物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『ある天文学者の恋文』感想 天文学者でなければできない恋愛劇 

カエルくん(以下カエル)

「なんだか、こういう小規模公開の映画を語るのは久しぶりな気がするね! 今月はシルバーウィークもあって公開館数が100館超えの映画が多かった印象だなぁ」

 

亀爺(以下亀)

「別にこのブログは小規模公開の映画は見に行かんというわけではないぞ? じゃが、どうしても小規模公開の映画となると、公開場所が限られてくるからの。そこまで出向く時間じゃったり、その他いろいろなことを考えると、どうしても大規模な映画が多くなるの」

 

カエル「映画の質というか、内容も大規模公開の映画と小規模公開の映画では全く違うもんね」

亀「娯楽として万人が面白いと認めるのは大規模公開じゃが、主みたいに穿った映画好きには小規模公開の映画も別の、尖った面白さがあって好きみたいじゃな」

カエル「そして今回はその中でも、恋愛作品を選んだわけだけど……なんで主は恋愛映画が苦手だというのに、そういう映画を見に行くんだろうね?

亀「さての? 『天文学者の恋文』というタイトルだとか、予告編の内容からミステリーやサスペンス要素でも感じたのではないかの?

 

カエル「しかも『とある天文学者の』とかタイトルを間違えて検索するしさ。某禁書目録シリーズと混同してんじゃないの?」

亀「それは、まあ映画の評価と関係ないから、大目に見てやるべきではないか?」

カエル「……じゃあ、恋愛映画が苦手な人間の感想を始めるよ」

 

 


ある天文学者の恋文 予告編

 1 ネタバレなしの感想

 

カエル「じゃあ、まずはレビュー代わりにネタバレなしの感想を始めるとするけれど……どうだった?」

亀「……う〜ん、評価が難しいの

カエル「……だよねぇ。なんだか、途中から眠くなってきちゃったかなぁ」

 

亀「基本的には画面構成も暗く、どんよりとしたお話が続くからの。予告編にもある通り、若い20代の女性と、おそらく50代、60代の老教授の恋を描いた一方で、老教授がある日突然亡くなってしまい、その足跡を辿るというような物語であるが……

 そのような物語だから、終始暗い印象を受けてしまったの

カエル「あんまりメリハリのある話じゃないからねぇ。新しい恋人ができましたとか、恋に生きるのをやめて仕事一筋で……というわけじゃなくて、亡くなった恋人を追い求める話だから、延々と暗い場面が続くよねぇ」

 

亀「そのために上映時間の多くが間延びしてしまっている印象があるかの。

 それと、タイトルである天文学の話じゃが……これもまた評価が難しいの

カエル「天文学である意味はないとか?」

亀「いや、この話は天文学者が相手でないと、成立しない話ではある。あるのじゃが……そこに至るまで、たくさんの専門的な話があるんじゃが、それがうまく生かされておるかというとの……」

カエル「まあ、製作者サイドがその道の専門家ではなさそうってのはわかるかな。理論の名前とか、大体の概要は話すけれど、ここから難しいけれど学問として面白いところを語る前に、場面が切り替わっちゃうところはあるよね

亀「その意味でも色々と詰め込みすぎなのかもしれんの……」

 

カエル「ただ、恋愛映画としての評価はそれなりに高いみたいだね。泣いたって意見もあるし、実際、伏線がすべて回収された時というのは感動があったね」

亀「そうじゃの。この作品が天文学者である意味だとか、なぜこんなことをしたのかなどの伏線が回収された時は『なるほど!』と思わず膝を叩いたの。

 その意味では細かい部分ではいろいろと言いたいこともあるが、大筋ではそれなりにいい恋愛映画に仕上がっておるじゃろうな

カエル「恋愛映画が好きだったら、それなりに満足できるだろうね」

亀「結局、愛は感性で語るものらしいからの。理屈で物語を考える主には理解できんかもしれんが……」

 

 

2 ネタバレありの感想

 

カエル「じゃあ、ここからネタバレありの感想を書いていくけれど……」

亀「まず、演出面はそれなりに面白いと思わせる部分もあったの。

 例えば、スタートの激しい愛の描写の後、教授がホテルの部屋を出て別の部屋に入る。その廊下を長回しで映して、タイトルや役者のクレジットが入るのじゃが、おそらく……1分弱くらいかの? その間、ずっと同じ場面を映しておった」

カエル「ここって色々考えるよねぇ」

 

亀「まず、別の部屋に入ったことにより、この2人の関係性とは何か? という疑問が生じるわけじゃ。歳の差がかなりあるから、普通の恋人同士と考えるのは難しい。そうなると、不倫だったり、学生と教師の倫理的に危うい恋愛だったりという想像が働き、この長回しの末に何が始まるのかと推理しながら鑑賞するわけじゃな」

