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物語る亀

ネタバレありの物語批評

BLUE GIANT(ブルージャイアント)8巻 感想 ネタバレあり

 まずはマンガ大賞2016、3位おめでとうございます!

 どうしてもマンガ大賞は有志が無償で投票しているため、有名作品が有利になってしまうものであるが、その中でも大人気作で1位の『ゴールデンカムイ』2位の『ダンジョン飯』、4位の『僕だけがいない街』を相手に回しての3位というのは大健闘だろう。

 元々『岳 みんなの山』で第1回マンガ大賞を獲得した石塚真一だが、今回の3位という結果はその実力を示したということだろう。しかし8巻規定により今回がノミネートラストと考えたら少し悲しいものもあるなぁ……

 

 では感想に入る(ネタバレ注意)

 

 

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  仙台から東京に舞台を移し、プロを目指すために本格的な売り込みを始めてからこの作品の魅力はより一層輝き始めた。

 

 7巻の終わりは自分たちの実力を高く評価し、なんとか売り込みを成功させたい雪祈が、その鼻っ柱を折られるところで終わる。私などはこの雪祈のやり口というか行動力というものは非常に好感がもてるものだ。自分の実力を過小評価したところでそんな人間にチャンスを与えようと思う人なんてどこにもいないのだから、この行動力は高く評価する。

 しかしその行動力が相手の鼻について、天狗の鼻をバキバキに折られた後に模索を始める。そのあとの雪祈の努力や苦しみというのは鬼気迫るものがあった。

 

 

59話 『MINOR MARCH』

 私がこの巻で好きな話は2つあり、1つ目は第59話『MINOR MARCH』である。

 この話の主役は雪祈の鼻を折った、日本一のJAZZ ホールの平である。彼は日本のジャズを取り巻く状況の悪さはわかっていて、そこに諦めすら漂わせているが、だからと言って辞めることもできないような人間である。

 1部では厳しい意見を言うことが表現者を目指す人間には大事という風潮があるが、それはまさしくその通りである。お為ごかしな「面白かったよ」「良かったよ」なんて言葉はいくらでも吐けるものである。だが、厳しい意見というものはその演奏なり作品というものを理解し、分析しなければならないし、嫌われる、もしくは否定したことによって逆に批評した本人がバカにされるリスクを抱えるし、時には将来有望な若者の信念を折ることになるかもしれない。

 

 だから厳しい言葉というものはその当事者同士の中での信頼関係というものが非常に大切であり、その言葉などを間違えると単なる罵倒で終わってしまう。

 7巻のラストの平の言葉は、そのような信頼関係もないままの半分罵倒が入った意見であった。

 平自身もそれはわかっていて、面白かったからこそ感情のままに言ってしまったことを後悔していた。

 このような悪役のような人物の掘り下げ方も非常にうまく、誰一人として無駄な人物になっていないし、しかも感情移入がしやすいので好きなキャラクターは見つけやすいだろう。前作の岳もそうだったが、様々な考え方や立場の人間を出して時に対立させながらも、その魅力を引き出す上手さを持っている漫画家である。

 

 

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61話 『NOW'S THE TIME』

 もう1つが61話の『NOW'S THE TIME』である。

 この中で出てくるのはジャズが好きでなんとしてもジャズを売りたい五十貝という人間であるが、私が注目したのは彼ら(レコード会社)を取り巻く業界の事情と、その販売の部長との会話だった。

 誰もが知っている名盤が5枚セットで1000円という安価で売られていることになんとも言えない寂しさを感じつつ、それが時代といえばそうかもしれないが、抗いたいのも当然だろう。そのために1枚でも増やしてもらうために奔走し、販売の部長との直接交渉に挑む。

 

 部長「おれさ、ジャズってやっぱ難しいと思うんだよ。他と比べて「音楽として難しい」ってな

 難しい音楽ってのはもうそれだけでリスクが高い。「売れない」っているリスクが高いんだよ、ジャズは」

 五十貝「部長のおっしゃるリスクのない音楽って、ちなみにどういった……」

 部長「泳げたいやきくん」

 

 このあたりは以前編集王の『文芸編集編』でも取り上げたが、ビジネスとして考えた場合にジャズというのは大変だろう。私も邦楽であれば少しは聞くが、その中にジャズはあまり入ってこない。今の若い人に好きなバンドマンだったり、ジャンルを訊いたところでジャズ関連の人は中々出てこないだろう。

 

 ここで語っています

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 だからと言ってジャズという媒体は受ける余地がないのかというとそんな訳でもないのが、より話を難しくしている。

 

 私も実はこの部長の意見に賛成である。

 難しいというイメージであったり、好事家しか相手にしない分野というのは新規参入が起こらないから必ず失速する。ジャズらしさに拘るよりも、実はそれをぶち壊して新しい分かりやすいジャズを作るというのも大切なことなのだが、それはブルージャイアントに望むものでもないので、どういう路線で売れていくのか楽しみにしたい。

 

 

 あとは何と言っても演奏描写の濃さだよなぁ。

 雪祈のソロでの飛躍の音階をバックとした背景であったり玉田のソロ以降のバックの黒さとそこから漂う熱量であったりというものが、音を描かないことによって、よりこちらに響いてくる。音楽マンガは当然のことながら音楽に一番重要な音が出ないため、それをどのように表現するのかというのが大事になってくるが、本作もまた多くの音楽マンガ以上にその熱量が伝わってくるものではないだろうか。

 

 次巻はいよいよフェスを迎える。

 どのような物語になるのか注目していきたい。

 

9巻は2016年9月29日発売予定

 

 

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BLUE GIANT(8) (ビッグコミックス)

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BLUE GIANT コミック 1-7巻セット (ビッグコミックススペシャル)

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ブルー・ジャイアント

ブルー・ジャイアント

  • アーティスト: オムニバス,ハンク・モブレー,ポール・チェンバース,クリフォード・ブラウン,セロニアス・モンク,ソニー・ロリンズ,ディジー・ガレスピー,リー・モーガン,ソニー・クラーク,ドナルド・バード,チャーリー・パーカー
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2013/12/04
  • メディア: CD
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