物語る亀

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物語愛好者の雑文

『コードギアス 反逆のルルーシュⅢ 皇道』ネタバレ感想 ギアスが描けなかったものを描こうという意思が見えた!

 

 

コードギアスの総集編映画シリーズもいよいよこれでおしまい!

 

 

ここから次へとどのようにつながるのか!

 

 

カエルくん(以下カエル)

「えっと……新作はこの総集編映画の次のお話ということでいいんだよね?」

 

「土屋プロデューサーの話だとそうみたいだね。

 最初はテレビシリーズの続編という話だった気もするけれど……やはり変えてきたのかな?」

 

カエル「色々と変更箇所も多いから、しょうがないかもね。

 あれはあれ、これはこれということで楽しんでいきましょう!」

主「では、記事の始まりです」

 

 

 


『コードギアス 反逆のルルーシュⅢ 皇道』特報

 

 

 

 

感想

 

 

では、まずはざっくりとした感想から始めます!

 

 

 

 

今回は総集編だけれど、ものすごく大きな変更点は1カ所くらいかな

 

カエル「全体的にはすっきりした印象もあるよね。

 特に、後半の流れ自体はほぼ同じだったかな?

 それまでは再構成でバッサリと切った場面も多かったけれど、今作は流れ自体もほぼ同じだし」

主「逆に、ラスト付近とあって切るポイントなんて全くなかったということだろうな。

 その分、荒さが目立つ作品になっていて、総集編映画ではどうしようもない部分でもあるけれど、展開の速さや間合いの悪さが気になった部分もある。

 あとは……これはネタバレにならないとは思うけれど、一応濁すとルルーシュにとって、ロロがああいう結末になるわけじゃない?」

 

カエル「これだけでもなんとなく感付きそうな語り方だね……」

主「そのシーンはとても感動するけれど、やはりテレビシリーズの引きとして使われたシーンが、この映画では割と序盤で行われることになってしまう。

 そのために、その感動ポイントがイマイチ盛り上がらない……特に、映画版ではロロが何かしたわけでもないし」

カエル「R2の描写は前回もかなりバッサリといったしね……」

 

主「その意味では総集編としての難しさは多く感じたかな。

 あと、音楽はとてもいいけれど、その使い方もちょっと乱雑な印象も受けたかなぁ……工夫も多くあったけれどね。

 でも、やはり全体的な満足度はあるよ。ギアスファンだし、好きな作品なのは変わらないね」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

コードギアスとはどういう物語か?

 

谷口悟朗作品の中のコードギアス

 

 

今回は総集編ということでネタバレなしで語ることもほとんどないので、早速ネタバレありで語ります!

 

 

ここから先はコードギアス論を語っていきます

 

 

カエル「谷口悟朗作品に多大な影響を受け、00年代を代表する上に、その時代のアニメを考える上で、とても大事な監督であると主張している人間からして、コードギアスとはどういう作品なの?」

主「以前にも語ったけれど、自分の中でコードギアスという作品は谷口悟朗作品の中でも特別上位に入るわけではない。

 『プラネテス』がダントツ1位。

 理由はお仕事もの、社会的なメッセージ、人間の内包する愛について言及したSF作品であり、アニメのみならずこれ以上の宇宙を舞台としたSF映像作品はほとんどないと断言している。

 みんな大好きな洋画すらも……プラネテスには劣るとおもっているほど。それほど、とてつもないテーマと社会性、メッセージ性を内包した物語をエンタメとして作り上げた名作です」

 

カエル「……あくまでも谷口悟朗信者の意見としてお聞きください」

主「その次が『無限のリヴァイアス』『スクライド』だね。この2つもかなりレベルが高い。そして『コードギアス』『ガンソード』が同じくらいの評価かな。いちいち語るとあれだから、とりあえずこんなもんでね」

カエル「あくまでも個人の評価です。

 ただ、どの作品もその時代を代表する傑作である! ということは保証します。

 本当、このライナップの監督を務めているだけで異次元の監督ですよ!」

 

