そこまで面白い役ともいい演技だとも思わなかった。それは斉藤由貴もそうで、良くも悪くも主役の桐谷美玲が目立っていた印象じゃの

 

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今作の相手役のである鈴木伸之

(C)2017「リベンジgirl」製作委員会

 

本作が制作された意義と課題点

 

カエル「それでもこの作品をそれなりには評価するんだよね?」

亀「ガバガバなバカ映画として、じゃがな。

 本作が制作された意義というのは若干はあると思っていて、このような大規模公開の若者向け恋愛映画で『政治』を扱ったことが1つ。

 もう1つは女性の社会進出の面からの評価じゃな」

 

カエル「近年、アメリカでは多く見られるけれど女性の社会進出をテーマとした映画がすごく増えていて、さすがにちょっと多すぎじゃない? と思うような時もあるほで。結局は女性の活躍、差別などをテーマにすると、高く評価されるし売れるという身も蓋もない話ではあるんだけれど……」

亀「今作は女性の活躍を描くのであれば、これ以上ない好条件である。

 男性主導の議会という場所で、未だに女性が就任したことがない総理大臣を目指す。近年でも国会の男女比などが問題になっておるし、是非はともかくとして議会に子供を連れてくる議員も話題を呼んだ。

 やはり、女性が議員を続けるのは難しいというのはあるじゃろう。

 しかも、そこに乗り込むのが男性に捨てられた女性の代表であるというのは、そのまま男性に依存しない女性像ということもできる……これほどの好条件なのに、惜しい話じゃな」

 

カエル「結局は恋愛映画になってしまって『やっぱり女性の幸福は恋愛なんだ』って言っているようだったね」

亀「例えば熟年の女性であっても不倫の映画になるし、女性は男性に依存しないと生きていけないのか? という疑問がある。そして、恋愛要素を入れれば大ヒットするという計算の上にこの映画も成立しておる。

 結局は恋愛だけが女性を幸せにする! みたいに描かれて、女性陣は納得できるのか?

 近年のアメリカの女性優遇映画はそれはそれで問題じゃが、この映画のようにしか女性を描けない日本の情けなさも感じたの」

 

以下作中に言及あり

 

 

 

 

2 演出的なうまさと惜しさ

 

カエル「本作の演出面に関してはどうだったの?」

亀「悪くはないかの。この手の映画を見る際はどのような構図を採用しているのか、どのような演出や動きをしているのか、という面に注目してみたが、結構面白かったの。

 序盤などは登場人物たちに焦点を当てて周囲をぼやけさせている。これは役者に注目させるためのテクニックではあるが、この作品の場合は美輝が『自分にしか興味がない、見ていない』という自己愛の強さを感じさせる。

 他にも序盤で裏切られるシーンは白いドレスが赤く染まる。これはそれまで純真に彼を信じていた彼女が、傷ついている様子を服装で表しておるの

 

カエル「ふむふむ」

亀「それから最初の目論見が失敗するシーンで美輝が怒られるシーンではガラスのドア越しにカメラを映しておる。これで政治の密室性や、陰湿な妨害工作に囚われてしまったことを表しておる。

 その奥には光が当たる窓が配置されており、その密室の中でもわずかな光はあることを示しているわけじゃな」

 

カエル「ふむふむ……一方で惜しい点は?」

亀「わしは美輝の衣装に文句があるかの。

 ダサいとか、そういう話ではなくて女性のメリットの1つに『カラフルなスーツ』がある。

 男性はスーツを着ると大体黒か、灰色か……まあ暗い色になる。お洒落をするならネクタイの色などになるの。しかし、女性のスーツは白、赤、青などよりどりみどりである。

 ということは、黒を着る男性=古い固定概念に縛られている、嘘をつく人間であるのに対して、白を着る女性=誠実、純粋であるなどを表すことはできるじゃろう。

 黒を着せるという選択は……違和感があるの。そのような色の表す印象なども政治家は計算しているじゃろうし、蓮舫は基本的に白のスーツだし、国会議員はかなりカラフルな色をスーツを着用しておるからおかしなものではないと思うがの」

 

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今作の男役である清原翔は最低の男を演じていた

(C)2017「リベンジgirl」製作委員会

 

脚本の突っ込みどころ

 

