物語る亀

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ネタバレありの物語批評

eスポーツと梅原大吾 『リビング ザ ゲーム』を観て考えたこと

カエルくん(以下カエル)

「え〜、今回はいつもと趣向を若干変更しまして、プロゲーマーのカリスマ、梅原大吾について語っていこうと思います」

 

「いや〜……一気にはまっちゃったんだよね!」

 

カエル「えっと……今更?」

主「ここ最近、eスポーツ関連の注目度がかなり高くなっていて、自分はあまりゲームは最近は時間が取られることもあってプレイしていないけれど、でもかなり大きな動きがいくつもある。

 例えばVR技術の発達により、これから先……おそらく5年後にはゲームセンターなどではVRで普通にプレイすることができるようになりそうなぐらい浸透し始めているし、またeスポーツが世界的な盛り上がりも見せている。

 日本のゲームも負けていなくて『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』が旋風を巻き起こし、世界のゲーム賞を総なめにしている現状もある」

 

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド  - Switch

 

カエル「switchの大ブームもあって、かなり面白いことになっているよね」

主「色々と語りたいことが多い中でも、ゲーム業界の象徴ともいうべき梅原大吾について、映画『リビング ザ ゲーム』を交えながら考えていこうという企画です」

カエル「ふぅ〜ん……

 では、記事のスタートです!」

 

 

 

 

ウメハラコラム 拳の巻 -闘神がキミに授ける対戦格闘ゲーム術-

 

 

ゲーム業界のめまぐるしい発展

 

カエル「では、まずは何よりも近年のゲーム業界を巡る動きについて軽く語っていこうか」

主「映画好きにも何種類かわけることができる。もちろん、洋画派と邦画派などもそうだけれど、自分は『映画以外で何が好きか?』ということでも映画の評価が変わるポイントだと思っている。

 1つは海外の作品を含めたドラマ派

 もう1つがアニメ・特撮派だ

 

カエル「海外ドラマを愛好する人は、今の映像業界の最先端はドラマだ! と強く語る人もいるよね」

主「自分なんかはアニメが好きだから、今の物語の最先端はアニメだと思っているけれどね。どちらも勢いのあるメディアであることは間違いないけれど……実は最も注目を集めなければいけないのは、ゲームなんじゃないかな? という思いもある

カエル「今のゲームのクオリティって本当にすごいよね。物語を観るだけでなく、体感してプレイできるというのはとても大きいことだよ」

 

主「ちょっと前の話だけれど、まだゲームをプレイした数年前にさ、海外ゲームに手を出してみたけれど……衝撃だったね。

『HEAVY RAIN 心の軋むとき』『アンチャーテッドシリーズ』『LAノワール』などを知ったとき、これはゲームとしての格が違うと思った。いつまでも萌えやキャラクター人気で売っている和ゲーなんて勝ち目があるわけがない、とまで思っていたね」

カエル「結果的には任天堂が昔ながらのキャラクターを現代の手法で自由度を高く、しかも万人向けのゲームを発売することで再び話題を集めたわけだけれどね」

 

 

HEAVY RAIN(ヘビーレイン) -心の軋むとき- - PS3

 

ゲームの凄さ

 

カエル「しかもPS3時代の話で止まっているけれど、たとえば上記のゲームの何がそんなに衝撃だったの?」

主「たとえばヘビーレインに関しては、殺人事件がテーマの作品なんだけれど……主人公の息子が快楽殺人鬼に誘拐されてしまう。そして犯人からの要求が次々と来るわけだけれど……たとえば『指を切り落とせ』という指令が来る。その指令をこなすという選択肢もあれば、やらないという選択肢もある。だけえど、その指令をこなさないルートに行くと息子の指が送られてくる……みたいなサスペンス作品なんだよ。

 で、4人のキャラクターを操作して犯人を追うけれど……

 まあ、全てが明かされた後は本当に驚いたし、やり直してみると多くの発見があってうまくできているんだよ

 

カエル「かなり重い作品なので17歳以上対象のゲームだけれど、サスペンスドラマとしても優れていたね」

主「それから『アンチャーテッド』はインディージョーンズみたいな作品だけれど、圧倒的に面白い。

 謎解きとアクションの両立などは、近年の映画を大きく超えている。

 こういう物語を知ると……ちょっと今の映画は洋画ですら少し遅れているのかな? という思いはあるね

 

カエル「案外、ゲーム業界の物語性って優れているところもあって、2000年代だとエッチなアダルトゲームの脚本がすごく面白くて、アニメ化が相次いで人気タイトルになるということがよくあったよね」

