物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ドクター・ストレンジ』感想(若干否定気味) この映画って、あの名作SFオペラみたいだなぁ 

カエルくん(以下カエル)

「今回はこのブログでは珍しく、ヒーロー映画を取り扱うよ!

 『スーサイド・スクワッド』は取り扱ったことがあるけれど、真っ当なマーベルヒーロー映画は初めて記事にするね!」

 

ブログ主(以下主)

「当初は見に行かない予定だったもんなぁ……評判がいいから見に行くことにしたけれど、それが正解だったのか不正解だったのかは……この記事を読んで判断してね」

 

 

カエル「こんなツイートまでして……

 で、主が見たことがあるマーベルとかジャスティスとかのヒーロー系の映画って何があるの?」

主「それこそ、スーサイド・スクワッド以外は映画館では見たことがないかも

カエル「……え? 1作も?」

主「1作も。DVDで『ダークナイト』と『デッドプール』はDVDで見たけれど、どちらも異色のヒーロー映画だしねぇ……」

 

カエル「なんで見ないの!? 映画好きってみんな見るんじゃないの!?」

主「……それは偏見な気もするけれど、まあいいか。

 じゃあ、そこも含めておいおい説明していくよ」

 

 

 

 

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1 ネタバレなしの感想

 

マーベル愛が試される映画!?

 

カエル「えっと……じゃあ、そんな人が見た感想を書いていくけれど……」

主「まずはさ、この手の作品を語るのは、やっぱりマーベル愛に溢れたファンであるべきだ、という思いはあるよ。だから、にわかですらない自分がゴチャゴチャ言うけれど、ファンはそれを気にしないでほしいんだよね。

 これは保身じゃなくて、そのシリーズのファンでないと分からない良さって絶対あるから

 

カエル「……どういうこと?」

主「シン・ゴジラはこのブログで大絶賛したけれど、自分は批判もあった石原さとみが演じるアメリカ人の役も絶賛なんだよ。なぜならば、ゴジラシリーズってああいう……よく分からないキャラクターって結構多い。

 例えばモスラの小美人とかさ、金星人とかが出てくるから、ああいうコミカルに見えるおかしな役のキャラクターって、むしろゴジラっぽい(特撮っぽい)なぁって思うのね。だけど、その流れを知らない人は『なんだこの役は!』ってなると思うのよ」

 

カエル「お約束ってやつだよね。水戸黄門は毎回同じ流れって指摘しても無粋なだけだしね」

主「そういうのがわからない人からすると、実はお約束がただの粗に見えたりもする。『そこがいいのに! 何もわかっていない!』って意見もあるだろうねってこと」

 

 ちなみに最新巻の『木根さんの一人でキネマ』に同じようなことや論争が書かれていました。映画ファンのあるあるがつまった漫画です。

 

 

ド派手な演出

 

カエル「ここは誰もが賞賛するよね!

 カメラワークとか、街が崩壊していく様子とかが本当に凄かった!」

主「そうね。よく言われるのが『インセプション』とか『マトリックス』だけど、ああいうSF系アクション映画の正当な進化だと思う。この映像の迫力は賞賛するよ。

 これから見に行くという人は3Dをお勧めする。ちょっとお金は張るけれど、それだけの価値はあるのは間違いない」

 

カエル「ただ、酔いやすい人は注意かもね」

主「そんなに長くグリグリと動かす描写が続くわけではないから、酔いやすい人にも配慮はしているな、と思った。だけど、こういう演出はすぐに酔うという人は、2Dにしておいたほうがいいかも。

 あと、今回は時間の関係上吹き替えで見たけれど……どっちでもいいのかな?」

カエル「演出に集中してもらいたいという意味では吹き替え推奨だよ。だけど、絶対吹き替えってオススメするほどの良かった点もないかな? 