カエル「まあ、結局はただ単に着替えているだけなんだけどね」

亀「……この作品は一部シーンが長回しで撮られておるのじゃが、それがうまくいっておるかというと……う〜ん、なかなか難しいの。

 絵としては面白いし、演出としてもありじゃとは思うのじゃが……それが物語にどんな効果を生んでいるか、全くわからんかった

 

カエル「最初の例でいうと、ただ単に着替えているだけだったし、2人の関係性も不倫かな? と思わせておいて、教師と生徒の関係ではあるけれど、真っ当な恋愛だったわけだしね」

亀「結局のところ、演出とその意図が食い違っておるように感じられたの。もっと脚本の部分で色々と詰め込もうとしてやめたのか、わしが演出意図を読み取れておらんだけなのか、そもそも考えすぎなのか……そこはわからんがの」

 

 

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展開について

 

カエル「これはさっきも語ったけれど、結構一本調子でメリハリがないから長く感じるよね」

亀「そうじゃの。話の大筋としては

 

教授と女生徒の恋愛関係

教授の失踪と死を告げられる

教授の足跡を追う

諦めて一度追うのを辞めるも、再開する道を模索する

教授の真意を知る

 

 という流れになっておるが、ほとんどが主人公が悩むシーンの連続じゃから、画面がどうしても暗く見えてしまう。もちろん、そういう作品じゃし、無理に明るく振る舞ったらおかしいわけじゃがな」

 

カエル「その意味でもメリハリが付けにくいよねぇ。仕事の……アシスタントやモデルの仕事をしているわけだけど、そっちも悩みで暗くなるしさ。学業も手につかないしで……リアルといえばリアルだけどね」

亀「それから、この展開の意味がよくわからないという描写もあったの。例えば、アパート……というか学生寮かの? に泥棒が入って部屋が滅茶苦茶にされるんじゃが、あれはなんじゃったのか? 単に散らかった中でヒントを見つけるならば、主人公の部屋だけに泥棒が入ったりすればいいのに、かなり大掛かりな盗みになっておるしの

カエル「そうねぇ。あとは仕事もなぜスタントマンだったのか? そんなに一般的でない仕事を選んだ理由とか、そうした意図が見えてこなかったね」

 

亀「それは教授との恋愛関係でも同じじゃな。2人はどこにそれだけ惹かれあったのかなどの説明は一切なかったが……しかし、ここは恋愛もの特有の便利な一言があるからの」

カエル「……ああ、あれね」

亀「そう。『恋愛ってそういうものでしょ?』という奴じゃな。恋に落ちるのに理由はいらないし、そんなものはない。ある日突然落ちるのが恋なんだ、という奴じゃの。作劇視点からすると、非常に便利な言葉じゃな

カエル「……その言葉に頼りすぎて説明がほとんどない作品もあるけれどね」

 

天文学者である意味

 

カエル「でもさ、このラストはうまかったよね。天文学者でなければ、このストーリーは成り立たないわけだし

亀「そうじゃの。天文学者が普段観測しておる光は、すでにこの世にないはずの光。その最後の猛烈な輝きを観測して、それを研究するというのが天文学というのは中々いい着眼点じゃ。

 それがあるからこそ、最後のワガママに付き合わせて、一気に激しく情熱を込めて愛したという解釈は素晴らしいの」

 

カエル「ここのオチをきちっと作ってきたのは良かったよね。期待していたようなミステリーやサスペンスではなかったけれど、結構満足したよ!」

亀「きちんとそれに巻き込まれる家族の憔悴だったり、まともに反対する医師なども描かれておって、そこは良かったの。弁護士もその職務と意図を考えると、絶対に封筒を渡すわけにはいかんじゃろうしな。

 そこからのラストは……まあ、病気もの特有のいつものラストではあるけれど、ここまでのドラマとその天文学である意味などがあるから、少しは差別化ができておるしな」

 

カエル「……いや、素直にそこは感動したって言ったら?」

亀「わしほどにもなると、そう簡単には感動せんのよ」

カエル「……確かに亀爺って若い女性にモテなさそうだしねぇ」

 

 

最後に

 

カエル「というわけで簡単に『ある天文学者の恋文』の感想を書いていったわけだけど……」

亀「ところどころ突っ込みどころじゃったり、演出意図が見えなかったり、話が冗長に感じたが、総じて大きな破綻はないの。

 恋愛映画が見たいと思ったら、選択肢に入ってもいいのではないか? むしろ、若い学生が見に行くような軽い恋愛映画が多い中で、それなりの人生経験を重ねた人でも受け入れられる恋愛映画に仕上がっておると思うぞ」

 

カエル「そうね。亀爺いのようなモテない亀じゃなければ、結構感動するだろうし」

亀「何を! わしだって、いまだに銀幕の大スターじゃからな! ほれ、先も『レッドタートル』に出演しておるし、若い亀の黄色い声を一身に浴びておるわけじゃ!!」

カエル「……若い雌の亀って黄色い声を上げるんだ。初めて知ったよ」