 

 

谷口悟朗作品の共通点

 

カエル「それで、谷口悟朗作品の共通点ってどこにあるの?」

主「う〜ん……基本的には『明日を求める物語』が多い印象がある。

 リヴァイアス、プラネテス、ギアスは明確に明日を求めている。

 ガンソードもラスボスの思想と、それに反感を持つ主人公の反逆という意味では、シャルルとルルーシュの関係に近いし、ギアスっぽい部分は多いかな。

 スクライドは……カズマは多分明日とかどうのこうの考えていないから、わからないけれど」

 

カエル「とりあえず気に入らない奴をぶん殴りたい、難しいことはどうでもいいってキャラクターだもんね」

主「あとは『反逆者の物語』を多く描いているよね」

 

  • 無限のリヴァイアス→現体制に疑問を抱き、答えを求め続けり
  • スクライド→強者の理論などを全否定して生きたいように生きる
  • プラネテス→社会や才能の壁、人々が不可能と思えることへの挑戦
  • ガンソード→痛快娯楽復讐劇
  • コードギアス→自分の生まれてきた環境への復讐

 

主「こうやってみると、コードギアスという物語はそれまで谷口監督が描いてきたことの集大成のような作品でもあるわけ」

カエル「どのような統治や、ルールが正しいのか? を探る『リヴァイアス』と『プラネテス』

 強者に対して武力での抵抗を描いた『スクライド』『ガンソード』の先にある物語、かぁ……」

主「その目線で見ると、コードギアスも新たな発見があるんじゃないかな?」

 

 

シャルルの野望

 

カエル「シャルルの野望ってどんなものだったの?」

主「いわば、究極の共産主義だよ。

 みんなが接続して、同じ意識を持とう。一人一人の人格は排除してしまい、人類という1つの個体になろうという計画だよね。

 いわば『人類補完計画』なわけだ。

 あのCの世界では生きている人も死んでいる人もいないわけだから、クロヴィスが死のうが、もっと言えばルルーシュ達の生死もそこまで重要じゃない。

 だから世間のことは『俗事』なんだよ」

 

カエル「それはガンソードの鉤爪の男が目指した境地にも似ているよね。全ての怒りの感情を無くして、穏やかなで平和な世界を作ろうという……」

主「それをルルーシュ達は否定したけれど……自分にとっては、どこか子供のわがままな気がする。

 でもさ、もともとが狂信者たちのわがままから始まっているから、まともに相手をする必要もない話であって。だからこそ『俺たちは明日を望む!』という言葉であったり、またガンソードのように怒りの私怨で敵を討つということになる」

カエル「人はそれぞれ違う、ということを前提にしながらの統治に舵を切るわけだね」

 

 

 

シュナイゼルの野望

 

カエル「一方でのシュナイゼルの野望は?」

主「シュナイゼルはそれこそ『力による統治』でしょう。

 ルール順守の元にある、恐怖の力で人々を支配するやり方。

 今の法治国家と同じようなことだけれど、それを世界レベルで行おうとしただけに過ぎないようにも思える。

 シャルルと違うのは……おそらく、シュナイゼルには『個人』という概念がない。

 自分の野望のためではなく、それが純粋に全先のためだと思って行動している」

 

カエル「……その法治国家であり、恐怖での統治に対して疑問を抱くのは『無限おリヴァイアス』と同じだよね」

主「シュナイゼル自身は功利主義者だろう。

 つまり『最大多数の最大幸福』を目指し、そのためには少数の人間の犠牲は気にしない。そして、その少数の人間の中には自分すらも含まれている。そういう統治主義であり……今作の描き方は癖があるからあれだけれど、でもシュナイゼルの考え方を支持する人も一定数以上はいるんじゃないかな?」

 

カエル「民主主義に近いとも言えるのかな?