 ただ、吹き替えは見るな! と言うほど悪い印象もないけれど……」

 

主「この辺りは好みでいいと思う。松下奈緒などは声優初体験って言われているけれど、そこまで違和感もないし。

 ただなぁ……アニメ知識が邪魔をしたとすれば、小野大輔がいまいち役と合っているかと言われると、疑問だったかな? 黒人の兄弟子ってイメージが皆無だし。もっとマッチョな声の男性声優にするか、優男風のキャラクターならぴったりだと思うけれど……」

カエル「その辺りは声優知識がない人であれば、全く心配いらないと思うけれどね」

 

 

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脚本について

 

カエル「……で、脚本についてだけど……」

主「ここが本当にツッコミどころ満載でさ……

 いや、元々難しいと思うのよ。

 マーベルが魔法系ヒーローを扱うって聞いた時『あ、これはやばいやつだ』って思ったのね。その理由とかはネタバレありで語るけれど、簡単に言えば、魔法ってなんでもありになるじゃない?

カエル「人が死んで、生き返っても『魔法です』で説明ついちゃうしね」

 

主「だから、多くの魔法が出てくるアクション映画やアニメだと『魔法使い見習い』とか『魔女っ子』ものが多いわけ。それこそ『ハリー・ポッター』なんてそうじゃない? 

 初めからなんでもできる魔法使いを主人公にするより、魔法使い見習いを主人公にすることで出来る魔法に制限をかける。そうじゃないと、本当になんでもありになってしまうから」

 

カエル「今作も最初は名外科医ではあるものの、普通の人間が修行するという描写もあるじゃない?」

主「だけど、魔法をどこまで使えるようにするか、魔法をどう制限するか、ということに迷った印象がある。そこで迷走が目についたかな。

 だから細かいツッコミどころは満載だけれど、マーベルファンからしたら『それにはこういう理由があってね』とか『そこがいいんじゃないか!』ってなるかもしれないから、ファンとそうじゃない人の違いかもしれないね」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

2 ツッコミどころ満載の脚本

 

カエル「……あー、一応言っておくと、ここから先はマーベルファンは読まない方がいいと思います

主「いきなり無粋なツッコミだけど、ストレンジの体が大事故の障害を抱えているようには見えなかったんだよね。そりゃ、手術シーンはあるよ、手も震えているよ。だけど、自分の足でチベットまで行って、しかもあんな修行をこなしているでしょ?

 紙も普通に持っているし、修行や戦闘もこなせている。そりゃ、精密な仕事である外科医には戻れないかもしれないけれど……この時点で結構な違和感があったんだよね」

 

カエル「……無粋だね」

主「だってさ、リハビリしても良くなるかわかりません、手を中心に何本もピンが入っています、とか言われているのに、あんなに元気そうにされたら疑問にも思うでしょ?

 これは小さなことかもしれないけれど、そういうことが積み重なってイマイチだったんだよね

 

カエル「え〜? 他には?」

主「他には、霊体同士で戦うシーンがあるけれど……ポルターガイストのように、物が壊れたり移動したりするわけじゃない? それが都合が良いように、手術には一切邪魔にならないようになっているんだよ。

 なんでストレンジが勝てたのか、ということはわかるんだよ。だけど、その途中の描写があまりにもご都合的に見えて、心中で『オイオイ!』って突っ込んでいたんだよね。

 あとはストレンジが傲慢って言われているけれど、映画としては自信過剰ではあるかもしれないけれど、そこまで傲慢には思えなかったなぁ。実際外科医としての実力もあるし、意外と努力家だし。

 傲慢というよりは自信家だよね。アメリカ人としては普通なんじゃないの、ああいう人って」

 

カエル「……まあ、映画としてみたら珍しい性格ではないかもしれないね」

 

 

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敵と味方の思い

 

主「もっと根本的なことを言うと、なんで師匠と敵の2人が対立しているのかもよくわからないんだよ

カエル「それは自然の摂理を妨害するような行為はしてはいけないからで、そうすると敵の親玉みたいな力の源が出てきて、地球をメチャクチャにするからで……」

主「その自然の摂理がウンタラカンタラって論争があったけれど、そこがまず疑問で……だって、ストレンジの体を治すのは自然の摂理に反していないの? 細胞が結びつくイメージで、とかさ、無から有を生み出すよな魔法をあれだけ使っておいて『不死はダメですよ』とか『時間軸の移動はダメですよ』というのは、納得がいかない。