主「物語表現媒体としてのゲームは、実は今最先端にいるかもしれない。

 やっぱり映画だけではなくて、多くの文化に触れておいたほうがいいという例だよね。

 それだけ、今のゲーム業界はあまり注目を集めないかもしれないけれど、実はかなり重要な文化だし、日本が世界と真正面から戦える……と言っても任天堂だけかもしれないけれど、数少ない物語表現の1つでもあるんだよ

 

【PS4】アンチャーテッド 古代神の秘宝

 

 

梅原大吾の革命

 

カエル「さらにVR技術の発展もある中で、本題のeスポーツと梅原大吾について語っていくけれど、ここ最近のブームは目をみはるものがあるよね。

 それこそドキュメンタリー映画である『リビング ザ ゲーム』が公開されているし、またNHKでも『プロフェッショナル 仕事の流儀』で新しい仕事特集の一環とはいえ、ピックアップされているし」

主「少なくともNHKは『仕事』として認めたわけだしな。

 日本で最初のプロゲーマーであり、今でも第一線で活躍し続ける偉大な存在であることは間違いない」

 

カエル「でもさ、どこがそこまで惹かれるの?

 単にゲームがうまい世界王者ってだけではないの?」

主「やはり新しいことを始める人というのは独特の思考を持っているわけだけれど、それが梅原の場合もかなり魅力的なものである。

 特に、プロゲーマーなんてまだそこまで一般的な認知度があるわけではない。

 世間からの逆風もある中で、どのように向き合っていくのか……そこをしっかりと考えている人でもあるんだよね。

 ということで、ここからは『リビング ザ ゲーム』を引き合いにしながら、eスポーツの現状について考えていこうか」

 

 

 

 

 

2 映画『リビング ザ ゲーム』とeスポーツ

 

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作品紹介・あらすじ

 

 アメリカを中心に世界中で人気を集めるテレビゲームの大会に出場するプロゲーマーに密着したドキュメンタリー映画。

 日本でも高い人気を誇る『ストリートファイターシリーズ』を中心として格闘ゲームにて日々実力を競い合っている中で、大規模な大会が登場する。そこに勝ち抜いた実力のあるゲーマーたちの中でスポンサー契約を結び、賞金を稼ぐなどして生活を送るプロゲーマーが生まれた。

 アメリカ・ラスベガスで開催される最も権威のある大会である『EVO』で2度の連続優勝を果たした梅原大吾や、その梅原を倒すべき執念を燃やすももち、そして海外のプレーヤーたちの奮闘と社会との関わりかたについて密着取材している。

 

 


映画「リビング ザ ゲーム」予告編

 

 

カエル「では、まずは簡単に『リピング ザ ゲーム』の映画の紹介をしたけれど、この作品のメインでスポットライトを浴びるのはむしろ梅原大吾よりも、そのライバル的存在として描かれるももちなんだよね。

 ももちは同じプロゲーマーのチョコブランカという可愛らしい彼女がいるけれど、2人とも定職には付いていない。そんな状況でいつまでプロでいられるのか、そのあとはどうすればいいのか? という不安を抱えながらもゲームの世界に邁進している姿を描いていたね」

 

主「フリーで働いていたり、プロスポーツの世界で働いている人も共通する悩みなのかもしれないけれど、でもプロゲーマーの場合、最も特徴的なのは『まだ新しい仕事』ということだ。

 梅原がプロゲーマーになったのが2010年、今でもまだ10年も過ぎていない。

 この映画の撮影時はさらに数年前だから、さらに今よりも新しい仕事というということになる」

カエル「しかもさ、ゲームの世界だから……世間からリスペクトされているわけではないじゃない? これがプロ野球選手やサッカー選手であれば、引退後も一定の評価や尊敬はされると思うけれど、じゃあプロゲーマーです、ということを聞いてどれだけの人が理解できるか……」

 

主「例えば自分であればブログを書いて、それがライター業として評価されて、ステップアップすることもあるかもしれない。だけれど、ゲームが上手いというのがどれだけの価値になるかは、未だに不透明なところがある。

 世間一般ではただ単に遊んでいるだけという見方をする人も多いかもしれない、その現状を描いていたね

 

1日ひとつだけ、強くなる。

 

『強さ』と『面白さ』と

 

カエル「これってどの勝負事も同じだろうけれど、プロって一体何だろうということは考えるよね。

 もちろん、優勝することは大事だし、賞金を稼ぐからプロである。スポンサーも注目をされないと集まってくれない。だけれど、じゃあ強ければそれでいいのか? と言うと、そういう簡単な話でもないわけで……」

主「自分は格闘技好きだから、ちょっとこの問題はわかるんだよ。

 一番格闘技が盛り上がったプライドの時代でさ、セームシュルトが結構強かったのね。だけれど、試合自体は何も面白くない。それよりも、決して戦績はいいとは言い難いけれど、ゲーリー・グットリッジとかドン・フライの方が好きだった。そういう人ってたくさんいると思うよ」

