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物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『世界の果てまでヒャッハー』感想 お馬鹿たちの珍道中に抱腹絶倒! 笑いが止まらないコメディーが登場!

映画 洋画

カエルくん(以下カエル)

「題名だけ見ると、どんな映画か全くわからないよね、この映画」

 

ブログ主(以下主)

「明らかにふざけているダメな邦題の典型みたいなタイトルだもんな。奇抜な名前で目立ってなんぼ、みたいな精神が見えてくるというか」

 

カエル「だけど、実際はというと……」

主「これだけピッタリと来る邦題も中々ないな。直訳系以外だったら、もしかしたら今年1番の邦題かもしれん」

カエル「邦題だけで良し悪しを決めることもできないけれどね。だけど……このさ『世界の果てまでヒャッハー!』という馬鹿馬鹿しさが、この映画にはピッタリとハマっているよね

 

主「『どんな映画?』と聞かれたら、あらすじとかを説明するよりも、この邦題を伝えた方が分かりやすいかもしれないな。

 これがフランスで大受けしたのもよくわかるよ。これから話すけれど、ただ単に笑えるだけじゃないし。R15なのが勿体無い!

 ちなみに、このR15もグロなどではなく、エロの分野でのR15なので、そこまで心配いりません。

 若干セックス描写や過度な下ネタもあるけれど、大人だったら笑えるレベルだと思うし」

カエル「気になっている人は是非みてね!

 それじゃ感想記事を始めるよ!」

 

 

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あらすじ

 

 恋人ソニア(アリス・ダヴィ)にプロポーズをしようと、フランク(フィリップ・ラショー)は、友人やその彼女たちも引き連れてソニアの家族が経営しているブラジルの自然派ホテルを訪れる。

 プロポーズのために父親に許可をもらおうとするが、良い印象を与えることができず、不満を口にするのを聞いてしまうフランク。

 傷心を癒すために友人たちが洞窟探検に繰り出すが、そこに彼女の祖母がついてきてしまう。フランクたちは祖母を連れて洞窟探検へと出発するが、そこで足取りは途絶えて遭難してしまう。心配するソニアたちの元に、彼が持って行ったハンディカメラが届く……

 


フランスからやって来たおバカコメディー!映画『世界の果てまでヒャッハー!』予告編

 

 

1 お馬鹿な珍道中!

 

カエル「もうさ、何が面白いって……非常に緊迫した極限の状況下なのに、この男共が本当に馬鹿ばっかりでさ! 本当は笑えない、笑っちゃいけない場面のはずなのに、こいつらがやることが、あまりにも馬鹿げているんだよ!」

主「冷静に考えるとトンデモナイ事態が繰り広げられているんだよ。だって、遭難しているわけだからさ。だけど、その対処法なり、彼らが繰り出すものが馬鹿馬鹿しくってさ! もう笑いしか出てこないよね!

カエル「何をやってもうまくいかない上に『マジで!?』の連続だからさ! 本当に面白いよね! もしかしたら、今年1番笑った映画かもしれない!

 

主「今回はその手に持ったハンディカメラで撮られた映像が真実を写すという『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などのホラーが主に使っていた手法であるファウンド・フッテージという手法が使われているんだよ。

 簡単に言えば『他者のホームビデオを見る』に近い感覚かな? そこに大事件が写っているわけだ」

カエル「だから、正直見やすさでいうと、相当見づらい映画だよね……カメラはブレブレだし、すっごく揺れるから酔いやすい人は厳しいかもしれない。

 実際、ちょっと酔っちゃったもんなぁ」

 

主「だからゲームの主観視点だったり、手持ちカメラの映像が苦手という人にはキツイ映画かもしれない。作中の……おそらく半分以上は手持ちカメラの映像だから。

 でも、それが大丈夫って人にはすごくオススメできる作品になっているよ!」

 

役者とキャラクター紹介

 

フランク(フィリップ・ラショー)

 今作の主人公。ちなみに俳優のフィリップ・ラショーはこの作品の共同監督も務めている。

 ソニアにプロポーズをするために南の島まで来るが、友人たちの悪意のない妨害(事故だけど)に会ってしまい、うまくいかない上に、ソニアには呆れられてしまう。

 飛行機が大の苦手で、喧嘩も苦手。

 

ソニア(アリス・ダヴィー)

 今作のヒロイン。

 フランクのことを慕っているが、うまくいかない珍道中に少し呆れ気味。父親が経営するホテルで待っていたところ、フランクと友人たち、祖母が帰ってこないので心配していると、ハンディカメラが届く。そこに写っていたのは……

 水着シーンなどもセクシーな、冷静に考えると美貌と財産を持つ彼女。フランク、勝ち組だね。

 

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左がソニアで水着姿もセクシー。右がソニアの父。

 