 どちらも同じ魔法じゃない? だけど、これはいい、これはダメっていうのが都合よすぎる。リスク云々言うなら、他の魔法に関してもリスクがあってしかるべきだと思うし……」

 

カエル「まあ、最後はストレンジも魔法で時間を巻き戻すわけだしねぇ。使っちゃったよ、みたいなことは言っているけれど……」

主「正義と悪みたいな図式にしたいのはわかるけれど、その差別化が全くできていない。それができないから、感情移入も中々出来ない。

 ただ、こうなった理由がわかるだけに、叩きにくいという思いもあるけれど……」

カエル「先にあげた、魔法は便利すぎる問題だね」

 

主「ある意味ドラゴンボールみたいなものだからさ、死んだ人を生き返らせたり、時間を巻き戻したり、瞬間移動を繰り返したり……ということは非常に便利である一方で、乱発すると緊張感をなくしてしまう。

『どうせ怪我してもストレンジが治すんでしょ?』

『時間を巻き戻せば無限にやり直せるんじゃない?』

 といったような、作品世界観すらも崩壊させる可能性がある。それが『魔法』なんだよ。不可能なことを何でも魔法のせいにすればいいから。

 だから、その能力に制限をつけたかったのはわかるけれど、そのやり方が雑なように見えたかな

 

 

 

 

3 拭いきれない粗

 

カエル「さらにまだあるの?」

主「……結局さ、この作品ってファンタジーですごく誤魔化しているけれど『西洋人が考えた誤った東洋イメージ』に満ちているように見える。チベットの山奥に行って、仏教を習って、禅やら何やらをやって……というのは、日本人だったら失笑ものの東洋イメージだよね。

 だけど、それがファンタジー世界で行われるから、そこまで粗に見えない、というのもあるんだけど……」

 

カエル「え? じゃあ何が拭いきれないの?」

主「ロンドンや香港の街中に行くじゃない? するとさ、普通の人に混じってストレンジとかがいるわけだよ。

 そうなると絵としてすごく浮いて見えるんだよね。何このコスプレ大会? って気分になる。仏教などで着る袈裟のような服をまとっているのが外国人だから、余計にそう思えるのかもね。観光客じゃあるまいし……って」

カエル「……そこまで言うの?」

 

主「これがアイアンマンなどのような金属スーツであれば、あまりにも非現実的で却って良かったかもしれないけれど、中途半端に実際にありそうだからさ、余計に観光客風に見えるし……あとはストレンジの衣装もすごく浮いているし。

 それがマーベルファンには気にならないのかもしれないけれど、自分は『なんでこんな衣装にしたんだろ?』 って気分だよ。まあ、原作準拠なんだろうけれど」

 

 

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結局この映画って……

 

カエル「まだ続くの!?」

主「まあまあ……結局さ、この映画って『インセプション』とか『マトリックス』って言われているけれど、それよりもスター・ウォーズなんだよ。あの東洋リスペクトの衣装といい、戦い方も剣(ライトセイバー)と魔法(フォース)っぽいしさ。霊体の会話なんてまんまスターウォーズだよね。

 そう考えると自分の中で色々と納得がいくのよ」

カエル「……どんなの風に納得したの?」

 

主「つまりさ、これは

 

アナキン=ストレンジ

オビワン=モルド

 

 な訳。で、エンシェント・ワンがクワイ・ガン・ジンとか、あとはEP4の師匠であるオビワンとかのマスターだよね。

 で、このお話は結局どういうことかというと、スターウォーズはアナキンがダークサイドに落ちたけれど、こっちはオビワンがダークサイドに落ちたよって話なわけだ」

 

