物語る亀

ネタバレありの物語批評

『劇場版 Free! Timeless Medley 約束(フリー)』感想 鮫柄の物語を作るのは少し難しかったのかな? 

カエルくん(以下カエル)

「じゃあ、またまた『Free』の総集編の話題だよ!」

 

亀爺(以下亀)

「そういえば『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』も見てみようと思っておったのに、すっかり忘れておったの」

 

カエル「ここ最近新作映画を中心に観ているから、旧作の勉強が全く追いついてないからね。2016年、2017年に公開された映画だけ異様に詳しいというのも、よく考えてみたら変な話だし」

亀「本作も本来はテレビシリーズを全て見るのがいいのじゃろうが、1クール……CMや曲を除いても5時間はかかってしまうからの。しかしハイスピードはともかくとして、劇場版という総集編があれば、そちらで2時間弱でおさらいが出来るから助かるものじゃな」

カエル「ヤマトもテレビシリーズを全て見るのはなぁ……って思っていたら『劇場版があるよ』のコメントにハッとしたもんね。何のための劇場版だ! って。

 なんか知れば知るほどに映画やアニメの世界って歴史を感じさせて、評論家の知識量の凄さに舌を巻くよね……この世の中の全ての作品を鑑賞するなんて、絶対不可能なことだし」

 

亀「これだけ膨大な作品群の中からどの作品に出会うのか、というのはある意味では人に出会うのと同じくらい奇跡的なことなのかもしれん。一生の出会いになることもあれば、別れた瞬間に存在を忘れてしまう作品もある。むしろ印象に残る作品の方が少ない。

 そのためにも見る作品は限定しない方がいいんじゃろうな。色々な人に会うのと同じように、時には趣味ではないような色々な映画やアニメなどの物語の作品群を見るのも大事なことじゃ。それが一生の出会いになるかもしれん」

カエル「実際に本作も『絆』が初Freeだったけれど、総集編だから走っちゃったところは気になったけれど十分面白かったしね。さすがは京アニだ! って気分だった」

亀「今回の約束も非常に楽しみにしておるぞ。

 ではその感想を書いていこうかの」

 

 

 

『劇場版 Free!-Timeless Medley-』オリジナルサウンドトラック

 

全体の感想

 

カエル「じゃあ、まずはざっくりと感想から入るけれど……すごくやりたいことはわかるけれど、ちょっと辛い評価になってしまうというのが正直なところなんだよね……

亀「もちろん映像のクオリティは決して低いわけではない。テレビシリーズの劇場版じゃから、アニメ映画としては少し落ちるかもしれんが、天下の京アニじゃから見ていて雑に思う部分というのもそうは多くないじゃろう。

 演出などはそこまで輝いたな、と思うところはないが……それは総集編であるし、あくまでも主人公は『絆』で描かれた岩鳶高校の面々じゃからな

 

カエル「岩鳶から見た水泳と、ライバルであり親友の鮫柄、特に凛と宗介の物語も観たい(作りたい)という制作側の意図はよくわかるんだよ。この劇場版を見ただけでも、この両者のキャラクター性や作り込みってすごくしっかりしていて、魅せることを強く意識しているなぁって印象だったし。

 だけど、それがうまくいっているかというと……絆はうまくいっていたけれど、約束は失敗していると思うんだよなぁ

亀「先ほどもテレビシリーズと劇場版の話をしたがの、単純に1話30分として1クール(13作)だと7時間半じゃが、CMやOPをカットすると……そうじゃな、5時間強といったところかの? 

 それを劇場版の2時間×2本の映画にしようとしているわけじゃから、どうしても選ぶシーンが被ってきてしまう。被るのはいいと思うのじゃが……物語として成立がしなくなってしまった印象じゃの」

 

カエル「なんていうか、はっきりとわかるのが『Freeって岩鳶高校の物語なんだな』ってことで……当たり前だけどね。主人公は遥なわけだし。

 それを凛目線に改変するとここまで苦しくなるんだ……というのがよくわかった

 

以下作中に言及あり

 

 

完成されたキャラクター

 

カエル「なんていうかさ、お話にメリハリがなくなってしまっているんだよね

亀「そうじゃな。絆の時は遥の進路問題などという葛藤が確かにあって、それを乗り越えていくという物語になっておった。そのための手段としてメドレーがあり、それに強くこだわる理由にもなっておった。

 日常→試練→葛藤→成功→達成という流れができており、1つの物語としてしっかりと見せ場を作ることにも成功していたわけじゃ」

カエル「だけどさ……凛たちにも試練や色々な問題は抱えていたけれど、それが映画として生きていたのか? 物語として生きていたのか? と言われると、なんだか微妙で……」

 

亀「難しいところじゃの。

 本作スタート時点においては凛の問題は解決し、葛藤を抱えておらん状態で始まっておるとわしは解釈しておる。人間として成長し、部長として後輩を指導しながらも、自らも成長している……なんの問題もない、立派な人間じゃな。それは凛が獲得したものなのじゃが……それはこの映画とは関係ない」