 

サム(タレック・ブドリ)

 今作の悪友その1。

 唯一彼女を持たず、そのためにかなり積極的にナンパなどを繰り返す。フランクの女性関係に関するトラブルは大体こいつのせい。

 

アレックス(ジュリアン・アレッティ)

 今作の悪友その2。

 手持ちのハンディカメラを持つのはほとんどこの男。そしてこの作中における問題児。一言で表すとバカ。

 

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左からアレックス、フランク、サム。愛すべき馬鹿な悪友共。

 

 

お見事な脚本

 

カエル「でもさ、単にコメディというだけではなくて、脚本という意味でもお見事! の一言に尽きるよね」

主「きちっと伏線を張って、それをちゃんと回収しているからなぁ……見終わった後に思わず『お見事!』と心中で叫んだほどだったよ」

カエル「一部では分かりやすい伏線とか、違和感もあったけれど その多くがきっちりと回収されていたしね。

 え? あれは……え? 何が起きたの? の連続だったからさ、結構見入っちゃったね」

 

主「だから単なるお馬鹿映画のように思われるかもしれないけれど、笑えるシーンを詰め込んだだけではなくて、きっちりとしたうまい映画の作り方をしているから、そこに注目しても面白いよ。

 邦画でいうと『鍵泥棒のメソッド』や『アフタースクール』の内田けんじ監督作品に近い、緻密で寝られた脚本だから。

 多分、この手の……下ネタ混じりのギャグが好きじゃないという人でも、その映画としてのうまさを見るだけでも十分に価値があるし、あとは離島の美しい自然を見るだけでも面白よね」

カエル「楽しみ方が沢山ある一作だね!

 あと、ラストもお楽しみに! スタッフロールが始まるまで楽しめるよ!」

 

 以下ネタバレあり

 

 

2 ネタバレありの感想

 

カエル「じゃあここからネタバレありなんだけど……この作品って、確かにおバカ映画なんだけど、実はそれだけじゃないんだよね!

主「そう。日本でもコメディ映画ってたくさん作られるし、お笑い芸人がコメディ映画を撮ることって多いけれど、その多くが壊滅的な作品ばかりになっている。

 成功した作品ってどれだけあるんだろうね? 大体酷評されておしまいな気がするけれど……」

 

カエル「そうだよねぇ……もちろん、工夫が足りなかったり、実績がなかったりというものあるんだろうけれど、北野武は別格として、それ以外で大成したお笑い芸人ってほとんどいないもんね」

主「その要因の一つとしてあると思うのが、社会性、テーマ性のなさなのかな

カエル「……社会性?」

 

主「今の日本のお笑い芸人って……まあ、テレビによく出ているようなお笑い芸人って、中身がないというか、単に笑わせるものが勝ちなんだよね。いや、批判しているんじゃないんだよ。それはそれで正解。

 テレビっていうのは公共のメディアで中立性が求められるからさ、あまり強い主張が混ざりこんでしまうとそれはあまり良くない

カエル「一時期の爆笑問題の漫才問題もあったもんね」

主「バラエティだから、それはそれでいいんだよ。

 だけど、映画は違う。

 優れたコメディというのは……チャップリンにしろ、ビリーワイルダーにしろ、相当な毒が含まれているんだよね。

 テレビの3分とか、5分の中ではそういう社会性や毒を入れるのは難しいかもしれないけれど、映画の長尺を持たせようとしたら、そういう軽い笑いだけだともたないのだろうね」

 

 詳しくはこちらで語っています

blog.monogatarukame.net

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笑いの残酷性

 

主「本来笑いって結構残酷な要素も含んでいたりするんだよね」

カエル「まあねぇ……『Mr.ビーン』とかもそうだけど、誰かが真面目に取り組んで、失敗する様を見て笑うわけだからね

主「その中の登場人物は本気なんだよ。逆にふざけていると『この状況でふざけるな!』と笑えなくなる。本気でやって、本気で馬鹿をやるから笑えるわけだ。

 この映画だってそうでさ、アレックスが失敗をたくさんするわけだけど、アレックス自身は真面目なんだよ。真面目に取り組んで、馬鹿を見る。その様子が面白いわけだ」

 

カエル「状況は本当にシリアスだからね。下手したら……というか、誰も死ななかったのが奇跡なくらいだし」

主「緊張と緩和理論じゃないけれど、こういった極限の状況だからこそ笑える部分もある。こんな状況でも考えることは女のことだったりさ、そういったある種の人間臭さが笑いにつながるわけだ。

 だからこの匙加減ってすっごく難しい。

 馬鹿にするだけじゃダメだし、かといってある程度馬鹿にしないと笑えないし。そのバランスが見事なんだよね」

 

カエル「フランクもすっごくいい人だしねぇ」

主「いい人が馬鹿を見るから面白いというのもあるしね」

 

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こんな美女が一緒では、浮気も仕方なし!? いやいや、ダメです! 