 

カエル「勝つことが重要なのか、魅せることが重要なのか……

主「もちろん、一定以上の技術があって勝ち上がれることは前提となる。だけれど、プロというのは差がほとんどなくて、トップクラスとなるとほぼ運の要素も出てくるわけだ。

 その中でじゃあどちらが大事なのか? ということが出てくる。

 特にゲームのようなデジタルで人工物の要素が強いものは特にそうかもしれない」

 

カエル「ポケモンの世界大会とか見て、世界のチームはそれぞれ特色があるのに対して、日本チームは徹底した効率重視でほぼ同じようなポケモンばかりで、見ていてつまらないということもあるよね。確かに、それは正解なんだけれど……」

 

東大卒プロゲーマー (PHP新書)

 

強さから面白さへ

 

カエル「梅原大吾は強さを追い求めていた時期もあるけれど、ある時から転向して面白いを追求するようになったんだよね。

 そしてももちはやはり合理的な強さを追い求めていて……今はまた違うらしいけれどね」

主「昨年自分が一番感銘を受けた記事が、eスポーツ関連では『ときど』を扱った記事があるけれど、元々東大生であった『ときど』は徹底した合理主義だったけれど、ある時から情熱面に、面白さを重視することに目覚めたようで。

 で、その結果EVOにて優勝することができたという記事だった」

 

カエル「映画の中でも『伝説の1戦』がすごく大事って言っていたけれど、それが見事に伝わってくる話で……あの大会の解説を聞くと、本当に神様がそういうシナリオを書いたとして思えなかったよね」

主「これってさ、いろいろな部分でも当てはまると思っていて……

 合理性を重視した強さだけでは、おそらく天下を取ることはできない。もっと重要なのは、それを楽しむことができるか? ということでさ。

 自分は押井信者だから余計に思うけれど、梅原大吾の語ることって押井さんの語ることに似ているような気がするんだよね」

 

eスポーツマガジン (白夜ムック565)

 

重要な『勝敗論』

 

カエル「……はぁ?」

主「重要なのは勝敗論であるけれど、じゃあ勝利とは何か? という話で。

 お金を稼ぐことが勝利であるならば、プロゲーマーとかYouTuberとか、ブロガーなんて即刻やめて、起業家や株などのディーラーになるべきだ。その方が圧倒的に、しかも手っ取り早く稼ぐことができる。

 勝利とは何か? それを規定することが非常に重要になってくる。

 それを幸福とか、楽しむこととするならば……合理的なプレイが必ずしもそれを約束しているとは限らない。むしろ、それを裏切ることだって多々あるわけだ」

 

カエル「合理的なプレイを追求するあまりに楽しむことができなくなったり、苛立ちばかりで却って不幸になったり、周囲の反応が鈍くてスポンサーが付きにくかったり……ということはあるかもね」

主「だから、結局は『何を勝利とするのか?』という問題なんだよ。

 社会的な地位を手に入れるのか、自分の人生を幸福にするのか、自己実現を果たすのか、お金を稼ぐのか……いろいろある。それをどれだけ見失わずにいられるか、そして最適な答えを見つけることができるのか……それが重要ということだ。

 ただし、人と違う道を歩むとそれだけで孤独になったり、つらい思いをするかもしれない。

 結局安定しているサラリーマンが一番という結論になるかもしれないけれど……本来は『楽しむこと』が一番重要なゲームだからさ、趣味で終えるのもいい。

 むしろ、それが普通だ。

 だから何が勝ちで何が負けなのか……それはプロゲーマーでなくても、自分の人生を実りあるものにするために、しっかりと見極めていきたいところだね

 

 

 

最後に

 

カエル「で、映画としてはどうだった?」

主「面白かったよ。ただ、ドキュメンタリーとして突出したものがあるか? と言われるとそれは難しいかもしれない。結構工夫はしているけれど、そんなに長い映画ではないのに退屈になってしまうことはあったかなぁ……

 でもゲームやeスポーツに興味がある人、また新しい仕事を始めるというのがどういうことなのか興味がある人はとにかく観て欲しい映画だったね」

 

カエル「ももちや梅原大吾の他にも海外のプレイヤーもいて、その国のゲームの環境なども勉強になった作品だったね」

主「もしかしたら日本は後進国ではあるけれど、まだ理解はある方なのかもしれないなぁ……なんて思ったり。

 下地は間違いなくあるから、きっかけがあれば爆発的な人気を誇ることになるかも。あとは……ゲーム業界のガラパゴス化が問題かなぁ」

カエル「というわけで、ゲームとeスポーツについて考えた記事でした!」