カエル「あとは……一応脚本の突っ込みどころについても軽く触れておこうか」

亀「1つ1つを相手にしていたらキリがないのじゃが……公職選挙法って知っているのか? という疑問はあるの。

 あのような報道を報道機関が選挙期間中に流すことは基本的にありえん。ネットメディアのシーンはまだわかるがの。

 それから選挙期間中にあれだけ余裕のある政治家は素人だけじゃ。その意味では本作は2人も新人であり、素人だから違和感は少ないのかもしれんがの」

 

カエル「選挙戦などが綺麗すぎるよね。

 もっと声を枯らしたり、スーツが汚れていてもいいと思うけれど……それは映画だから難しいのかな」

亀「あとは3つのバンが大事という話が出てきた。地盤・看板・鞄じゃな。つまり票を入れてくれる地元、知名度、そして金……この3つものないのが美輝という話であった。

 まあ、色々あって当初の目論見は外れたが、なんとか出馬ができるようになったが……小選挙区で戦うにはこの3つのバンがなくては不可能じゃろう。知名度はあるとはいえ、金も地盤もない中での戦いであることは解消されておらん

 

カエル「一応相手の醜聞もあって有利にはなったけれど……それでもガバガバだよね」

亀「それからあのラストはさすがにいかん。

 あんな人を政治家には選びたいとは思えん。恋愛スキャンダルは致命的であるのに、秘書と恋愛関係にあります! というのをあそこまでおおっぴらにしたら両者とも独身であり、若いとはいえいい気持ちになる人ばかりではないじゃろう。

 その辺りが本作は目立ってしまったの」

 

【映画パンフレット】覆面系ノイズ 監督 三木康一郎

同じ三木監督が監督した覆面系ノイズ 

 

覆面系ノイズと本作に見る三木監督について

 

カエル「では、ここでちょっと覆面系ノイズについても触れていきます。

 この作品は主人公の女の子が覆面バンドのボーカルになって、そのバンドのメンバーと幼馴染の若手凄腕音楽プロデューサーから言い寄られる……というおきまりのスイーツ映画だったね。

 漫画が有名だから知っている人も多いのかな?」

 

亀「この2作を見て思ったのが、三木監督は恋愛に興味がないのではない? ということじゃの。

 どちらも恋愛に関係ない部分が面白い。

 覆面系ノイズではMAN WITH A MISSIONが音楽監修をしておるらしいが、その結果もあるのか中条あやみが歌う劇中歌は結構いい。しかも、バンドのお話はそれなりに面白いのじゃが……恋愛のパートになると途端につまらなくなる」

カエル「受け手の問題もあるかもしれないけれどね」

亀「せっかくライバルに真野恵里菜というアイドルグループ全盛の時代に抵抗した、歌唱力もある元アイドルを起用しているのに、なぜ歌わせないのか。最後は中条あやみのバンドと真野恵里菜のバンドの直接対決だったら高く評価されたのではないか?

 せっかくの題材の味を損なっているようにしか見えん

 

カエル「まあ、そこは恋愛映画だし原作もあるしね」

亀「おそらく三木監督が撮りたいのは恋愛パートではなくて、それ以外の部分なのではないか? という気がしてしょうがない。恋愛映画における恋愛パートは入れなくてはいけないから義務的に撮影しているに過ぎず、本当に撮りたいのはもっと別の部分のような気がしておる。

 覆面系ノイズも今作も中盤まで十分面白いんじゃが、風呂敷の包み方が悪いのも……終盤の恋愛に対して思い入れがないからかもしれんの

 

 

 

 

最後に

 

カエル「まあ、でもバカ映画でダメな部分もあるけれど……クソ映画ってわけではないよね」

亀「見る意義はあるし、きちんと1作の物語としてまとまっておるとは思うぞ。

 まあ、クリスマスにちょっと鑑賞するくらいならばいいのかもしれんの。スイーツ映画の中ではかなり特徴のある作品に仕上がっておったとも言える」

 

カエル「もっと特色が色々あれば面白い作品になったりするだろうけれど……この手の映画って売れているとは思えないんだよね。確かにアイドルのように人気のある役者を魅せる作品は必要だろうけれど……もっとね、ジャンルとして色々ないとただ衰退するだけだと思うんだよなぁ」

亀「もう衰退しておるかもしれんがの。

 まあ、これが『売れる』映画であれば日本はそういう国だということじゃろう」

カエル「……なんかクリスマスにする話じゃない気がする……」

 

 

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