 

3 込められたテーマ性

 

カエル「で、この作品では笑いにコーティングされているけれど、相当な毒が含まれているよね」

主「社会問題をしっかりと扱っているんだよ。風刺がきいている。

 例えば、自然派を語るホテルはその裏で環境破壊をしているとかさ、こういうのってよくある話じゃない?

 他にも……妻の不倫問題とかさ、自由奔放な性事情があるわけだ。それって、フランスが直面していることじゃない」

 

カエル「フランスは離婚率も高いし、複雑な家庭環境になってしまう一家も多く存在するというしね」

主「フランスに不倫はないというからなぁ……これは、愛がなくなったら婚姻関係は破綻しているんじゃないの? という意味らしいけれど、日本人よりも恋愛体質だからその結婚生活も色々あるみたいだね。

 だけど、こういった風刺混じりの奔放な性の様子が描かれているからこそ、その中にいるフランクの真面目さだったり、彼女を想う気持ちや、本当の愛が引き立つというね

 

カエル「そうだよね。

 あとさ、意外と……と言ってはあれかもしれないけれど、アレックスも色々と舞台装置のような扱いでギャグはやらかしているけれど、性に関する失敗ってあまりないんだよね。まあ、変な性癖はあるけれどさ」

主「彼女を裏切るようなことはしていないしな。フランツの愛にばっかり目がいくけれど、アレックスも実はああ見えて根は一途……みたいなことがあるんじゃないの?」

カエル「……まあ、それも単に考えられなかっただけかもしれないけれどね」

主「1番食えないキャラクターかもしれんな、アレックス……」

 

その他の社会問題

 

カエル「あれ? まだあるの?」

主「深読みすると、他にも色々なものが見えてくるんだよ。

 例えば、フランクが病気になった時、毒を吸い出されたじゃない? その場所が場所だから、きわどい笑いになっていたけれど、あれってさ……考えてみれば中々難しい場面なんだよね。

 だってさ、これからプロポーズをしようとしているわけだよ? それなのに男と同性愛のような関係になっているわけだよね……これもさ、笑いにされてはいるけれど、色々考えさせられるところはあるよね」 

 

カエル「確かにねぇ……原住民関係は色々ありそうだよね」

主「考えようによってはあの原住民も、ある種の移民みたいなものでさ。どちらが移住してきたのかという差はあるけれど、まったく違う文化を持った民族が交わって……そして生活を両立させるということに対する難しさがよく出ているよね。

 あの族長の奥さんを……という場面も、本来は閉じた民族では血が濃くなるから、他の民族の血を入れるために必要な行為だったんだよ。だけど、それが他の文化と交わると、あんな欲望混じりのおかしな文化に映るわけだ。

 これも笑いに変換されて入るけれど、社会性のあるテーマがこもったうまい部分だと思ったよ。

 だから単なる笑いだけで終わっていないんだよね。それがこの作品のうまさでもある。考えれば考えるほど、フランスの問題が出ているんだよ。

 この風刺が日本ではできないんだよね」

カエル「難しいよね……でも、深読みするともっと色々見えてきそうだね」

 

 

 

最後に

 

カエル「というわけで、今年1番笑えた映画に認定してもいいんじゃない!?」

主「本当に『笑い』に突っ走ったからな。変な感動もないし。

 もちろん、笑いって結構個人で好みがあるから、もしかしたら笑えないって人もいるかもしれないけれど、そういうギャグがどうかと思う人でも、上記のように物語としてのうまさだったり、風刺だったり、自然の美しさが込められているから、楽しみ方は広い映画だろうね

 

カエル「フランスで大ヒットしたというのも納得だよね! 日本ではR15なのが惜しいくらいだよ! 本当に面白いし、中学生くらいがゲラゲラ笑える映画なのに……」

主「性描写が一部過激だからなぁ……完全に見えちゃっているのもあるし。

 この判断は致し方ないけれど、やっぱり勿体ないなぁ、という思いが大きいね」

カエル「なので! 大人の皆さんは是非とも見に行くように!

 まあ、この記事を読む人って見た人の方が多いのかな?」

主「今週公開の映画ではかなりのお勧め! とだけ言っておいて、この記事を終えようかな」

 

カエル「ちなみに、主が1番笑ったシーンは?」

主「……ドリフみたいな服関連の部分も好きだけど、1番は爆走おばあちゃんかな。あのシーンは両手を叩いて笑っちゃったし」

カエル「終始笑いが絶えない劇場だったね」

 

 

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世界の果てまでヒャッハー!関連の商品はないので、記事中にある内田けんじ監督作品を貼っておきます。

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