カエル「ラストのED後のセリフはジェダイ狩りをするアナキン=ダースベイダーにも通じるものがあるかもねぇ」

主「なんでこの映画が納得いかないかというと、結局全部借り物な気がしてくるから。映像はインセプションで、中身は当然原作もリスペクトしているけれど、スターウォーズとかも混ぜて来てさ。色々入っているけれど、結局オリジナルが何だったのかはわからない。

 あと、エンシェント・ワンが自分は嫌いなんだけど、その理由もはっきりわかった。ジェダイのマスターが……グワイとか、オビワン、ヨーダなどの嫌いなところを集めたようなキャラクターだからなんだよね。

 スターウォーズのグワイとかは嫌いなところもあるけれど、それに勝る魅力もあるけれど……エンシェント・ワンからはその魅力が一切感じなかったのも痛いところかな?

 

カエル「この考察はオリジナリティがあるけれど、同意は得られなさそうだね」

主「あくまでも個人の感想だから!」

 

 

 

 

4 個人的な思い

 

カエル「なんでそんなに揚げ足取りばかりするわけ!? もっと褒めるべき場所もあるでしょ!?

主「あるよ! マントはすごくよかった! あいつは本作のベストヒロインだよ。あとは……なんだろ、演出がすごいはもう語ったし……」

カエル「もっとさ! 素直に映画を見れないの!?」

 

主「う〜ん……結局、これって自分がアニメ脳なのも関係しているような気がするんだよね。簡単に言うと、この手のヒーロー映画が実写である必要性がわからない

カエル「……は?」

 

主「だからさ、さっきから何度も『インセプション』っていうけれど、ちょっと待ってよと。インセプションって今敏の『パプリカ』の影響下にあるのは間違いないわけで、あの足場が崩れていく演出も『パプリカっぽいなぁ』って思っていたの。

 そういう人間からすると、確かに絵はすごいけれど、じゃあこれをわざわざ実写でやる意義って果たしてあるの? というのが疑問に思えてくる

カエル「じゃあ、主はこれがアニメならそこまで批判しないわけ?」

 

主「脚本の粗としてあげた部分も納得すると思う。ご都合主義っぽいけれど、ヒーローアニメだしなって思うかも。だけど、実写にすることで漫画発信作品特有の粗がすごく見える。

 これってさ、突飛なことを言っているようだけど、言葉自体は『ジョジョや鋼の錬金術師を実写化する意味がわからない』って言っているのと同じだよ。漫画の実写化という意味では同じだからね」

 

 

 

漫画を実写化することの意義

 

カエル「まあ、アメコミということもあるけれど、漫画の実写化という意味では同じなのかなぁ……」

主「確かに技術はすごいけれど、この映画って魔法とかの要素が強すぎて、アニメや漫画感が強すぎる印象がある。これが先にあげた『デットプール』とかって、実写にした意義があったように思うんだよ。映像の迫力もそうだし、観客に語りかけるメタ的な表現を使ったり、映画的な表現だなって思った。

 だけど、この映画からは『実写であることの意義』っていうものが、ビルなどの絵など以外に見出すことができなかった。そしてそのビルの描写も、今敏がすべての元だとまでは言わないけれど、元を辿ればアニメのパプリカの要素は大きいし。

 だから、簡単に言えばヒーロー作品としては魔法を使ったり異色作かもしれないけれど、映画としては凡庸な気がしたね」

 

 

 

最後に

 

カエル「……この記事、炎上しないといいね」

主「コメント欄閉鎖しようかなぁ……

 だからファンは読んでほしくないんだよねぇ。恋は盲目っていうけれど、それはそうなんだよ。自分も偉そうに語っているけれど、好きなアニメ監督が新作アニメを撮ったら少しの粗は見えなくなるし、自分の脳内で補完するから。

 結局、映画に限らないけれど物語って観客の中で完成するものなんだろうね

カエル「少しいい話した風にしてごまかしたでしょ?」

 

主「まあねぇ……薄々感づいていたけれど、こういうハリウッド超大作の娯楽映画とは相性が悪いような気がする。頭空っぽにしてみることがどうにもできない性分だしなぁ」

カエル「相性だけの問題なのかな?」

 

 

 

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