 あのシステムを作った後、どうやって統治者を選ぼうとしたのかは不明だけれど……でも世界に対して公平に見張る、世界政府みたいなものがあればそれがいい、と考える人は多いかもね

主「でも、谷口監督はその考え方を否定する。なぜならば、それは恐怖で人を縛り付けるだけの、現状維持でしかないからだ、と語るわけだ。

 ではどうするのか? というのがルルーシュの野望なわけ」

 

 

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ルルーシュの野望

 

 

それでは、いよいよルルーシュの野望の話になるけれど……

 

 

これはすごく難しい問いでもある

 

 

主「……結局さ、コードギアスのツッコミポイントの1つに『じゃああの後の世界はどうなるの?』ってことがある。都合の悪いことは全部ルルーシュのせいになり、それで世界は統一された。いい世界になった……かもしれない。

 だけれど、ゼロ(スザク)はいつかは亡くなるし、世代交代などを経てまた大きな災厄は訪れるかもしれない。

 ……これはさ、日本の作品が『反戦』を描きながらも、恒久的な反戦は描いたことがないという理由の1つでもあるんだ」

 

カエル「えっと……どういうこと?」

主「例えば『ガンダムW』でも劇場版で『戦争は無くなった』と語るけれど、そんな簡単な話じゃないでしょ?

 兵器がなければ棍棒で戦う。棍棒がなければ素手で戦う。それが人間だ。

 アインシュタインの名言と同じだよね。

『第三次世界大戦がどのようなものになるかはわかりません。しかし、第四次ならわかります。石と棍棒で戦うでしょう』

 

カエル「つまり、核戦争の先の未来は人類は滅びるしかない、ということだよね……」

主「逆に言えば……それほどの大きな戦争を行った後でも、人類はまだ戦い続けるかもしれない。闘争本能は抑えられないだろうし、人間には欲があるからね。

 その先を描くことが日本の作品はできていない……というか、世界中にそんな作品は存在しないと思うけれど。

 その意味ではシュナイゼルの考えた統治方法は現段階では最も合理的なのかもしれない。

 もちろん、ツッコミどころもあるけれど……少なくとも、ルルーシュの成し遂げた未来よりは、持続可能性がある」

 

 

 

 

明日を望む精神

 

カエル「じゃあ……ルルーシュのやったことって無駄だったの?」

主「ある意味では無駄だったかもね。

 結局、ルルーシュがやったことは『誰もが憎む巨悪になり、それが倒されることで世界をリセットする』ということで……ナナリーやスザクをはじめとした、次の世代に対して希望を繋げた。

 それがルルーシュの望む『明日』だった。

 結局はさ、本作って『ピカレスクロマン(悪党の物語)』なんだよ。つまり、悪の大魔王が倒されることによって、すべての物語がすっきりと解決する物語」

 

カエル「……だから悪党であるルルーシュが倒されて全部おしまいなんだ」

主「そう。結局、じゃあ社会はどうあるべきなのか? という課題に対しては何1つとして答えは

 出せなかった

 

 

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『破壊者』の物語

 

主「その意味では『無限のリヴァイアス』と何1つ変わっていないの。もしかしたら、谷口監督はそんなことに全く興味がないのかもしれない。

 いや、ないと断言してもいいくらい、それが伝わってくる。

 結局、監督が描きたいのは『個人の反抗』なわけでさ……ある種の破壊者たちの物語なんだよ。

 そして、我々はその破壊者たちの物語を愛している

 

カエル「えっと……それは爆発とかが好きとか、そういうこと?」

主「例えば織田信長にしろ、幕末維新志士にしろ、彼らはそれまでの既存の考え方を破壊した存在でしょ?