カエル「総集編だから過去の映像を回想として流されるけれど、そこでは確かに凛も問題を抱えているんだよね」

亀「凛も宗介もスタートからして完成されてしまったキャラクターじゃ。もちろん、彼らには……特に宗介には大きな試練が襲いかかってくるものじゃが、あるのもそれだけ。精神的な弱さもほとんどなく、非の打ち所がないキャラクターというのは、物語の主役として面白くするのは難しいんじゃよ

 

カエル「あとは冒頭のお父さんに関するお話と作中のお話のリンクが弱い印象があって……確かにメドレーにこだわる理由や気持ちはわかるけれど、それが伝わって来るとは言い難いんだよね」

亀「わしはあのお父さんのお話は分かりやすいドラマではあるが、京アニの演出などもあって結構引き込まれたのじゃが、その後にあまり生きてこなかった印象じゃの。

 例えば時計の演出などはその先生きてくるのかと期待しておったが……それも解決済みなのかもしれんな

 

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山場と谷場

 

カエル「今作が1番悪いのってここだと思うんだよ。明らかにおかしいと思わせるシーンが多くて……整合性とかではなくて、流れとして違和感があったというか」

亀「先ほどから言っておるように、本作を総集編として再構成した時の欠点なのじゃろうが、結局のところ凛の役割というのは遥のライバルであり親友、というポジションじゃ。その中で鮫柄の部長などもこなしておる。

 その流れでみた場合に、彼がやるべきことが一体なんなのか? というのが見えてこなかった。

 『約束』の物語としては鮫柄を鍛えることが1番重要なことであるが、しかし『Free』の物語としては遥の競争相手というのが重要じゃ。

 その2つの役割がバッティングし、凛が何をしたいのか? という目的を見失わせてしまったの

 

カエル「あとは物語のドラマ性が1番盛り上がるところがおかしいんだよね。中盤に熱いシーンがあるのはいいけれど、終盤はヌルっと終わってしまって……」

亀「中盤に訪れる試練を乗り越える。これはこれで感動的な流れになっておったのじゃが、その後に本来入るべきものが一切なかった。

 なぜ凛はオーストラリアに行ったのか? その描写は?

 最後の試合はどうなったのか? 結果は?

 そういったことが全てカットになっておった。なぜならば、それは『絆』の物語であり、メインの岩鳶側の物語じゃからな。それらのドラマ性が一気に爆発するポイントが、全て不発で終わってしまったの

 

カエル「厳しいようだけど映画として成立していないし、もっと言えば物語として成立もしていないよね……」

亀「これは難しいことであるが、完成されたキャラクターを主人公にしてしまったことも原因としてあるかもしれん。試練はあるが、結局は気合で乗り越える。それ自体が悪いとは言わんが、1つ1つの描写が浅すぎるから、ご都合主義のようになってしまっておる。

 他の鮫柄メンバーの見せ場もほとんどなく、ほぼ紹介だけで終わってしまった印象もある。むしろ、映画としては似鳥を主人公にした方がもう少し何とか体裁は整ったと思うが、それでは総集編ですらないからの」

 

カエル「う〜ん……じゃあ、どうしようもなくない?

亀「どうしようもないの。与えられた素材は懸命に調理しておるが、それが全くできていない印象じゃな。

 まあ、でもファンが喜んでくれればいいし、この後に続くオリジナル劇場版が面白ければ別に構わないがの、わしは」

 

 

 

最後に

 

カエル「でも、悪いところばかりでもなくてやっぱり宮野真守と細谷佳正の演技が抜群に良くて! 特に細谷くんは今休業中だったはずだけど、この作品を見ると今のアニメ界に必要な声優だよなって痛感したし!」

亀「最後にすべてを持っていったのは間違いなく宮野真守じゃからな。終演後は彼の話題で持ちきりじゃったわい」

カエル「あれは反則だよねぇ。さすが! って思うのと同時に笑いが止まらないし!」

 

亀「それから前作と変わらずフォトセッションなども開催したりするなど、ファンのための映画というのは非常に意識されておったの。1日DAYと言うのもあるが、場内は満員じゃったな

カエル「意外と男性が多い印象はあったかな? 少なくともキンプリよりは女性ばっかりってことはなかったよ」

亀「天下の京アニじゃからな。

 それにしても……本作のキャラクター名を見ておると、中性的な名前が目立つの。遥とか、真琴とか凛などはわしなどはむしろ女性名の印象があるがの」

カエル「これも時代の流れだよね。今は中性的なキャラクターや人物が可愛い! ってことで流行る時代だし」

亀「権蔵とか慎之介などという名前はすっかり見なくなったの……」

カエル「……それは中性的云々よりも時代が違うからじゃ?」

 

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