 破壊というのは快楽性があり、エンタメ性があり、今でも人気がある。

 でも、実際に時代を作ったのは徳川家康だったり、伊藤博文などの統治者なんだよ。決して人気者とは言いづらい、地味な存在だけれど、そういう人が今につながる制度を築き上げた」

 

カエル「谷口作品も同じだと?」

主「そう。結局『無限のリヴァイアス』『スクライド』『ガンソード』『コードギアス』も変革の先がない。

 『プラネテス』はちょっと特殊な作品だけれどね。

 エンタメとしてはそんなものを書かないのは正解。

 だって、それが新たな権力になるし、はっきり言えばつまらないだろうし。

 では、問題はこの先何を描くのか? だよね。

 さあ、この続編はどうなるのか……それがものすごく楽しみだし、今の谷口監督たちがどのような結論を用意しているのかな? と気になっている

 

 

 

 

シャーリーの重要性

 

 

え〜……では、ここで重要なネタバレがあります! シャーリー生存しました!

 

 

おめでとうシャーリー!

 

 

カエル「テレビシリーズしか見ていないお客さんも多いだろうし、どのように説明するのかが気になるけれど……でも、これはものすごくよかったね!

 ちなみに何度か語っていますが、うちではシャーリーを激推ししています!

 

 

主「Twitterでも書いたけれど、シャーリーというのはとても重要な存在でさ。

 自分はギアスのルルーシュ周辺の主要キャラクターは以下のように考えている」

 

  • ゼロを愛したカレン、楽那
  • 兄を愛したナナリー
  • 共犯者のCC
  • ルルーシュを愛したシャーリー

 

カエル「ふむふむ……結局、カレンや楽那もルルーシュと敵対する関係になったわけだしね」

主「1部の追加シーンで象徴的なのが、街の人々がゼロの歌を歌っているのに対して、シャーリーはルルーシュを探しているんだよね。

 これは、ゼロではなくてルルーシュを求めている、ゼロなんてどうでもいいというシャーリーの立ち位置を表している。

 この作品の中で……確かに蚊帳の外なシーンも多いけれど、ずっとルルーシュの味方であり続けた数少ない存在なわけ。

 銃口を向けたりもしているし、学園関係者だとリヴァルなどもいるけれどさ。

 ゼロに親を討たれたも、記憶を消されてもルルーシュを愛し続けた女性がシャーリーである

 

 

 

シャーリーとユフィ

 

カエル「そしてもう1人の注目人物がユフィということだけれど……もちろん、ルルーシュと並ぶ主人公であるスザクにとってのヒロインというのもあるよね?」

主「それと同時に、ユフィもまた『愛』の人間である。

 でも基本的にシャーリーとユフィの愛って違うものでさ。

 シャーリーの愛は『ルルーシュへの個人の愛(エロス)』

 ユフィの愛は『万人に向けられる慈悲の愛(フィリア)』

 つまり、ヒロインという立場は同じでも少し違う存在であるんだ」

 

カエル「そしてヒロインである2人がああいうことになることで、物語は決定的な道へと進んで行くね」

主「この総集編を見ていて、相当シャーリーの新規カットが多かったし、かなり力を入れているということがわかる。もちろん、主要なルルーシュ関連の女性キャラクターの中でも、数少ない退場してしまったキャラクターだからというのもあるけれど……

 この先の物語を描く上で、非常に重要な存在だと考えていることがわかる。

 だから、劇場版のラストでもシャーリーの名前がちょっと上がるんだよね。

 あそこで名前が挙がった2人と、当然CCが重要な立ち位置になると思うし、個人としてのルルーシュを支え続ける存在になるのだろう

 

カエル「ちなみに、すごくどうでもいいことだけれど……シャーリーに限らず、女性たちのスカート短すぎない?」

主「それはご褒美だから。エンタメ性だから、しょうがないよね」

 

 

 

 

まとめ

 

 では、この記事のまとめです!

 

  • 総集編映画の域はでないものの、やはり傑作アニメ
  • 破壊の後の世界をどのように描くのか?
  • シャーリーはルルーシュにとって非常に重要な存在!

 

 

続編、めっちゃ楽しみにしています!

 

 

カエル「そりゃ、誰だってあれで終わっているから続編なんて……と言うと重いけれど、でもそれを理解して制作を発表したわけだしね!」

主「あれだけの作品なので期待値も高いだろうし、超えるべきハードルもあるでしょうが、期待して待っています!」

 

 

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